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「子宮頸がんワクチンの1回接種」について、知ってほしい具体的なこと

先日、秋田県由利本荘医師会、由利本荘市、にかほ市民の共催の市民講座での講演しました。

秋田県にかほ市は、子宮頸がん(HPV)ワクチンの定期接種とキャッチアップを9価ワクチンで接種したいという人に対し、費用を全額補助している、全国唯一の自治体です。私が把握している限りでは、定期接種費用の一部を補助している自治体は他でも全国で2,3あるようですが、定期とキャッチアップの両方を全額補助しているのは、にかほ市しかありません。

にかほ市の女の子たちが羨ましいですよね!

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今年4月、約9年もの間「一時差し控え」の状態に置かれていた子宮頸がんワクチンの積極的接種勧奨(接種の通知)が再開し、接種の権利があったのに接種をしそびれた人たちに対するキャッチアップ接種も始まりました。

ところが、定期やキャッチアップとして無料接種できるのは、先進国ではもう日本以外では使われていない予防効果の低い4価ワクチンだけです。また、日本以外の国はすべて3回接種から2回接種に接種スケジュールを変更していますが、日本だけはまだメーカー推奨の3回を推奨しています。

9価の定期化を待ってたら小6だった娘が14歳に

わたしの講演のタイトル「子宮頸がんワクチン接種スケジュールの新常識ー1回をできるだけ早く」を見たのでしょうか。SNSで講演の事後報告をすると、その日の夜、12歳と14歳の娘さんがいらっしゃるという方から質問をいただきました。

質問は以下のとおりです。

長女が小6になった頃、9価の子宮頸がんワクチンが認可されたので、定期接種になるまで待とうと待っていたところ、14歳になってしまいました。諦めて今年、下の子と2人まとめて自費で9価を接種しましたが、1回で接種をやめてもいいのでしょうか。2回目以降は、4価ワクチンで済ませていいのでしょうか。

インターネット経由できた個別の相談には、普段はお返事していません。国は「4価ワクチンX3回」を定期接種として推奨していますし、9価を接種した医師は「9価ワクチンX3回」という日本で承認されたスケジュールに基づくアドバイスしかできないでしょう。自分の患者さんでもないのに、国とも主治医とも違うことを言うのは筋違いです。

しかし、聞けばその方はシングルマザーで、塾代や部活の遠征費など多くの出費がある中、1回3万円、2人で6万円の9価ワクチンの接種費用の出費は苦しい。それでも、子どもたちを最大限にがんから守りたいという事情はよく分かったので、あくまでもわたしの考え、ということでお返事を差し上げました。

そして、きょうは似たような悩みを持たれている方のためにも、この件や似た件に関するわたしの考えを書くことにしました。

WHOの新推奨に従い1回接種でOK?

今年4月、日本が積極的接種勧奨を再開して間もない頃、WHO(世界保健機関)は子宮頸がんワクチンの接種スケジュールの推奨を「1回、もしくは2回」と改めました

いくつもの信頼ある調査から、子宮頸がんワクチンには1回の接種でも十分な予防効果があることを示すデータが集まってきたからです。私の方でもWHOのワクチン諮問委員会に取材を申し込み、色々と質問もして、資料も送ってもらいました。

さて、では質問者の娘さんは、2人とも1回で接種をやめてもいいでしょうか。

結論を先に言うと、

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