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ロボコンからどう成仏するか

ロボコンサークルから引退して4年ほど経ちます。
それまで生活の全てをサークルに捧げてきたため、現役時代には引退後の生活を全くイメージできませんでした。引退後も模索があったことを含め、当時の自分に伝えるべく書き綴ってみようと思います。2021年から2024年までの記録です。

【成仏する(じょうぶつ-する)】
ロボコンを引退し、ロボコンに対する未練や心残りがなくなることを「成仏する」と呼ぶことがある

◯ 前提情報
NHK学生ロボコンに参加するロボコンサークルに所属していました。
元々は機械担当でしたが、ロボコンは好きなものの、個人としてロボットを作るのが好きなわけではないことに気が付き、新歓担当、部室担当、渉外、副部長など事務方を担ってきました。卒論以降は、材料科学を扱う実験系の研究室に所属しています。

1年生:サークルに入り、新人大会で経験を積む
2年生:新歓・教育、メイン大会(NHK学生ロボコン2020)が始まる
3年生:コロナ禍でメイン大会(NHK&ABU)を迎える、幹部を引き継ぐ
4年生:研究室に配属、後輩の大会終了後に引退

現役時代の流れ


上級生として

黙って見守るのが先輩だと思っていた

自分がメインで関わる大会が終わり、一個下の後輩がメインで活動する大会がはじまったのが3年生でした。自分が所属していたサークルでは3〜4年生の期間に、サークル運営を担う「幹部」をやることになっていました。3年生で大会終了後に一番上の学年になり、先輩として振る舞うことになるのです。

4年生のとき、自分が目指していた先輩像は以下でした。

「後輩が知りたいと思う情報を書き残したり、聞かれたら伝える存在」
・幹部の仕事をきっちりやる
・新人教育を引き受ける
・フィールドを製作する
・チャットや作業日誌などを眺めて、後輩から呼ばれたら反応する
・飲み会で多めにお金を出す

まとめると、後輩にいっさい口出ししない先輩です。

自分自身が後輩だったときは、早く自分たちで自由にやりたい!とずっと思ってきました。
自分たちが選んだ結論に対して先輩に後から「それじゃ無理でしょ」と言われたり、どの先輩たちも結局世界大会で優勝できていないじゃんと思ったり、先輩に不満があった経験に基づいています。もちろんサポートしてもらって大変お世話になったのですが、意思決定などに先輩が関わってくると無駄な言い争いやストレスが増えるだけだと思っていました。
また、自分は困ったことがあったら先輩を使い倒すと決めていたので、ことあるごとに相談しに行ったり、かなり上の代の先輩であっても声をかけたり呼び出したりして協力を仰ぐようにしていました。

後輩も過去の自分と同様、先輩の存在を邪魔に思っているだろうと思っていました。だからこそ、大会に向けた作戦決定やロボットの開発に直接は関わりませんでした。困ったことがあったら後輩から声をかけてくるだろうと、心配な点があっても「彼らの大会だから」と手を出さずに見守る姿勢を徹底しました。
また、後輩だった時の自分は先輩と直接議論するのがメンタル的にも言葉のパワー的にも大変だったので、文面でやりとりした方がお互いのためになるとも思っていました。チャットに上級生専用チャンネルを作り、上級生同士で開発に関わるような雑談をしていました。(のちにそのチャンネルが炎上して大変なことになったりしました)

今考えると、当時の考え方は、先輩と後輩がお互いに対等な立場になっておらず、先輩が後輩に「してあげる」後輩が先輩に「してもらう」考え方に縛られていたことが摩擦の原因だった気がします。

この年の大会でチームは負けました。
それを見た先輩に「君たちはもっと今年の大会に責任を持つべきだったんじゃないか。なんでもっと関わらなかったんだ。」と怒られました。じゃあ先輩は私たちに何をしてくれたんですか?と反発する気持ちにもなりましたが、振り返ってみると自分が思い描いていた先輩像は後輩から見た姿でしかなく、実際に上級生になったときにどうすべきかは考えていなかったと気づきました。


「後輩に呼ばれたら手伝いに行くよ!」は実現可能か?

