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私を救ってくれた海外旅行

コロナ禍だった2022年8月、新卒から5年間勤めた会社を辞めた。
約1年半、何とかその会社で頑張ろうと奮闘した上での転職だった。
転職の決意を固めたものの、最後までその会社で頑張り続けられなかった自分に対して失望していた。
やっと転職先が決まり、会社から解放されることになっても、私の心は暗いままだった。

私に期待して指導してくれた上司や時間を割いて相談に乗ってくれていた先輩に
恩を仇で返すとはこのことのような気がした。

今でさえ苦しい環境に、私が退職した寄せを受けるであろう同期を一人残していくことにも後ろめたさがあった。

転職することを決めたのは自分自身だし、
私一人抜けたところで、会社は通常通り回ることはわかっている。
それでも、良くしてくれた人達の期待に応えられなかったことが本当に辛くて、その頃の私は、あまり笑えなくなっていた。

こんな気持ちのまま、転職先に行くのは良くないと思い、気分転換になりそうなあらゆる方法を試した。

定番の泣ける映画を見たり、集中力を要するお菓子を作ったりした。
沢山寝たし、実家にも帰った。海にも行ったし、親友にも会った。

どれも少しずつ効果はあったのだろうけど、効果は一時的で、暫くしたらまた罪悪感に苛まれた。

そんな私を救ってくれたのは10日間4都市の海外旅行だった。
最終出勤日を終え、有休消化が4週間あった私は、思い立った翌日、航空券を買いヨーロッパに飛んでいた。

明日から10日間旅行しようなんて誘って一緒に来てくれる人もいないので当然、一人旅になった。

一人旅は初めてではないけれど、慣れている訳ではなかった。
10日間というちょっと長めで、4都市を周るのは初めてだった。
コロナ禍で2年ぶりの海外。
予定を立てられるのは1日しかないから、飛行機と都市間の移動の列車、ホテルを決めるだけで精一杯だ。
しかも、コロナ陰性証明をもらって帰ってこないといけない、 旅途中でコロナになったらどうするかを考えないといけない、ミッション付きだ。

考えないといけないことも多かったし、一人旅はワクワクするどころか、怖くて、その夜は朝方まで眠れなかった。

最低限の準備だけして出かけた私は、
離陸時間を間違えて飛行機に乗り遅れそうになって、空港内をダッシュする羽目になるし、飛行機のチケットを姓名逆に登録して購入していてて、出国すら危うかった。

やっと一息できると思った機内では、隣の客がご飯の時に親切にも爆睡中の私を起こしてきて、結局、隣の客と話し始めてしまい、熟睡できなかった。

そんなこんなで、なんとか着いたパリ。
予約した電車の時間に間に合うように計算しながら、知らない街で次はどこに行こうか、何を食べようかと、常に私の頭を一杯にしてくれた。
ヨーロッパのカラッとした夏の気候と日照時間の長さが私の気分を明るくしてくれた。
規律正しい行動を求められる日本社会を一旦離れて、東京より人口密度に低い街通りを散策することが私を開放的な気分にしてくれた。

そんな10日間を過ごしているうちに、仕事のことを考える時間が徐々に減っていった。帰国する頃には、暗い気持ちはすっかり消え失せて、私は自然に楽しいことに目を向けられるようになっていた。また笑えるようになっていた。

スリに会わないかとか、コロナになったらどうしようとか、不安もあったけれど、10日前、衝動的に航空券を買って本当に良かった。

私は、最強の気分転換方法を見つけた。

#わたしの旅行記

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