「ウェーバー効果」を知っていますか?―子宮頸がんワクチンと同じことを新型コロナワクチンでくり返さないために
米ファイザーと独バイオンテック製の新型コロナワクチンでは、昨年の12月、海外での接種が始まった当初から、強いアレルギー症状の「アナフィラキシー」が他のワクチンの約10倍の高頻度で起きることが警告されていました。
日本でも医療者への先行接種が始まった2月17日からの3週間、アナフィラキシーを疑う事例が37件報告され、その大半が女性であったことから政府の専門家が、「(旧)茶のしずくせっけん(事件)を思い浮かべる現象だ」「化粧水をよく使っていることが関わっているのではないか」などと発言すると、ワイドショーなどがこぞって取り上げました。
ところが、厚生労働省のワクチン分科会副反応検討部会は3月12日、アナフィラキシー疑い37例のうち明らかなアナフィラキシーと判断できるものは7例であり、「導入して間もないため副反応報告が多い可能性がある」などとして接種を継続することにしました。
「ウェーバー効果」と呼ばれる現象を見込んでのことです。
●「ウェーバー効果」とは
ワクチンの開発には通常、「年単位」の時間がかかります。手を抜いたわけでも承認基準を甘くしたわけでもありませんが、新型コロナワクチンでは、中長期的な効果や安全性を見届けるための治験(臨床試験)の「期間」が短かったことは事実です。そのため、治験では見えなかった副反応が後から見えてくる可能性は当然、残っています。
一方、医薬品の導入においては「ウェーバー効果」と呼ばれる現象が知られています。どんなワクチンでも導入開始から2年ほどは「治験では分かっていない副反応があるのではないか」と身構えて積極的に症状を報告するため、副反応疑いの報告数が多いという現象です。
世界で子宮頸がんワクチンが導入された際にも、当初は副反応「疑い」の報告数が通常のワクチンの数倍近くありました。
日本では2014年、接種後にけいれんや慢性疼痛(とうつう)を起こしたという女性たちの映像がネットやテレビで拡散したことを受け、子宮頸がんワクチンの積極的接種勧奨を定期導入からわずか2か月後に停止。ウェーバー効果を見届けるまでもなく事実上の接種停止状態になりました。
その結果、子宮頸がんワクチンは2014年の導入から現在に至るまで定期接種であるにも関わらず、事実上の接種停止状態にあります。かつては高齢者の病気だった子宮頸がんの発症ピークは現在、妊娠出産年齢と重なることもあり、同ワクチンの事実上の接種停止は、日本の少子化の隠れた一因として深刻な社会問題となっています。
●ウェーバー効果を実際のデータで確認してみよう!
「ウェーバー効果」は実際のところ、どの程度、どんな形で見られるのでしょうか?
子宮頸がんワクチンの「副反応(疑い)報告数」と「重篤な副反応(疑い)歩国数」について、いくつかの国のデータを見てみましょう。
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