開発には「今はとても必要だけど、しばらくすると(タイミング逃すと)不要になるタスク」があり、そのタイミングに自分の日程を合わせられないとタスクを引き受けられません。リズムゲームみたいなものです。メインで開発している時は、全日程空けてあるからいつでもタスクを受けられる状態でいられますが、上級生になると自分が引退していくことも考えてロボコン以外の活動時間も増えます。その結果、これを手伝ってくださいと言われても、今忙しくて…と断り続けることになってしまいます。

4年生は研究室に配属され、卒論研究がはじまる時期です。
時間的にも心理的にも、ロボコンから距離が離れていきます。毎日行っていた活動場所にも、「ふらっと行く」だけのことが難しくなるのです。自分自身も、ふらっと活動場所に現れて「どう?開発進んでる~?」と聞くだけのことに抵抗がありました。行ったからには何かしたい、でもタスクを引き受けられないし、何もできないなら行きたくない、みたいな気持ちがあったように思います。

先輩は、今の後輩がどんな人たちなのか、同期と突っ込んで話すとよいです。機械担当が少ないから加工の時期は手伝った方がいいね、スケジュール遅れがちらしいから人海戦術で踏ん張るときは協力しようね、物品担当がきっと困るだろうからいい感じのタイミングで声かけようね、などなど。前年に担当だった人が特に気にかけておくべきではありますが、周りがフォローすることでタイミングを逃さずに済みます。

後輩は、開発のフェーズを発信するようにするといいです。今は作戦を考えている段階なのか、ロボットを設計をしているのか、加工期間なのか、テストランをしているのか、それがわかるだけで上級生は関わりやすくなります。
期限は、大人数で開発するためのコミュニケーション手段の1つです。ここに間に合わせないといけない、という共通認識を持つことで同じ方向を向くことができます。長期的・短期的な目標をたて、期限を設定し、それを広く主張していくことが上級生を適切に巻き込むポイントになっていると思います。


ただそこに居ること

そもそも自分からは先輩を呼ばない、相談しない、チャット等での発言も少ない後輩もいるのだと知りました。後輩は必要なら自分から連絡をとってくるはずだと思い込んでいたのは間違いでした。その結果、先輩から開発の事情が見えづらくなりますし、後輩から先輩に気軽に相談してもらうのもどんどん難しくなってしまいます。積極的な声かけまではいかなくても、何もせずとも先輩が「ただそこに居る」ことが必要だったのです。

自分の場合は、現役時代に設計したり制御したりしていた訳ではないので、「自分が行っても仕方ない」と引け目があったことは否めません。それでも、この担当は誰だったかなどの過去の事例を知っているだけで十分なのです。自分が答えられない質問や相談があれば、自分がハブ(連絡の中継地点)になって、答えられるような同期や先輩を呼べばいいのです。そもそも困っている些細なことが気付かれなければ、誰も対応することができません。リアルにその場に居ることが大きな貢献になるのです。

テストランを見に行って、「なんで動かなかったの?」と隣で聞く役をするのもいいかもしれません。機械や制御に詳しくなくても大丈夫。ロボットが動かない原因をなんとなく放置して、なんとなくでテストランを続けてしまうのを防ぐ役割があります。また、大会の雰囲気やテストランのノウハウは、ドキュメントに残しにくいものの1つです。上級生にとっては当たり前だと思っていることが、下級生にとっては当たり前ではない場合も多いのです。
さらに、先輩が居ることが後輩たちの精神面の支えにもなるでしょう。その工夫のひとつがOBOGを呼んでのお披露目会でもあります(参考)。

自分の経験では、差し入れを入れる、(一眼カメラを持っていたので)写真を撮りに行く、などの用事を自分で設定すると行きやすかったです。決まった日には18:00〜19:00ごろ研究室のタスクを切り上げて、活動場所を回るようにもして、1週間に1〜2回は顔を出していました。


