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「介護で人生を諦める人を減らしたい」LIFULL介護編集長インタビュー

本noteでは、ホスピス特化型メディアとして、ホスピスの見学レビューや業界の動向をレポートしています。

今回は、LIFULL介護編集長の小菅秀樹さんへインタビューをしました。
LIFULL介護は、株式会社LIFULL seniorが運営する日本最大級の介護施設検索サイトで、高齢者向けの住まいを探すことができるサービスサイトです。

これまで、約400件以上もの介護施設を実際に見てこられた小菅さん。
本記事では、小菅さんのこれまでのご経歴や、プロから見た介護施設の選び方や、介護と仕事の両立などについてまとめました。
ぜひ最後までご覧ください!

左:小菅秀樹さん、右:インタビュアー樽本

ー本日はよろしくお願いします!まずは小菅さん自身のこれまでのご経歴について教えてください。

まず、新卒で紳士服専門店へ入社し、現場で接客を担当していました。当時、本気でやりたい事は特になく、接客が好きだったので「この仕事が自分に向いているかな」という軽い気持ちで仕事を始めました。

そこで数年働き、副店長を任せていただくまでになりましたが、ふと、「このままでいいのかな」と思ったのです。
アパレル業界は、2月と8月が閑散期と言われています。
実際、自店舗にもなかなかお客様が来店されない日が続きました。

しかし、こちらからはお客様に売りに行くことができない。プロモーションも本部がやっているから、現場ではコントロールできない。
私自身は多くの方に商品を知っていただきたいし、売りたいのに…と非常に歯痒い気持ちになりました。
それが転職を考えるきっかけです。

「待っているだけではなく、お客様に対して自ら商品を届けにいきたい。もしかしたら自分には営業職が向いているのでは」と思い、営業職を中心にさまざまな業界の話を聞いていました。
その中で、一社だけ少し変わった会社が目に留まりました。

それが二社目に入社した「老人ホーム紹介会社」です。

当時、”老人ホーム”の存在は知っていましたが、施設に対して入居者を紹介する仕事があることや、施設側が入居募集をかけているとは知りませんでした。そこで詳しく話を聞いてみました。

「ほとんどの人が、老人ホームの探し方を知らないし、誰も教えてくれません。そのため、突然始まる親の介護は、"人生で初めて感じる壁"とも言われています。私たちは、そういう人を救い、入居者にとって最適な住まいを見つける仕事をしています」

その説明を受けた時、”数字を追いかける”営業職のイメージがガラリと変わり、”人生の最後”を過ごす住まい(介護施設)探しのお仕事を、とても魅力的に感じました。

そして、「自分が進むべき道は、これかもしれない」と感じ、老人ホーム紹介センターの入居相談員として介護業界としてのキャリアをスタートさせました。

ーアパレル業から介護業界へ、異業種への転身でしたが、入居相談員として働き始めてからの話を具体的に聞かせてください。

まず、入居相談員としてそれぞれのお客様に合わせたご提案をすべく、情報収集のため実際に施設に出向き、施設長の考えや、職員への教育についての話を聞きにいきました。

入居相談員がお客様にご紹介した施設が、その方にとっての"最後の住処"となることがほとんどですから、自分の提案が人生最後の時間を豊かにできるか左右すると思うと、非常に大きな責任を感じていました。

見学をしていると、中には、指導者を雇えず入社1ヶ月の方が副ホーム長を担当していたり、職員の雰囲気に対して違和感を抱くような施設もあれば、反対に、入居者に寄り添い施設全体の雰囲気が非常に明るく、「ここなら自分の親を任せたい」と思える素敵な施設まで、さまざまでした。

そのように、実際に自分の目で見てみることで、お客様に自信を持ってご提案できるようになっていきましたし、心からお勧めできる施設については多少予算オーバーでも「こういう施設があるということを知った上で、他の施設と比較をして選んでほしいから、ぜひ一度見学に行ってみてほしい」とご案内をするようにしました。
施設選びにおいて、「比較すること」はとても大事ですから。

