和解のやりとり

離婚裁判では、最終判決が出る前に、何度か和解のやりとりがあります。以前の記事では、第二フェーズと第四フェーズに和解をする機会があると書きました。では、どんな様子なのでしょうか。本記事では、その様子を紹介してみます。

離婚裁判での和解は、裁判官に勧められて行われます(被告もしくは原告から言い出すケースもありえますが、直接相手に分かるように言い出してしまうと和解条件で譲歩しなければならなくなるリスクがあるので、裁判官にその旨を申し伝えておき、裁判官が和解を行うということになると思います。このようなケースは私は経験していないので、この記事では裁判官が勧めるケースについて特化して説明します)。

私のケースでは、裁判官はそれまでの進行とはうって変わって低姿勢で、粘り強く交渉をしていきました。裁判官の性格や特性によって具体的な発言内容やその提案の仕方は大きく異なりそうですが、原告と被告の両方が合意してはじめて和解が成立する以上、裁判官に強制力は全くないことなりますので、当然といえば当然です。

和解のときは、原告側と被告側を交互に部屋に残し(もう一方を待合室に待たせ)、これまでに出された争点を一つ一つ議論して調整していきます。以前の記事「離婚する条件を考える」で述べた条件を中心に、これまでのやりとりで意見が合わない点を一つ一つです。

裁判官は、こういった条件で和解をしないかと尋ねてきます。いくつかのパターンがあったと思いますが、特に最初は、単純に相手の主張どおりの要求をのめるかというような質問です。それから、どこまで譲れるかという質問もありました。他のパターンは、相手とこちらの意見の折衷案の提示です。これは2回目以降のやりとりで出てきます。

それでは、和解交渉にあたって、どういった態度や準備で臨めばよいでしょうか。第一に、自分が絶対に譲らない条件を明確にしておく必要があります。別の言い方をすれば、この条件が受け入れられなければ和解交渉を中断し、判決に進んでもよいという条件です。ここを曖昧にしてしまうと、必要以上の時間をかけることになってしまいます。また、こちらが条件を譲歩してくれるかもしれないと裁判官に必要以上の期待をかけてしまい、こちらに不利な条件で和解交渉を進められそうになってしまいます。

第二に、譲れない条件や希望する条件を裁判官に伝える際に、明確な理由をつけることです。裁判官が和解の段階では低姿勢であるといっても、本来、公正に判決をすることのできる能力のある方です。裁判官が納得できる条件であれば、裁判官があなたに代わって、相手との和解交渉に臨んでくれます。もちろん、相手がその条件を拒否してしまえば和解は成立しませんが、当人どうしの離婚協議や離婚調停よりも正当な条件で和解が進む可能性は高いでしょう。仮に、和解が成立しなくとも、論拠だてて冷静に議論をしたあなたの印象は判決の際にマイナスに働くということはないでしょう。

では、相手側とのやりとりはどのような感じなのでしょうか。先に説明したとおり、直接のやりとりはありませんので、裁判官を介して、こういった条件を要求しているということが伝えられます。離婚判決の相場的な条件であり、納得できるのもあれば、まったく理不尽なものもあるでしょう。

和解は、100点満点の結果は得られません。その代わり、0点の結果も得られません(判決だとそのどちらもありえますが・・・)。したがって、納得できない条件が一部含まれていても、そういうものだと理解してある程度は受け入れることを考えてみてください。

では、裁判官を通じて要求される条件については、どう回答したらよいでしょうか。条件をのめるならば受け入れてよいでしょう。しかし、受け入れられない条件であれば?このような問いには、正直、100%正確な正解というものはないと思います。裁判官と相手によって違いますし、同じ相手であってもその時の気分や流れによっても異なるでしょう。ただ、私としては、受け入れられない条件が提示されたら、その条件を単純否定するよりも、その条件をあなたが受け入れる合理性はどこにあるか、というように理由にフォーカスしていくことがよいと思います。「その意見には合理性があるのですか?」「その条件は判例からすると納得できるものですか?」「その条件は受け入れ困難に思います。その条件は正当性があるものなのでしょうか?」といった発言になるでしょう。

裁判官は、和解をまとめることを最優先して、多少の正当性は犠牲にした和解案を勧めてくることもあるでしょう。裁判官が言っているからといって、あるいは早く和解を終わらせたいからといって、安易に提案にOKするのではなく、自分はここを妥協するから、相手にはここを妥協してもらいたいと、粘り強く交渉しましょう。

裁判官は両者とそれぞれ話をしていきますが、その日の最後の方では両者を揃えさせて、さらなる調整をすすめることもあります(両方の当人が出席していなければ)。このときも、上記で述べた点に注意しながら交渉を進めますが、相手側弁護士の戦略としては、本人に確認しなければならないからと時間稼ぎをしたり、自分は理解するが本人が納得しなかったというように、さらなる譲歩をこちらに求めてくることもあるでしょう。原告あるいは被告当人が出席することで細かな調整ができるメリットはありますが、このようなアプローチをとることができないという意味において出席するデメリットもあります。出席する、しないの判断をするうえでの参考にしてください。

和解の交渉が進み最終段階に来ると、原告と被告の両者が出席することになります。和解を決定づけるには当人どうしが出席して和解すると意見表面するが必須ですし、最終調整段階ではにはやはり両者がいる方が迅速に調整をできるからです。ただし、和解は本人の意向で決めるものなので、裁判所に当人が来ることを裁判官が命令することは難しいようです。私は何度か相手が裁判に来るように裁判官にお願いしましたが、裁判官は相手の弁護士に低姿勢でお願いするのみでした。とはいえ、裁判官から言われたら何度も断り続けることははばかるはずですので、最終段階の少し前の段階から、早めに相手の出席を要望していきましょう。当人同士のやりとりでないとなかなかか調整ができないという理由をつけて説明すれば、いずれ当人がそろうことになります。

当人がそろった日は、和解を決めるチャンスです。ここで一気に結論に向かうようにしましょう。多少の妥協は必要だと思います。そうでないと、次回、相手が出席するとは限りません。裁判官も一気にまくしたてて和解に持っていこうとします。ですので、無理難題をつきつけられることもあります。汗がじわっと噴き出るような感覚も経験するでしょう。事前にいろいろと頭の中でシミュレーションしておいてください。備えあれば憂いなしですが、備えても十分には備えきれないことも多いのが実態です。それでも当日の判断の負荷が下げることができれば、変な判断をする間違いを起こしにくくなります。

和解が決まったら、最終文案を裁判官が説明・確認します。原告と被告の両人が出席しているといっても、直接相対することで感情的になり和解にとってマイナスになりかねませんので、裁判官とやりとりするのは終始、交互になるようです。私も場合も最終回は一度も相手の顔を見ることなく和解の最終調整と最終文案の確認がされました。この日が正式な離婚成立の日になります。

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離婚先輩
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