ゲーム紹介「Orwell: Keeping an Eye On You」
旧正月セールということで新しいゲームを購入してみた。元々1000円のところ200円で購入できるのであれば買わない選択肢もなかろう。缶コーヒー2本と引き換えに数時間にわたって楽しめるゲームを手に入れた。
スマホ版もあるらしい。Android向けは日本マーケットにないようだが。
本題に入ろう。このゲームは監視社会の中で様々な情報を収集し推理することで重大犯罪を防止するという筋書きのゲームである。
プレイヤーは情報を集め公安機関に報告する立場の人間として活動する新人のエージェントである。
簡単に「情報収集」と括ってしまったが、一体どのような情報を集めるのか。文字通り「ネットに上がっている全ての情報」である。
職場や学校の広報ページ、ニュースサイト、SNS、このような誰でも見られる情報だけでなく、銀行口座の取引履歴や病院の電子カルテ、果ては電話の盗聴やPCへのハッキングを行って集めた情報まで使用する。
こうして(現在の日本で行うにはおおよそ非合法に)収集した情報を基にゲームが進み、展開が移り変わってゆく。最初は正義のための行動のはずだったが、果たして最後まで自分の行いが善であったと言えるのかが大きなテーマとなっている。
このゲームはマルチエンディング制であり、筆者はまだ1ルートしか攻略していない。その中で思ったことが3つある。
①塵も積もれば山となる
②が、塵を積み重ねることは人間にしかできない。
③そもそも塵をまき散らすのは自分だけではないため、完全に抑えることはほぼ不可能
①についてはほぼ自明であろう。
とあるサイトに掲載されたプロフィールからSNSのアカウント情報が割れ、そこの投稿内容から趣味のコミュニティに辿り着き、コミュニティの掲示板から重大な秘密につながる手掛かりが得られる──基本的なゲームの進み方はこのような形であり、これは現実世界でもできうる事象であると実感した。無論機密情報には触れられないが。
②③については筆者個人としては再認識であるがどうだろうか。
このゲーム中では収集した情報から事件やほかの情報につながりうる情報を自動でサジェストするAIがアシスタントでつく(プレイヤーはサジェストされた情報を公安機関に提出するのが仕事)が、AIはあくまでもサジェストするだけなので、不要な情報(被疑者はチョコバナナパフェが好き、など)もサジェストしてきたり矛盾した情報(ニュースサイトの記事では反対していた活動をメール上では肯定している、など)に関してどちらが正しいのかを判断することができない。
この部分は現状のAIと人間の関係性にも近く、あくまでもAIは判断を補助するためのツールであり判断や思考を伴う領域では人間の力が必要であるという様相が上手く描かれていたと思う。
また、情報のつながりに関しても、被疑者の友人の電話口での一言や掲示板での書き込みによって思わぬ情報がつながることが往々にして存在している。
人の口に戸は立てられぬと古くから言われているが、結局のところどんなに自分が防衛策を講じていても周囲からの流出を防ぐことは難しいという現実が如実に顕れている。
このゲームの世界観の是非については筆者からは語らない。プレイした各人の考えに委ねたいと思う。
ただ、規制や緩和によって誰が得をして誰が損をするのか、という点を考えながら風を読む必要があると強く感じたことはここに残しておく。
1週目クリア後、私は「search」という映画を思い出した。
この映画は行方不明になった娘をSNSのアカウントなどの情報から追いかけていくという筋書きである。映画ではテレビのニュースなどインターネット以外の情報も含めて進んでいくが、細かなつながりを集めることで一つの大きな絵が完成するという意味ではゲームと通じるものがある。
後味も悪くないので興味がある人は是非。
というわけで、初めてのゲーム紹介記事であった。
少しでも興味を持ってもらえたのなら僥倖というものである。