【心理学論文14】白衣を着れば有能になれる?
コンタクトレンズデビューするために眼科に行ってきました。
病院に入り、コンタクト処方をお願いしますと伝え、おとなしく着座。すぐに名前が呼ばれ、ざっくり問診。レンズのつけ方について軽くレクチャーを受けた後、目玉にごり2ごり擦りつけること30分、全然入らない。さらに10分擦りつけて、目玉の表面にレンズが滑り込み、やっとのことでデビュー。
診てもらったお医者さんだけど、ひょうひょうとしていて新鮮だった。
「はじめてコンタクト入れるの怖いよね~」
こんなテンションだったので、まったく焦ることなくトライできた。お医者さんって権威的で高圧的な態度で接してくる人もいたので、こんな人もいるんだなと思ったりして。
で、そんなお医者さんが着ている白衣についての論文です。白衣を着用することが認知的な課題成績に影響を与えるのか?というお話。
論文の内容
タイトルにもなっているEnclothedなんだけど、これは【接頭辞】en (~の状態にする)+cloth(服)+【接尾辞】edの造語らしい。
Enclothedとは、ただ単に衣服を着用している状態ということではなく、着用している衣服の抽象的な概念に心身が包まれている、と解釈すればよいのかな。
そしてEnclothed cognitionとは、Enclothedの場合においては、その衣服が示す抽象的な概念が、着用者の認知的なプロセスに影響を与えるという主旨の説明がなされている。
さらに読み進めると、白衣はお医者さんや科学者の象徴なんだよって述べられている。で、それを着用することが着用者の注意深さやミスの低減に繋がるのではないか、という仮説が続く。
実験は複数行われており、1つ目の実験では認知機能の測定手法としてストループ課題が用いられています。この課題成績について、白衣を着用している実験参加者と、着用しない(=私服)参加者とで比較しています。
ストループ課題っていうのは、文字の意味がその色と関係あり、しかも異なる場合(不一致文字)、参加者は文字色を正確に答えることが困難になるっていうやつ。例えば、赤色の「あお」という文字、緑色の 「きいろ」という文字の色を答えるような場合みたいなのね。これは、文字の意味が、文字の色を答えることを阻害するために生じて、参加者は文字の意味を答える傾向を抑制しなければならない。
研究の結果、まず課題の不一致条件のほうが一致条件よりもミスが多いという統計的な差がみられた。よって、ストループ課題が課題として機能しているということが示された。
そして、不一致条件において白衣を着ている場合のほうが白衣を着ていない場合よりもミスが少ないという統計的な差もみられた。よって仮説は支持された、ということになる。
実験2では、医者用ということが明示されている白衣(described as a medical doctor's coat)を着用する条件、ペインター用ということが明示されている白衣(described as an artistic painter's coat)を着用する条件、医者用ということが明示されている白衣をただ単に見る条件を設け、それぞれの条件で間違い探しゲームを行っている。
その結果、最初の条件のほうが後の2条件よりも多くの間違いを発見することができた。医者という文脈が認知機能に効いている、ということになる。
これらの結果により、特定の衣服を着用していてかつその衣服の抽象的な概念が関連付けられているときに、認知機能に変化を及ぼす、ということが言えると述べられている。換言すると、衣服を着用していても抽象的な概念が関連付けられていなければ、あるいは抽象的な概念が関連付けられていても衣服を着用していなければ、認知機能に変化を及ぼさない可能性があるということになる。
他にも、もしもナース服を着ていたら、それらは養護的な概念を有しているので、電気ショックを与えにくくなるかもねって著者らは言っています(どんな状況!?)。
感想
これ以前の研究にはあまりなかったのは、「着用者自身の認知」という点だと思う。「着用している人に対する印象」という研究は割と見かける内容だけど。
あと、「着用者の認知機能の変化」について明らかになったけど、「着用者による着用者自身への印象の変化」も気になるところ。白衣を着ると、なんだか偉くなった気がしないかなぁ。
もう一つ。よくわからなかった部分があって、それが以下の文章。
To provide a cover story, the experimenter told participants that other participants in prior sessions of this experiment had been wearing lab coats during lab construction.
よく心理学実験では、実験の意図が気づかれないようにカバーストーリーを参加者に教示するんだよね。この文章がその該当部分だけど、lab constructionの意味がよくわからなかった。研究分野によってはピンとくるのか??僕はピンとこなーい。
おしまい。