また、「来週には退院できるので施設を探しておいてください、と病院側から言われてしまった」「自宅では看れないので明日にでも施設に入りたい」などと行き場がなくなり、施設入居までの時間がない方もいらっしゃいました。

そうした方に対しては、緊急対応してくれる施設を即座に提案し、必要な書類を手配し、最短で入居できるようサポートをしていました。

自分で選んで、手続きをして・・・となると、やはり時間がかかってしまうので、私たちの働きかけに感謝していただけることも多く、やりがいも感じていました。

ー確かに、突然介護が始まって知識が0の状態で施設選びを余儀なくされるという方も多いですよね。入居相談員の活動から、現在のLIFULL社で働き始めた経緯をお聞かせください。

お客様へ施設をご紹介して、実際に入居してから、笑顔で過ごされている様子をみるのはすごく嬉しかったです。

ですが、当時私がどんなに頑張ってご案内をしても、1日に対応できる人数は5〜6組ほど。一方で、全国には他にも施設選びにお困りの方は数え切れないほどいます。

どうにかして彼らにも情報を届けられないか、と思った時に、さまざまなご縁がありLIFULL seniorに転職することになりました。現在は、監修の立場で介護にまつわるコンテンツ制作を担当しています。

記事の制作監修はもちろんのこと、セミナー登壇やメディア出演、SNSなど幅広く活動しています。私自身が介護にまつわる最新情報をお届けすることで、「家族の介護で人生を諦める人を0にしたい」と本気で思っています。

解決したい課題の一つが「介護離職」です。
介護を理由に仕事を辞める人は、年間10万人にも上り、その数は何年も横ばいのまま変わっていません。

これは、企業側が介護に対しての知識が乏しく、介護の相談先や、”介護休業”や”介護休暇”という制度の認知不足などが、原因の一つにあります。
そのため、介護への理解を深めていただく企業向けのセミナーなども実施しています。

そして、企業で働く方向けには、よく「介護離職は絶対にしてはいけない」とお伝えしています。
介護と仕事の両立は難しい、とはよく言われることですが、それを打破する選択肢は必ずあるのです。

その選択肢の一つが「介護施設への入居」です。
「施設に親を入れるなんて親不孝」「自分が犠牲になることが親孝行」と思っている人は多くいますが、本当にそうでしょうか。

実際、自分が要介護状態になった時に、「自分の子供に介護してほしいと思うか」と聞くと、ほとんどの人が「NO」と答えます。
親にとって一番の親孝行は、子供が幸せに暮らすこと、なのです。

そして、適切な施設選びをすれば、子供は罪悪感を抱かずに済むと私は考えています。

ー私自身も祖父が施設に入居する時にはこれまで感じたことのないような罪悪感を抱きました。これまで約400以上もの施設を見てこられた、プロの目線からの介護施設選びのポイントを3つ教えてください。

(1)望む暮らしが実現できるか
(2)スタッフの対応
(3)コミュニティ

この3つかなと思っています。

(1)望む暮らしが実現できるか
施設は入居する本人ではなく、家族が決めるケースが大半です。

ですが、いざ選ぶとなった時に、親がどう生きてきたか、どういうことに喜びを感じるかを知らず、どういう施設を探しているかと問うと「ちゃんと介護してくれるところ」という曖昧な回答がよく返ってきます。

それもそのはず。
高齢の親と同居している人は少なく、巣立ってから数十年経ち、会うのは年に数回程度。親の趣味嗜好を把握している、なんて方の方が珍しいのです。

ですが私からすると、介護施設が安心安全な介護を提供することは当たり前。その先にご本人が望む暮らしが実現できるか、がもっとも大事だと思っています。

それを実現するためには、親にどのような施設がいいのか事前に聞いておいたり、入居相談員などの詳しい専門家に施設の内情を聞き、実際に見学に行くことで、本当に理想の暮らしを実現できそうか、を判断するとよいでしょう。

