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思川最下流を歩く(栃木県)
先日の台風10号の影響で、楽しみにしていた四国旅を中止にせざるを得なくなってしまいました。絶賛就活中の夏休み最大の楽しみが旅でした。仕方なく気を紛らそうとして読んだのが福田晴子の『宮本常一の旅学: 観文研の旅人たち』という本です。民俗学者の宮本常一が所長を務めた日本観光文化研究所では、若者に旅の資金を渡し、旅をさせながら情報収集をさせていたそうです。旅をしながら学ぶというのは、今まで碩路がやって来た活動と似ています。この本を読んで、久しぶりに何か歩いて学ぶ活動がしたくなりました。そこで地元、栃木に着目し、Googleマップを開いて興味を持ったのが「思川」だったのです。
本文とは関係ないのですが、『宮本常一の旅学』のなかで、旅とは現実からの逃避なのか?という問いにハッとさせられる自分がいました。僕の旅は自己のちっぽけさを知り、矮小化することで社会との歩調を合わせようという消極的なものではないかと思わされました。
思川の基本情報
「思川って、深い意味がありそうな名前だな」と思ったことが、調査のはじまりでした。調べてみると源流は鹿沼市の山奥。下流はやがて渡良瀬川に合流します(川と市町村の位置関係については、Googleマップでご確認いただけたらと思います…)。全長78キロあるようです。明治時代まで舟運が盛んでした。名前の由来は、豊作を願う農民たちが祭った水の女神である「田心姫」から来ています(栃木県公式ホームページ[2024年9月18日最終アクセス])。今回は、川の最下流から上流に向かって歩いてみます。
最下流に到着
2024年9月15日午前10時過ぎに、最寄駅の古河駅に到着しました。着いて早々、カメラのバッテリーを持ってくるのを忘れたことに気づきました。仕方なく、写真はスマホで撮ることにします。駅から20分ほど歩くと、渡良瀬川に架かる橋に到着。ここから思川の最下流が見れると思ったのですが、それより南の三国橋に来てしまったようです。ここまでうっかりミスが二つ。以後、無事に進めば良いのですが…。
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ここから思川最下流までの近道をGoogleマップで調べると、三国橋を戻って北へ行くのが良いということが分かりました。しかし、示された道を辿っていくのは面白くない。折角なので、橋を渡った先(写真左側)の河川敷を北上してみることにしました。
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この道をしばらく進むと分かれ道。片方は真っ直ぐ伸びていて、もう片方は川の方に降りていく道です。マップでは堤防を降りた先に小橋があるということだったので、そちらへ進みましたが行き止まりでした。引き返す途中、わざわざ舗装された道を行かなくても、堤防の斜面を登った方が早いと思い、草生い茂る斜面に踏み出したのですが、斜面と元いた道の間に溝があり、つまづいて、前へ転んでしまいました。道が敷かれているのにはちゃんと理由があるんですね…。反省です。
さて、元々のスタート地点になる予定だった野渡橋までは河川敷を道なりに行けば着くということです(ここからはマップを頼らせていただきます)。暑いなか、すれ違ったのは数台の車だけ。僕も乗せて欲しいです。散歩ルートとしては良い所だと思いますが、この暑さ(33度)で歩くのはキツイですね。30分強歩いて、ようやく橋に着きました。小さな橋ですが、二つの川が合流する所を間近で見られるので、その壮大さとのコントラストが印象に残ります。橋を写真右方向渡って、そこから上へ。思川を登っていきます。ここからが本番です。
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川が僕に付いてくる?
北(上流方向)へ歩き出すとすぐに川は見えなくなりました。川をずっと横目に登っていくものとばかり考えていたので、寂しさを感じます。
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人っ気のない雑木林は、鹿や熊が突然出て来てもおかしくない雰囲気です。実際に「猪出没注意」の看板がありました。川は時折、林から顔を覗かせ、「ここにいるよ」と僕に知らせてくるようで安心感があります。すると川が僕に付いて来ているような錯覚に陥ります。実際には、川は僕の行く方向と真逆に流れているのに。
林を出ると、写真(下)のような風景が広がっており、二羽の白い鳥(サギ?)の他、トンビが飛んでいました。
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道なりに進んでいくと、川辺を離れて市街地に出てしまいました。ここで一旦、お昼休憩をとろうと思います。佐野ラーメンのお店が近くあるということで向かったのですが、だいぶ混んでいたので諦めてコンビニ弁当にしました。近くの八幡神社を参拝した後、再び川の方へ歩き始めました。
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友沼河岸跡
川へ続く道は鬱蒼とした雑木林に挟まれてあり、かなり坂を下りました。やがて道のすぐ傍を流れる川が見えてきました。こういう景色を見ながら歩きたかったんだよ〜と思ったのは束の間。道端が急に狭くなり、不穏な雰囲気が漂っています。ここから先、何が起きたのかは写真でご覧ください。
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この最後の水たまりで、くるぶしまでどっぷり泥に浸かり、写真でもお見せ出来ないほど大打撃を受けました。今回はこの辺で切り上げることにします。泥道を抜けて少し歩くと車両防止柵。歩行者用の道らしきものはありますが、草藪と化してしまっています。
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堤防に続く道はまだ足元が見えるので安心です。堤防に登ると、目の前には田園風景が広がっていました。思川ではアユが釣れるようで、「アユ解禁」という看板が立っています。
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この辺は、その昔「友沼河岸」と呼ばれていたようです。江戸時代の頃には川を用いた舟運が盛んでした。
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全体の感想
川の最下流を歩くということで、道は平坦で楽かなと予想していたのですが、いざ歩いてみると迷子や泥道で大変でした。これが上流や源流付近になれば、相当大変な散歩。いや、登山になると思います。今回は3時間半ほど歩いたかなと思います。一夏のささやかな冒険となりました。