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東京下町散歩 葛飾・柴又 本篇

 午後2時頃に柴又駅に到着し、本文の順番に散策しました。到着するまでは、映画「男はつらいよ」に見られたような下町風情は、もう僅かしか残されていないと思っていましたが、いざ着くと確かに映画で見た町の趣がありました。駅前から帝釈天までの間は寅さんにまつわる看板や広告で溢れ、寅さんがいつ帰って来てもいいように残された町という印象を受けました。

柴又駅

柴又駅

 1912年開業の京成金町線、柴又駅ですが、それ以前は人力列車が運行しており、5,6人乗りの客車を後ろから人が押して動いていました。相当体力の要る仕事だったのではないでしょうか。下の写真は改札を通ってすぐのホームです。寅さんはここから電車に乗り旅立って行くことが多く、終点の京成高砂駅で乗り換えていたと考えます。向かいのホーム(京成金町方面)へは線路上の歩道を渡って行き、昔の改札跡と思わしき防止柵を見ることができます。

写真中央の柱には男はつらいよのポスターが掲げられている。さて何作目のポスターかな?

帝釈天と参道

参道入り口

 駅から歩いてすぐに見えてくるのが帝釈天に続く参道です。両側にはお菓子屋さんや料理屋さんが立ち並んでいます。寅さんのおいちゃん、おばちゃんのお店「とらや」(「くるまや」)が実際に残っているということですが、どのお店がモデルになったのか諸説があり、私も判別がつきませんでした。進んで左手にある「川千家」という魚料理のお店は、寅さんの妹のさくらが結婚式を挙げた場所です。お店の横にある水槽には沢山の鯉が泳いでいました。

川千家さん

 参道を真っすぐ進んでいくと柴又帝釈天こと経栄山題経寺が見えてきます。

柴又帝釈天

 室町時代初期が起源と考えられるお寺です。お寺を飾る彫刻は昭和初期に腕利きの職人さんたちによって彫られたものです。映画で見るより存在感があり、お寺の中では新年を迎える準備が行われていました。寅さんおみくじという機械も置いてあり、懐かしいメロディを奏で人目を集めていました。

寅さんと寺男の源ちゃんがふざけ合った廊下

寅さん記念館

 帝釈天から案内表示に従って江戸川の方へ行くと、葛飾柴又寅さん記念館に着きます。「男はつらいよ」監督の山田洋次さんの博物館も併設されていて、一般500円(23年12月現在)で入場できます。別途料金で実業家山本栄之助の家である「山本亭」に行くこともできますが、今回は足を運べませんでした。和洋折衷様式の住宅や日本庭園が見られます。記念館には、おいちゃん、おばちゃん家として使われた本物のセットも残されています。その他、貴重な小道具等のファン必見の展示がありますが、ネタバレはここまでにしたいと思います。

一階部分のセット

江戸川と矢切の渡し

 寅さん記念館の上部は公園となっており、ここから江戸川の堤防へ行くことができます。晴れていたこともあり、良い景色で気分も爽快でした。

江戸川の河川敷(南方)

 北へ少し歩けば、矢切りの渡しに続く道が敷かれていて、川縁に続いています。矢切の渡しとは対岸の千葉県松戸市とこちら側を繋ぐ渡し場のことで、小さな舟に乗って往来します。現在、都内で営業している渡し場はここだけです。

この日は休みだった。木の看板はかなり年季が入っていた。

 堤防を降りて市街地に戻ったすぐの所に「川甚(かわじん)」というお店があります。現在は閉業してしまったのですが、夏目漱石や林芙美子、松本清張等の著名な作家の小説に登場した有名な魚料理のお店でした。

建物はまだ残っている様子

おわりに

 江戸川から再び帝釈天参道に戻り、商店街をもう一巡してから帰宅しました。疲れていたのか降車駅を寝過ごしてしまい、4駅戻って帰りました。後日、大学図書館で借りてきた「男はつらいよ」シリーズの続きを見てみると、先日、自分が見てきたものではない下町の雰囲気を感じました。映画公開から50年も経てば、多少の町の変化は免れません。自分の育った町も再開発が進んでいて、寂しさを感じます。その点、柴又は「男はつらいよ」を通して在りし日の姿も、その変化も含めて記録されており、いつでも故郷に帰ることが出来て良いなと思いました。

 10代・20代の若者でも「男はつらいよ」は見たらハマる魅力を持った作品です。寅さんはカバン一つしか持っていませんが、家族と、人を愛して物事を楽しむ心は忘れません。当てのない旅を続けながら、ときに世間から後ろ指を指され、それでも快活な寅さんの姿には僕自身も勇気づけられます。日々の生活に寂しさや閉塞感を感じる人は、「男はつらいよ」を観ることをお勧めします。寅さんが心強い味方に映るでしょう。これからの時代でもファンが出来続ける作品だと思います。

 下町散歩というより「男はつらいよ」の記事になってしまいました…。お読みいただきありがとうございました。

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