【心理学論文40】不確実性管理理論
過去数回にわたって、社会経済的地位と向社会性の関係性の先行研究を紹介してきた。しかし、なぜ低い社会経済的地位の人々がより高い向社会的行動をとるのか、その背景についてはあまり触れてこなかった。
Amir et al. (2018)は、不確実性管理理論(日本語訳がこれでいいのかわかんないです)という新しい理論を紹介しながら、社会経済的地位と向社会性の関係について説明を試みている。おそらく、社会経済的地位の文脈において、不確実性管理理論はこの論文が初出だと思う。
不確実性管理理論では、幼少期に経済的な不安定さを経験すると、脳は不確実性に敏感になり、リスクを避けようとする習慣が形成される。
この理論の特徴は、環境の安定性そのものではなく、「不確実性」そのものが行動に影響を与える点にある。
たとえば、低SES環境で育った人は、たとえ現在の状況が安定していても、「何が起こるかわからない」という感覚が抜けず、リスクを避けたり、確実に得られるものを優先したりするという。
不確実性が高い環境では、他者との協力や社会的ネットワークを築くことが、自分や家族の生存や安定にとって有益となる。
そのため、他者を助けることで、自分が困難な状況に陥った際に支援を受けやすくなるようにするらしい。
論文中ではライフヒストリー理論にも言及されているが、過去の理論と新しい理論の違いがいまいちよくわからなかった。何度も読み返そう!
おしまい。
Amir, D., Jordan, M. R., & Rand, D. G. (2018). An uncertainty management perspective on long-run impacts of adversity: The influence of childhood socioeconomic status on risk, time, and social preferences. Journal of Experimental Social Psychology, 79, 217–226.