六花

書くことに向き合う。 深いところにある言葉に出会う旅を始めました。

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最近の記事

下手な文 11<悲しいがあるとき>

失われたものを思うと涙があふれる。 思うように出来ていないことに気付いて涙がこみ上げる。 後悔にさいなまれて胸が苦しくなる。 失われたもの、出来ていないこと、後悔。 語ろうと思えば具体的な出来事をたくさん連ねることはできる。 涙の「原因」だと思えるような物語。 そう、それらは物語。 「原因があるから悲しい」からいったん離れてみよう。 ただ「悲しい」があるだけ、としてみよう。 その背後にあると思われる物語は切り離してみよう。 そう、わたしはただ「悲しい」のだ。 わたしの

    • 下手な文 10<どんなときも>

      人はなぜだか本当の自分を探し求めるけれど、 ほんとうはいつだって「本当の自分」で生きている。 「嘘の自分」とはいったい何? 自分の本心とは違うことを言ったりしたりすること? 自分の心に嘘をついて何かを決断すること? でも、それも「本当のあなた」がやってることに違いはない。 本当の自分が心の声と違う言動を選んだというだけのこと。 ・・・ってことは、自分って「心」じゃないってことかしら。 だとしたら、自分って何? よくわからないけど、 生まれたときから今まで どんなとき

      • 下手な文 9<よさそうにみえるもの>

        そう。 何となく「良さそうにみえるもの」が気になって、 本当に自分に必要かどうかも不明なのに追いかけてしまう。 流行っているもの、人気のあるもの、誰かが猛烈に「いい」と言っているもの。やっぱり「良さそうなもの」に見えるよね。 でもさ。 自分の感性って他の人と違うでしょ。 多数決に従うのが実は嫌いなタイプでしょ。 だから大抵、後で気づく。 何となくよさそうに見えたものは、 自分には不要だった、と。

        • 下手な文 8<知ってる>

          自分の足跡を振り返ったとき、その数だけの自分がいたことを知る。 足跡の形をよく見たとき、それだけのことをやってきたことを知る。 足跡の色を数えたとき、自分が何を残したのかを知る。 誰に褒められなくても、自分がやってきたことを愛おしく抱きしめる。 私には、これだけの才能があるということを、 誰もしらなくても、私は知っている。

          下手な文 7<立冬>

          秋がピークを迎えて冬に転じる。 木枯らし1号が冷たかったけれど、ジャケットを羽織らずに公園を歩いてきた。夏には濃い緑だった木々は、すっかり弱い黄色に変わっていた。これからもっと黄色を失っていくのだろう。 暑くて涸れた夏の間、どうしても手を付けられなくて野放図にさせた雑草たちも、ほとんどが枯れていた。「こんなに放っておいてごめんね」と庭に謝りながら、夏の残骸を片付けた。庭はどこまでもおだやかで、誰も怒ってなんかいなかった。ぼうぼうとした草の下から、何か月ぶりかにレンガが姿を現

          下手な文 7<立冬>

          下手な文 6<強い好き>

          過剰なエネルギーはそれと同等の真逆のエネルギーと引き合っている。 量子もつれなどの論拠は私の口からは語れないが、昼と夜、右と左、生と死のように体感覚で「そうだよな」とわかっている種類のもの。 綱渡りで手に持つ長い棒だ。自分の存在そのものは本当は中庸にあるのに、意識が片側に過剰に偏ってしまうとその片方しか見えなくなる。好きすぎる、好きの意識を過剰に注ぎ、それしか見えていないとき、それしか「ない」と錯覚する。けれど、その「過剰な好き」の片側には「過剰な嫌い」が存在している。気づ

          下手な文 6<強い好き>

          下手な文 5<強い拒絶>

          何かを強く拒絶する気持ち、そこには何があるのだろう。 好きじゃないな~、あんまりいい気分しないな~程度の好き嫌いは日常の当たり前。けれどその中で「何か特に強い」拒絶のエネルギーが生まれることがある。あの人が嫌い、あの存在が嫌、なくなればいいのに、見たくない、消えればいい・・・そもそも存在はすべて自然。自分も自然のひとつ。その自然が自然の何かを排除したくなるのは、どういう仕組みなのだろう。 あの人のああいう態度が許せない。 あの存在が気持ち悪すぎて嫌。 強い強い反発のエネル

          下手な文 5<強い拒絶>

          下手な文 4<雪待月>

          呼び名は霜月だけじゃない。 「ゆきまつつき」という響きのなんと美しいことか。 「待つ」という言葉から、夢と希望をまず連想してしまうのは、私がお気楽人間である揺るがぬ証拠といえようか。未来の何かを「待つ」という行為は、私の中では「期待」「楽しみ」に直結する。だから「雪を待つ月」という言葉に美しい雪景色を描き、初雪を待ち焦がれる・・・という乙女チックというかファンタジックというか、何やらフワフワした気持ちになってしまうのだ。 別の方向に思考を動かしてみると、愛犬の食事前の「待

          下手な文 4<雪待月>

          下手な文 3<罪悪感>

          自己肯定感を上げようムーブメントの中で、邪魔者扱いされるのが「罪悪感」。罪悪感を手放し、自己肯定感を上げよう、みたいな消し去られるべき存在のような気がしていた。 けれど、罪悪感があるから謙虚になれたり、慈しみの心が育まれたりする側面もある。自分以外の何かを傷つけたり破壊したりすることを良しとしないのは罪悪感の効能ではなかろうか。 問題は罪悪感の有無ではなく矛先か。 なんだって問題は「有無」じゃなくて「矛先」や「使い方」なんじゃない?

          下手な文 3<罪悪感>

          下手な文 2

          空っぽ人間はいつから空っぽなのか。 生まれたときから空っぽか。 何も入っていない器に何も入れていないから空っぽか。 空っぽ人間なんて、ほんとうはいないと信じたい。 本来、誰だって自分というものはある。 あるから個体として存在している。 顔も違うし色も違う。 でも社会で生きてくるなかで、 多数に認められたくて 多数に受け入れられたくて 多数に愛されたくて 自分の居場所が欲しくて 自分を隠して生きてきた 自分の居場所が欲しいのに 自分を殺して生きてきたなんて 完全に矛盾して

          下手な文 2

          下手な文 その1

          下手な文を書く。 少なくとも、1か月はこのテーマを掲げていこうと思っている。 上手く書こうとしない、かっこつけない、他人の目を意識しない。 いったん、自分にできあがった「ものをかくときのスタイル」を解体したい。 下手な文を書く、と決めたら、指も心も軽くなる。 こうしてスラスラと指に任せて言葉をつづっている。 何のあてもなく、何の計画もなく、カタカタと文字を打っている。 鼻から大きく深呼吸。 深呼吸と荒い鼻息はどこから違うのだろうか。 とにかく吐く。 たくさん吐く。 たくさ

          下手な文 その1

          名もなきものの死

          今朝は二つの死に会った。 車が行き交うアスファルトの上に、しんと横たわったスズメバチの死体。 こんなところでどうしたの。 行き倒れたのか誰かに殺されたのか。 あなたはうちの庭によく来ていたスズメバチさんですか。 イチジクを食べたり、デッキをパトロールして虫を食べたりしていた、あのスズメバチさんですか。 オレンジと黒のしっかりした体が、無音の音につつまれて横たわっている。名もなき命が止まった光景。 その姿は、可愛らしく美しかった。 しばらく行った道の端に、茶色の毛皮をま

          名もなきものの死