大会を自分ごとにする

大会を経験した上級生が開発に関わることは、ロボット全体の完成度を上げることにつながるでしょう。そのためには、大会がはじまる前から、懇親会などで世代間で仲良くなるよう工夫したり、一緒に仕事をする機会を多く設けるよう気をつけておく必要があります。つまり、自分たちがメインの大会に後輩を巻き込むということです。まだまだ経験の浅い後輩とも一緒に仕事をしようと思える余裕があればいいのですが、大会に一生懸命になりすぎて難しい状況もありますよね。その時点で先を見通せるかどうかにかかっています。

後輩の開発に積極的に関わるには、その大会を「自分の大会だ」と思うことが大事になってきます。自分が後輩だったときに比べると、どう行動するかに悩むことも多くなるでしょう。先輩の行動が、後輩にどう受け取られるかはわかりません。例え疎まれたとしても(広い心で?)開発に興味を持ち続けられるか。それは、その大会や開発に自分が責任を持っている実感を得られるかどうかにかかっていると思います。そのためには、意思決定(作戦会議やブレスト)に関わっていることが大事なのではないでしょうか。意思決定に関わることで「自分のロボコンだ」という主体性を形成できると思います。


発言を鵜呑みにされる怖さ

大会経験者と未経験者の差は圧倒的です。大会を経験していない下級生にとって、経験豊富な上級生と対等に議論し、開発をすすめるのはとても難しいことだと思います。上級生は、下級生を対等に扱うよう、意識して心がける必要があります。その際は、気心知れた同期と同じノリでキツイ言葉で否定したりしないことが最重要です。

上級生は「そもそも」に疑問を持ったとしても、指摘を躊躇してしまいがちです。例えば、CADチェック時に根本的な指摘をするのを避けてしまうことないですか?一度描いたCADを最初からやり直させると思うと何も言えなくなって、当たり障りのないことしか言わなくなってしまう経験がある人もいるでしょう。これは上級生に限りませんが、後輩に対しては同期に対して以上に言い出しづらいはず。「自分が言うと完全に自分の意見に染まって終わってしまう」という恐怖もあるでしょう。

「後輩は自分のことが嫌いだから…」 「後輩たちが考えていることがわからない」といったふうに、後輩からどう思われているか気に病む場合もあるでしょう。たぶんそれは後輩全体ではなく、あなたが気にかけている個人を指しているはずです。相手が本当は何をしたいのか、どう思っているのか、推察だけしていて本人に聞いていない、思い込みであることが多い気がします。だいたいの場合、実際に話してみると自分の推察が偏りすぎていたり間違っていたりします。第三者を入れて相談することをオススメします。
本人から話を聞いたら一旦文面そのままを受け止めること、相手を疑いすぎないことに注意してください。

下級生の意見を頭ごなしに否定したり、相手の間違いをネチネチ指摘したりしなければ基本的には大丈夫だと思います。後輩に関わるときは、コミュニケーションに気をつけることが最も大事です。自分の思い込みを排除して相手を理解することを丁寧に意識するだけでも、だいぶ変わるのではないでしょうか。

では、後輩に関わらない方がいいのではないか、というのも違う気がしています。自分は、先輩が後輩に遠慮してても何もいいことがないと思っています。「どうせ誰もやってくれないから自分が腹括ってやるしかない」というのが、自分がロボコンで学んだことの一つです。それは先輩になっても変わらないと思います。気づいた人がやるしかない、そのやり方を十分注意すればよい、という話です。


理由がわからないものは消えうる

自分たちが生み出した「良さそうなこと」を残すためには、仕組み化・システム化することが大事だなと思います。なぜそれが行われているのか、ひょんなことから引き継がれなかった場合、それそのものが消えます。コロナ禍でサークルの存続が危ぶまれ、その後で後輩たちがロボコンをしている姿を見たとき、あの時に失われたものが確かにあるのだと思いました。

例えば団体の運営。特定の個人が立ち上げてそのまま面倒を見続けると、ヌシになってしまって、運営を任せられる人材が出てこなくて困ることになります。次の世代が引き継ぐために、個人に依存していた部分をシステムに変えていく必要があります。例えば、4年生になったら幹部を引き継ぐとか、大会ごとにリーダーを決めるとか、そういった仕組みを確立することです。