(2)スタッフの対応
スタッフは、自分の分身として親の介護を任せるとても大事な存在。
そのスタッフに安心して親を預けられるか、を判断するために彼らの細やかな対応をぜひ見ていただきたいです。

例えば、見学予約時の電話や、受付の対応。
私はよく、施設に入って第一声に名前を呼んでくれるか、目を見て挨拶をしてくれるか、気持ちのいいアテンドをしてくれるか、を見ています。

機会があれば、施設長ともぜひ会ってください。
施設長はその施設を司るキーパーソンですから、施設長がどのような考えで施設運営をしているのか、信頼できる人なのか確認することも大事なチェック項目の一つになります。

(3)コミュニティ
施設に、親と”相性のいい仲間”がいるかは、施設生活を左右します。

例えば、親は周りとコミュニケーションを取りたいのに、周りには要介護度が進み意思疎通できない方ばかり。スタッフも忙しくて、誰ともコミュニケーションを取れずに、部屋に篭りっぱなし、という暮らしは避けたいところです。

食事の際に、ほかの入居者と机を近づけてくれたり、スタッフが会話の仲介をしてくれるなどの気配りはされていそうでしょうか。
レクリエーションの参加率や、親御さんが楽しめそうなサークル活動はありそうでしょうか。

そうしたコミュニティと、親御さんとの相性をチェックしてみてくださいね。

ー今後要介護者が増えて、施設選びをしなければならない人が増えていきます。2025年には団塊世代が75歳以上の後期高齢者となり、超高齢化社会を迎える"2025年問題"について、小菅さんはどう捉えていますか。

私自身は、今以上に国民の健康意識が高まると思っています。

介護スタッフは何十万人も足りないというのはよく言われている話ですし、実際に人材難や経営者の高齢化で介護事業者が潰れる事例も増えています。

これからは、介護サービスを使いたくても使えない時代がやってくると思います。要介護にならないために、健康寿命をいかに伸ばすかに注目する人が増えるのではないでしょうか。

その対策のひとつが、「定年後も仕事をつづける」です。

緊張感がある中で過ごし実際に脳を働かせることで認知機能が、通勤することで身体機能が保たれやすくなります。そして、社会との接点があること、多少なりとも賃金をもらえることも大きいですよね。

実際、私の74歳の母親は、現在もフルタイムで働いています。
以前、「老後何をしたいか」と母に尋ねてみると、「ネットで韓流ドラマが見たい」と答えたんです。
これはまずいぞ、と思いました。(笑)一日中家にいたら、要介護状態への最短ルートを辿ってしまう。

ですから、母にもなるべく長い間働いていてほしいとよく伝えていますし、私自身も今は、死ぬ直前まで働きたいと思っています。

ーこれまで沢山のお話を聞かせていただきましたが、最後に今後の小菅さんの展望を聞かせてください。

私は、介護情報をお伝えすることで人々の選択肢を増やし、「介護で人生を諦める人を減らしたい」です。

前述した通り、介護を理由に仕事を辞めて生活も精神的にも苦しい思いをする人を減らしたい。
そして、介護施設のことを詳しく知ることで、親を施設に入れることに対する罪悪感を抱かず、それぞれが豊かな暮らしができるように、今後も情報を提供し続けていきたいです。

そして、皆さんが介護をもっと身近に感じられれば、いざ親の介護が必要になり、施設選びをしないといけないという場面でも、落ち着いて最適な施設選びができるでしょう。

多くの方へ必要な情報が届くように、これからも介護や老人ホームについて発信していきます。

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以上、LIFULL介護 編集長の小菅秀樹さんへのインタビューでした。
LIFULL介護では、介護情報や介護施設を多数掲載しています。
介護でお困りの方、介護施設選びをされたい方はぜひ見てくださいね。


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私は「自分の家族を預けられる」ホスピスを立ち上げ中です。
そのための情報収集など細かに行なっているので、ホスピス選びに悩んでいる方は、無料相談を受け付けています。

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