廻る。

「誰か、助けて。」

---


章が一段落したところで本をぱたりと閉じる。今のところほどほどの出来のSFという感想。よくあるループ物のお話。きっと奇想天外な方法でループの元凶を解き明かし、脱出するのだろう。それがお約束、というものであるのだから。

平日の図書館は流石に空いていた。2~3歳位の子連れや定年後と思しき男女が数人いたものの、小学生の大騒ぎや満員の読書スペースとはおおよそかけ離れた穏やかな時間が流れていた。本の貸し出し手続きを済ませ図書館を後にする。

(クラスのみんなや先生から心配されているだろうか)
ふと、そんなことを考えた。連絡なしに休んだのだからおそらく家にも電話がかかってきていることだろう。不在着信やLineの通知で埋まっているであろうiPhoneの電源を入れる気にはとてもなれなかった。

(どうせまた忘れられるし)
いくら通知がたまろうが、色々な所に相談されようが、明日になれば皆何事もなかったかのようにケロッとしているだろう。訂正。そもそも「明日」はこない。


気づいたのはいつだったのだろうか。物差しを持たないからしっかりとは覚えていないが、私はいつの頃からか「今日」に囚われていた。
どんな一日を過ごそうが、翌朝になると「今日」に戻ってしまっている。英語の小テストの内容も、社会の意地悪な質問への回答も、文化祭委員会で皆が納得するアイデアも、全て把握してしまった。

どうやっても抜け出せない。ならば、と開き直っていろいろなところに遊びに行こうとするが、自分の財力には限界があったし、そもそも学生の私が周りから怪しまれずに1日で行ける場所はほとんどなかった。今の時間帯は警察が他の場所を見回っているのを知っているから大通りを歩いているのだけど。

正直なところ、どうすればよい分からない。何かの参考になればと思いループものの作品をたくさん調べたが、手掛かりになるものは見つかっていない。今日借りた本も残念ながら良い結果には導いてくれないだろう。
大通りの人の流れの中で絞り出すような声が漏れた。

「誰か、助けて。」

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章が一段落したところで本をぱたりと閉じる。今のところほどほどの出来のSFという感想。よくあるループ物のお話。きっと奇想天外な方法でループの元凶を解き明かし、脱出するのだろう。それがお約束、というものであるのだから。

平日の図書館は流石に空いていた。2~3歳位の子連れや定年後と思しき男女が数人いたものの、小学生の大騒ぎや満員の読書スペースとはおおよそかけ離れた穏やかな時間が流れていた。本の貸し出し手続きを済ませ図書館を後にする。

(クラスのみんなや先生から心配されているだろうか)
ふと、そんなことを考えた。連絡なしに休んだのだからおそらく家にも電話がかかってきていることだろう。不在着信やLineの通知で埋まっているであろうiPhoneの電源を入れる気にはとてもなれなかった。

(どうせまた忘れられるし)
いくら通知がたまろうが、色々な所に相談されようが、明日になれば皆何事もなかったかのようにケロッとしているだろう。訂正。そもそも「明日」はこない。


気づいたのはいつだったのだろうか。物差しを持たないからしっかりとは覚えていないが、私はいつの頃からか「今日」に囚われていた。
どんな一日を過ごそうが、翌朝になると「今日」に戻ってしまっている。英語の小テストの内容も、社会の意地悪な質問への回答も、文化祭委員会で皆が納得するアイデアも、全て把握してしまった。

どうやっても抜け出せない。ならば、と開き直っていろいろなところに遊びに行こうとするが、自分の財力には限界があったし、そもそも学生の私が周りから怪しまれずに1日で行ける場所はほとんどなかった。今の時間帯は警察が他の場所を見回っているのを知っているから大通りを歩いているのだけど。

正直なところ、どうすればよい分からない。何かの参考になればと思いループものの作品をたくさん調べたが、手掛かりになるものは見つかっていない。今日借りた本も残念ながら良い結果には導いてくれないだろう。
大通りの人の流れの中で絞り出すような声が漏れた。

「誰か、助けて。」







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