24-45 わからないということ
普段現場でコーチをしていると、コーチングとティーチングのバランスが重要になってくることがある。ついつい、教えてあげたくなるし、そのために自分はここにいると思うことも多い。しかし昨今の流れから行くと、主体的に、自分で考える ということが多く推奨されており、僕自身も概ね賛同している。もちろん、引き出しに何も入っていない状態で、考えろ は無理だし、要はそのバランスがとても大切で、時間をかけすぎても良くないし、時間をかけないのも良くない。自ずと導かれたことのほうが、選手本人に定着することも理解できる。そこで、今回は、「わからない」を言語化、細分化し、ティーチングとコーチングの境界が少しでも明確になれば良いかなと思い、このテーマを選んでみました。
「わからない」という感覚や状態は、さまざまな要素に分解することができると思います。人が「わからない」と感じる理由には、情報の不足や理解の不足、経験不足、認識のズレなどが関係しています。以下に、「わからない」状態を構成する要素を細分化してみました。
1. 情報不足:「わからない」と感じる原因の一つには、必要な情報が不足していることが挙げられます。何かを理解するために十分な情報がない場合、結論や答えにたどり着けず「わからない」となります。
例: 説明が省略されているなど、背景情報がない場合。特に新しい分野やテーマで学ぶとき、基本的な情報がないと理解が難しくなります。
2. 知識やスキルの不足:「わからない」状態は、必要な知識やスキルが不足している場合にも生じます。自分の持っている知識が理解に達していない、あるいはスキルが不足していて実際にやってみることができないと、わからないと感じやすくなります。
例: 新しい数学の概念が理解できない場合、必要な基礎知識が不足しているか、応用のスキルが身についていない可能性があります。
3. 経験不足:経験が不足していると、新しい事象や概念が馴染まず、理解が難しくなることがあります。実際の体験を通して理解することができれば「わかる」に近づきやすいですが、経験がないとそのイメージが浮かばず、理解に結びつきにくいです。
例: 運転したことがない人が、車の運転の理論を聞いても、経験がないために具体的に理解しにくい。
4. 理解の方法やアプローチが異なる:「わからない」と感じる原因には、自分の理解の仕方やアプローチが合っていないこともあります。ある人には効果的な方法が、自分にはしっくりこないことがあり、そのために理解が進まないことがあります。
例: 数式を使った説明よりも、図や具体例がある方が理解しやすい人にとって、数式だけの説明はわかりにくい。
5. 複雑さ・難易度:物事が複雑すぎたり難しすぎたりする場合も「わからない」状態を引き起こします。自分の理解力やスキルを超えたレベルの内容に対しては、処理が追いつかず、「わからない」という感覚が生じます。
例: 難解な科学論文や専門的な技術書は、専門家でなければ「わからない」と感じやすい。
6. 認識のズレや誤解:情報や知識はあるものの、それが自分の中で誤った解釈をされていると、理解が進まず「わからない」と感じます。これは、認識のズレや誤解が原因となっており、他者とのコミュニケーションでよく起こります。
例: 「温かい」や「寒い」といった感覚を伝える際に、他人と認識がずれていると、説明が理解できず「わからない」と感じる。
7. 集中力や精神的な要因:集中力が不足している、疲れている、緊張しているなどの精神的な状態も「わからない」と感じる原因です。集中できていないと、理解力や記憶力が低下し、わからない感覚が生じやすくなります。
例: 疲れている時に話を聞いても、内容が頭に入らず、わからないと感じる。
8. 興味や関心の欠如:人は興味があるものには注意を向けやすくなりますが、関心がないことには理解が進みにくく、「わからない」と感じることが増えます。興味や関心がなければ集中力も持続せず、理解が浅くなるためです。
例: 自分に関係のない分野や興味のない話題を聞くと、「なんとなくわからない」と感じやすい。
9. 抽象的で理解しにくい概念:抽象的な話や、具体性に欠ける説明が多いと、イメージがつかめず「わからない」となりがちです。具体例がないと、概念が漠然として理解しにくいためです。
例: 「幸福」や「自由」などの抽象的な概念を説明する場合、具体的なイメージが伴わないと「わからない」と感じやすい。
10. 言語や表現の問題:言葉の意味がわからない、表現が難解である場合も「わからない」となります。特に専門用語や技術的な表現は、聞き手がその分野に詳しくない場合、理解が難しく感じられます。
例: 専門分野の特別な用語や、学術的な表現が多い文章は、初心者にとってわかりにくく感じられる。
「わからない」という状態は、情報や知識、経験の不足、認識のズレ、さらには集中力や関心の欠如、言語表現の難しさなど、さまざまな要素が絡み合って生まれます。理解に必要な情報やスキルが足りていない、もしくは自分に合った理解方法が取れていないと、物事が「わからない」と感じやすくなります。
以上よりコーチングするべきものは、3、6、7、8、
ティーチングするべきものは、1、2、10、
その中間は4、5、9、
と意外と、状況によっては、早急に参入してテイーチングをした方が良いケースもあるかもしれません。一番難しいのは、その中間で、どちらの選択をした方が良いか難しい場面なのかもしれません。選手に対しての指導は、一度では覚えきれないのは当たり前です。しっかり聞いてもらいたいし、厳しいことも言いますが、やはり簡単には覚えられません。ですので、いつでも聞ける状態を作りつつ、「正解を理解している?」という問いかけをしつつ、本人が不安であることは、いつでもコメントできるように現場に佇んでいることが必要なのかもしれません。教えすぎそうな場合は、効果的な質問の技術を応用してコミュニケーションをとるのも良いかもしれません。