自分は幹部をやっていたとき、「預かっている」という気持ちで運営をしていました。次の世代につなぐものであり、自分がやっているのはその面々と続く文脈の一時的なものに過ぎない。自分の持ち物ではなく、必ず新しい世代に引き継ぐことを想定して運営するものだと考えていました。


OBOGとして

ここからはサークルから正式に引退し、大学院に進学してからの話です。

「子離れ」する

ロボコンをやるのは現役だ、という意見には完全に同意です。OBOGたちはロボコンや後輩と「子離れ」していかなければいけません。

4年生は開発に参加し、OBOG1,2年目くらいが技術やノウハウ継承などについて検討(現役が間違ったことを言っていたりブレストで見逃していそうなことがあったら助言する)、流石に引退後4年以上経っていたら積極的な介入は辞める、などと段階をつければいいのではないか

ロボコンの開発から離れていくために、苦しむ人もいるのではないかと思います。それまでの生活の全てだっただけに、急に自由な時間を与えられて何で埋めたらいいかわからなくなってしまうのです。自分も引退直後は、空いた時間を埋めるように、大学の技術系プロジェクトにいくつか参加していました。結果、引退した後になって自分は開発が好きなのではなくロボコンが好きだったのだと思い知りました笑。

研究室配属や就職など、ロボコンチームから時間的にも距離的にも離れることで、だんだんと関心や情熱が落ち着き、成仏していけるのだと思います。


新人大会の運営

「周りを見て自分の得意なことをやるべき」と先輩に言われてからずっと、自分がチームにできることは何だろう考え続けてきました。サークル内では技術力が過大評価されており、軽視される傾向にあった「技術以外」の事務方をやっていくと決めた現役時代。サークルを引退しただけではまだ消化不良だったため、新人大会の運営に入ることにしました。

直接ではなく、間接的にロボコンに関わることができます。
ロボコンへの執着は今後しばらく捨てられそうにない。でも、研究やプロジェクトでロボットをやりたいわけでもない。自分はそのタイプでした。運営委員なら、ロボコンに関わり続けることができ、自分が経験してきたことを活かして、直接ではないものの自チームに何かしら貢献できるかもしれません。老害ではなく「老益」の立場に近づける気がします。

大会運営は「子離れ」にも役に立ちます。
例えば、ロボコンをやっていて「こんなルール設定がいけないんだ」といったふうに運営に対して不満を覚えることもあるでしょう。そうやってロボコンに燻った感情を持ったままでは、それにいつまでも囚われてしまいます。大会運営の裏側に自分が関わることで、参加者の視点だけでなく、運営の視点でもロボコンを見られるようになります。

運営委員はNHK大会の運営補助をやっている人も多く、現役とは違うロボコンとの新たな関わり方、居場所を見つけるのに役立つ気がします。


暗躍しましょう

ロボコンで勝つためにはどうすればいいか、引退した後も考え続けてきました。上級生がやるべきことの本質は、「ロボコンで優勝するためだったら何でもする」人を少しでも増やす活動なのではないかとも思ったりします。

4年生時の大会に続いて、引退後最初の大会でも、その次の大会でもチームが優勝できず、このままではチームがどんどん弱くなってしまうのではないかという強い危機感がOBOGの間で漂いはじめました。

前述したように先輩から「なんでもっと後輩に関わらなかったんだ」と言われたことに加え、その後の大会ではチームリーダーの存在が問題視されるようにもなっていました。同期の何人かから背中を押される形で「現役の相談役」として、こっそりと活動することになりました。コロナ世代だったこともあり、サークルがこのまま潰れていくことに対する緊張感が高かったのもあるかもしれません。その時に同期から言われたのが「暗躍しましょう」、「次が育つのは3年後でギリギリ」という言葉でした。
自分では、抽象的に後輩と関わっていると捉えていました。


一対一で話す

抽象的に後輩と関わることになったとき、まずはじめに下級生の情報を収集することにしました。

会議でよくあることですが、最初から全員の前で意見を募っても良い反応は得られません。事前に少人数で議題を洗い出しておいた方がスムーズに進みます。感動的なスピーチをすれば全員の考え方が変わる、なんてことは起きません。まずは1人に話せなくてどうして全員にわかってもらえるでしょう。全体を動かすには、1人、また1人と少しずつコミュニケーションをとっていくしかありません。

