
夫が単身赴任から帰ってくる前に…。せっせと離婚準備をする妻の心理とは。
この時期(師走)になると、「来年4月に夫が単身赴任から帰ってきてしまう。その前に離婚したい」という妻からの切実な相談が増えます。
夫は嫌いだけど円満に生活費を確保したいAさん
Aさんの夫はアメリカに単身で赴任中。Aさんは東京で大学2年生の息子と高校3年生の娘と3人で生活している。
Aさんの夫は、海外勤務が長く、子どもたちが幼いころはAさんも一緒に転居していた。
しかし、見知らぬ国での子育ては不安が多かったし、モラハラ気味の夫についていく気持ちもなくなり、いつしか夫は単身で海外赴任するようになった。
Aさんの心に強く残っているのは、イギリスに赴任していたときのことだ。Aさんはあるとき救急車を呼ぶかどうか迷うほど体調が悪くなった。英語に自信もなく、子どもたちのこともあるため、夫にSOSの電話をしたところ、「仕事中に電話してくるな。自分で何とかしろ」と言って電話を切られたのだ。
それからAさんは、夫に心を閉ざすようになった。表面上は夫婦を保っていたが、夫といても苦痛なだけで、楽しくなかった。
それでも何とかやっていけたのは、夫が家にいなかったからだ。海外赴任中は年に1~2回しか帰ってこない。必要最小限の連絡はLINEでするけれど、大抵は子どもたちの学費の相談だ。
そんなAさんのもとに夫からLINEが来た。
「3月に本帰国になった。」
Aさんがここ数年、もっとも恐れていた言葉だ。
Aさんは、気が動転してLINEに返信することができず、悩んだ末、相談に来られた。
Aさん曰く、夫と離婚したいわけではないけれど、同じ屋根の下に暮らすことはもう考えられないとのこと。離婚したくない理由は生活費と子どもの学費だ。
夫は、「家族の形」があるからこそ義務的に支払いをしているが、離婚したとたん、たとえ子どもであっても、支払いを渋るタイプだという。
そのため、円満に別居できる理由を色々考えてみたそうだ。家が狭いから別に住む場所を探してほしいとか、通勤が便利な場所に転居してはどうかとか。
しかし、いずれの理由も夫に受け入れられそうもないという。夫は、ようやく一人暮らしから解消され、身の回りの世話をしてもらえる生活を待ち望んでいるらしい。
そんな恐怖のLINEのやり取りの後、Aさんはついに離婚を決意した。
離婚にあたっては、子どもたちの養育費の確保が最優先だ。そのため、しっかりと話し合うことが必要だが、その方法がまた難しい。
さすがにLINEですべて決められる気がしないけれど、夫と2人で話す気にはなれない。だからといって、夫が海外にいるので日本の家裁も使いづらい。
しかも、3月というタイムリミットもある。Aさんはとにかく夫が帰国する前に結論を出したかったのだ。
そこで、その問題をすべてクリアできる民間調停の制度であるADRを利用することに決めたそうだ。
離れているからこそ何とか保てる家族の形
単身赴任は諸刃の刃です。夫婦がうまくいっていなくても、離れていることで何とか家族の形が保てることもあります。
一方で、離れている時間が長くなると、少しのすれ違いが大きな溝に成長し、もう一緒には住めないという気持ちが大きくなったりもします。
その根底には、夫婦の不和があり、決して単身赴任だけが理由で離婚に至るわけではありません。先送りしていた問題が少し早く目の前にやってきただけなのです。
日本人は何となく「継続は美徳」という考え方があるように思います。でも、私は「継続は怠慢」と感じることもあります。
頭では「今の現状は自分にとっては幸せではない」と分かりつつも、それに目をつぶり、その現状に何か言い訳を付け加えるのです。例えば、忙しいとか、子どものためとか。
もちろん、変化しないと決断するのもその人の権利だし自由です。でも、変化したいけど、ひとりでは難しいという方のお手伝いをするのが私の仕事かなと思う今日この頃です。
離婚したいけど、どうしよう…。とお迷いの方の参考になる動画を貼っておきますので、ぜひご覧になってみてください。
photo by メイプル楓様