【心理学論文37】Enclothed cognitionの再現性
白衣を着ると集中力が上がる、スーツを着ると背筋が伸びる。
前回の記事でも紹介したように、服装が私たちの能力や態度に与える影響を「Enclothed cognition」と呼ぶ。
この概念はAdam & Galinsky(2012)によって提唱され、瞬く間に注目を集めた。この論文引用文献数は2025年1月現在で795なので、めっちゃ多いほうと思う。
しかし、その後の研究で再現性の低さが指摘され、一部の研究者の間では疑問視された。たとえば、Horton et al.(2023)の研究では、先行研究の信頼性と妥当性をメタ分析によって検証している。
この研究では、24本の論文に含まれる40件の研究データを集め、Enclothed cognitionの効果が実際に再現可能かどうかを評価した。彼らは特に、2016年以降の研究が以前よりも再現性や信頼性の面で優れている点を指摘している。これは、心理学分野での「再現性の危機」を受けて研究手法が厳密化されたことが背景にある。
結果として、Enclothed cognitionの基本的な効果は支持された。たとえば、「白衣を着ることで集中力や注意力が高まる」という初期の主張は、一定の条件下で再現性を持つことが確認された。ただし、Burns et al.(2019)による実験では、白衣効果がストループ課題で再現されなかった例もあり、初期の研究すべてが信頼できるわけではないことも示された。
著者らはz-curve解析(←はじめて聞いた!)を用いて研究全体の発見率を評価し、近年の研究では出版バイアスの影響がほとんど見られないことを報告している。一方、2016年以前の研究には統計的に有意な結果を無理に強調した可能性が示唆されている。
Burns, D. M., Fox, E. L., Greenstein, M., Olbright, G., & Montgomery, D. (2019). An old task in new clothes: A preregistered direct replication attempt of enclothed cognition effects on Stroop performance. Journal of Experimental Social Psychology, 83, 150-156.
Horton, J. L., Adam, H., & Galinsky, A. D. (2023). Evaluating the evidence for enclothed cognition: Z-curve and meta-analyses. Journal of Experimental Social Psychology.