チャットや部内資料を眺めて、いろんなことを考えていたり意見を持っていそうな人をピックアップ、活動場所にふらっと現れてその人を捕まえて話をしました。そもそもどんな人かわからないと、関わりを持つのは困難です。ひとまず全員分の新人大会の反省を読み、直接しゃべって、状況を把握することが大事だと思っていました。

やっていたのは、メンタルケアのようなことでした。
不安に思っていること、特に人間関係やマネジメントについて思っていること辛いこと不満があることを聞きます。ただただ聞いて、相手の考えを整理するだけです。自分が直接できることは何もありません。問題を解決するのは本人たちにやってもらうしかないのです。それでも、経験者だからめちゃくちゃ事情や気持ちがわかるのです。加えて自分ならこう思うかもなとか、自分の時はこんなことがあって、といったふうに共感しつつちょっといいエピソードを話せたらと思って話していました。意外と自分の苦労話や失敗談が後輩ウケするのには驚きました。やはり後輩から見ると先輩ってすごい、と思っているようです。

ロボコンは苦しい時間が多いのはよく知っています。何かあったら相談できるなと信頼してもらえるように、いろんな後輩と一対一で何回も話をしました。(あくまで開発の邪魔にならない程度に、です)


意思決定装置の確立

自分がロボコンで一番重要だと思っているのが、大会開始直前のチームビルディング、特にチームリーダー周辺の「意思決定装置の確立」です。

大会開始前後は、その世代にあった開発体制を迅速に整えていくべきなのですが、そもそも恥ずかしがって話題にならないことすらあります。役職が決まっていない状態は、自分が何をやったらいいのかわからず不安になってしまいます。そんな時期に話を聞いて、背中を押してあげることが、先輩として大事な役割だと思うようになりました。話を聞いて情報整理をサポートする役回り"しか"できないとも言えます。そのための話しやすい関係の構築と、会話の前提となるその世代の情報収集が重要なのです。

自分の経験では、リーダーがなかなか決まらないケースがほとんどでした。その理由はだいたいが、相手が本当は何をしたいのか、どう思っているのか、推察だけしていて本人に聞かないことでした。あの人の方がチームについて何か思っていそうだとか、あの人がリーダーをやってくれるんじゃないかとか、思っていて口にしないために誰も身動きがとれなくなってしまうのです。


ロボコンのリーダーとは

現役時代から文章を大量に書くことに抵抗がありませんでした。部内で一番長い記事(自分の日記)を書いた実績があります。ちなみにまだ破られていません。意外と文章を書くのが苦手な人が多いことに気がつき、自分の得意なことの一つだと思うようになりました。

引退後、部内向けに「反省のススメ」と「統括」の2本の記事を書きました。これらの内容に、大会での開発スケジュールについて加筆したのが「ロボコンのリーダーに関する私見」です(先日リリースした同人誌に掲載)。リーダーに関する私見は、かなりのボリュームになってしまいましたが、足掛け4年で書いた内容と言っても過言ではありません。

「ロボコンのリーダーに関する私見」を下書きしたときの目次

1年生の時に出場する新人大会で経験するべき事柄は何か、それを考えて書いたのが「反省のススメ」でした。ロボコンで肝になるのは「コンセプト・作戦、スケジュール、直前期」の3要素であると考察しています。自分のせいだ、もっと自分が頑張ればよかった、努力が足りなかったといった反省を見て、これはよくないなと思ったのがきっかけでした。個人の感情を整理することも大事ですが、次に活かすためには、個人に依存しない改善提案まで考える必要があります。できるだけ具体的に、大会終了後から次の大会までどのように反省をしていくといいかの知見をまとめました。

