下手な文 7<立冬>
秋がピークを迎えて冬に転じる。
木枯らし1号が冷たかったけれど、ジャケットを羽織らずに公園を歩いてきた。夏には濃い緑だった木々は、すっかり弱い黄色に変わっていた。これからもっと黄色を失っていくのだろう。
暑くて涸れた夏の間、どうしても手を付けられなくて野放図にさせた雑草たちも、ほとんどが枯れていた。「こんなに放っておいてごめんね」と庭に謝りながら、夏の残骸を片付けた。庭はどこまでもおだやかで、誰も怒ってなんかいなかった。ぼうぼうとした草の下から、何か月ぶりかにレンガが姿を現した。
気をぬくと、意識はすぐに過去に飛ぶ。恥ずかしい自分の言動が再生され、苦しい言葉があれやこれやと湧いてくる。
深いところにある言葉に出会いたくて、こんな風に下手な文を書き続けているけれど、私が会いたいのはこんなあれやこれやではない。
言語化しない訓練。
いつも変わらずに待ってくれる庭の片隅で、立冬の私が言葉を閉ざす。