3号被保険者制度廃止見送りは誰の首を絞めるのか。弊害はここにあり。
3号被保険者制度の廃止がニュースになっています。専業主婦世帯は安堵し、共働き世帯は不満に感じたのではないでしょうか。
しかし、ことはそんなに簡単ではありません。3号制度があることで、どんな弊害が起きているのか、ご紹介します。
扶養内で働いた結果、互いにクビを締めてしまったAさん夫婦
「家にいていいよ」は警戒すべし
Aさんは保育士として働いていましたが、結婚を機に仕事を辞めました。夫に「俺が食わせてやるから家にいていいよ」と言われたのです。
Aさんは子どもが大好きで、保育士の仕事にもやりがいを感じていましたが、夫がせっかくそう言ってくれているので、夫の言葉に甘えることにしました。
「俺が食わせてやる」という一言が何だか頼もしくも感じました。
専業主婦は家事・育児を手伝ってもらえない?
Aさん夫婦は2人の子どもをもうけました。外から見ると幸せを絵に描いたような家庭でしたが、実はそのころから暗雲が立ち込めていたのです。
子どもは2歳と4歳の男の子です。Aさんは、育児と家事にへとへとになり、夫にヘルプを求めましたが、夫は
「お前の仕事は家事と育児だろ。俺にお前の仕事を手伝ってくれというなら、お前は俺の仕事を手伝えるの?」
と言い、何も手伝ってくれませんでした。
長男が小学校にあがるころ、そろそろ職場復帰したいと思い、夫にも相談しましたが、夫は
「俺の時給、いくらか知ってる?お前が仕事するために俺の仕事を減らすのはナンセンスだからな。俺に影響のない範囲でなら働いてもいいぞ。それに、扶養を出るなら保険料は自分で支払えよ。」
と言うのです。Aさんは、働きたい気持ちがあるものの、夫の協力なしにはフルタイム復帰は難しく、保育補助として扶養内で働くことにしました
そんなAさん夫婦の関係は悪化の一途でした。夫は、相変わらず家族への優しさが感じられず、仕事ばかりしていました。
一方、夫にも不満がありました。妻が子どもの教育費に湯水のようにお金を使うので、働いても働いても貯蓄ができないのです。
家計が苦しくなると手の平を返す夫
そこで夫は、子どもたちが中学校に上がったタイミングで、妻にこう言ったのです。
「もう子どもたちに手がかからないんだから、そろそろフルタイムで働いたら。」
妻は夫の身勝手さに怒り震えました。
互いに憎しみながらも離婚できないふたり
夫婦関係は完全に破綻し、家庭内別居生活が続きました。しかし、どちらも身動きができません。
妻は、今更フルタイムで働く自身も体力もありません。既に10数年キャリアがストップしているのです。自分のパート収入だけでは、いくら夫から養育費を支払ってもらったとしても、生計が立てられません。
そもそも、十万円程度のパート収入では、ひとりだったとしても生活できない金額なのですから。
夫も同様です。家を出ることも考えましたが、妻子の生活費、住宅ローン、そして自分の家賃や生活費を考えると、とてもじゃないけどお金が足りないのです。
仕事は人生の選択肢を増やす
Aさんのような夫婦が世の中にはたくさんいます(個人的感想です)。そもそも、「僕が働くから家にいていいよ」という言葉は優しさなどではなく、単なるエゴです。裏を返せば
君はキャリア形成をあきらめて、家事育児をやってね。僕はやらないから。
と言っているだけなのです。
「働く者と(あまり)働かない者」という関係性は、夫婦関係の根幹にも悪影響を及ぼすことがあります。
家事・育児だって立派な仕事であることに間違いはなく、何なら外で働くよりもしんどいこともあります。
しかし、それを理解している男性は少なく、どうしたって「稼いでる者が偉い」と思い、夫婦の力関係が不均衡になるのです。
3号制度があることで、「扶養内で働く」という選択肢が大きくなり、夫婦双方の自由な意思決定が阻害されるのです。
働く自由、働かない自由、両方の自由があることを前提として、私なりの意見を書かせてもらいました。みなさんのお考えはどうですか?
こんなことでお悩みの方がいましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
photo by メイプル楓様