その後、反省にはリーダーへの直接的な批判を書きづらいため、リーダー失敗パターン集を作るのは難しいよね、という話が出てきました。なかなか個人に依存しない反省が出来ないテーマです。そう考えると今の自分になら、引退して部外者的な立場になったからこそ、書けることがあるのかなと思うようになりました。リーダー経験者、リーダー補佐経験者など、複数の立場の人に協力を得ながら書いたのが「統括」です。
リーダーの仕事内容を「問題発見、問題解決方法を決める、実行する/させる」の3要素であると定義し、それぞれが異なる性格を求めることから複数人でのチーム運営を推奨、リーダー1人はどんなコミュニケーションをとればいいかを考察しました。

技術偏重なチームに反発するように書いたのが「ロボコンのリーダーに関する私見」でした。自分がメインで参加した2020年大会の反省記事が骨格になっています。現役時代に自分が求めていた文章を書いたつもりです。
事務方をやって一番欲しかったのは、実際の開発スケジュールでした。予定は記録に残っていても、実際のところどうだったかを振り返って残してくれる人はいません。自分たちのチームの強みはスケジュールだと思っていたので、その知見をまとめました。

現役時代は副リーダーとしてリーダーを一番近くでサポートし、上級生や引退後も現役のリーダーたちと話をしてきた経験をまとめられたと思っています。ずっとこだわってきたこと、自分が学んだこと、いろんな人の知見をやっと言葉にできてホッとしました。


技術公開

ABUで優勝するためには、チーム内に閉じこもっていてはいけない。日本のロボコンチーム全体が強くなる必要があり、そのためには他チームと交流するべきだ、と教えられてきました。

自分が思う技術は、チーム運営、マネジメントの知見です。短期的に結果が出るとは限りませんが、長く取り組むことできっと強くなれるポイントだと思っています。先輩方から教えてもらったことはたくさんありましたが、ほとんど文章には残されていませんでした。

祈りも込めて、学ロボの同人誌に「ロボコンのリーダーに関する私見」を寄稿することにしました。これがロボコンに対して自分ができる最後のような気がしています。後輩が活躍する姿や自分を超えていく姿を見ることが成仏につながると思っていましたが、結局のところ自分の中で経験を消化する行為が必要でした。これでやっと成仏できるでしょう。

同人誌制作の実際についてはこちらの記事をご参照ください


まとめ

以上の経験から言える「いかにロボコンから成仏するか」のまとめです。

・後輩が負けると先輩から怒られることがある
・後輩に変に遠慮していても特に良い結果になるわけではない
・開発にガッツリ関わるためには、まず作戦会議に出るべき
・後輩の大会を自分の責任ある大会にする(対等になる)
・若いOBOGは、後輩の話を聞いて情報を整理する手伝いができる
・引退後に新人大会運営に関わる選択肢がある
・どうせ誰もやってくれないので、自分が腹を括ってやるしかない
・自分ができることは何か考え続けた先に「成仏」がある

引退してから2年間"暗躍"を続けましたが、限界を感じることもありました。
自分にも他にやることがあるし、自分がなぜこんなことをしているんだろう?という気持ちにも苛まれました。相談できる相手も少なく、引退して離れているOBOGにわざわざ話を振るのも申し訳ないし、じゃあやらなければいい、とは言え他に誰がやるんだと、ぐるぐる考えてしまうこともありました。突き詰めるとただの自己満足です。いつまでつづくんだろうと思うこともありました。

自分がものを書くモチベーションは、その瞬間の自分の思考を閉じ込めておくため、過去に自分が読みたかったものを生み出すため、の2つです。
ロボコンに関して書くのは、現役時代に読んだ先輩の記事や本の言葉が自分を励ましてくれたからです。後輩や、あの時の自分への祈りなのだと思います。どうしたら勝てるのか?と考え続けることをやめられなくなってしまったのも理由の一つかもしれません。

「困難な状況も、意外と覚悟を決めて進んでみたらなんとかなった」という経験を持つ外部の有識者が、「いやいや、全然大丈夫、もっと行けるよ」といってあげることが必要

「無敵の仕事術 君の人生をドラマチックに変える!」より


現役の時は知見を貯めようとするのに、OBOGに関して知見を溜めないのもどうなの?という問いかけだと思ってもらえれば幸いです。
現役時代から7年間、たくさんの方々にお世話になりました。ありがとうございました。

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