山塚りきまるの『なんかメロウなやつ聴きたい』第124回 クソガキ特集
はいどーも。
えーっとね、こないだ読んだ本でね、あるラッパーの方がね、『“まだ◯◯歳なのにこんな音楽やっててすごい”とか言わないようにしてる。だって年齢は本質じゃないから。』というような事をおっしゃっていて、なるほどそうかと膝を打ったんですけれども、まぁワタシなぞは所詮、下品で下世話で時代錯誤な浅ましい畜生ですから、やっぱ“年齢”っちゅうのを一つのフックとして見てしまいますね。
もし仮に94歳のおばあさんがバッド・ブレインズのコピバンやってベース弾きながら客席にダイブとかしてるの観たら、絶対『すげえ』って思っちゃうもん。
あとおれの祖母、もうすぐ90歳になるんですけども、数年前に溝をジャンプして渡ってるのを見たとき、『すげえ』って思っちゃったもんやっぱり。
おれが90歳になったとき、もう生活の中で取れるアクションとして“ジャンプ”は絶対にないもん。
ていうかそもそも90歳まで生きられないもん。
まあまあまあ、そういう話してるんじゃないというのはわかりますけどね。
で、まぁあの、それを受けてっていう事ではないんですが、今回は『クソガキ特集』です。
“年齢は本質ではない”という言葉は重々承知ですけれども、しかし、やはり、年端も行かぬ子供たちが、無軌道に、野放図に暴れているさまというのは端的に癒しですよね。元気になれます。
イタ電とかピンポンダッシュとか自分がやられたら死ぬほどムカつくんでしょうけど、でもそういう事して遊んでる子供たちには何と言いましょうか、生命のわななきを感じますね。
あの、よく、『いつまでもうんこおしっこで笑える感性を持っていたい』っていう大人いるじゃないですか。僕あのフレーズがあんまり好きじゃないんですよ。
だってそれをわざわざ言う時点で、もうその感性は失われてるワケじゃないですか。“いい大人はうんこおしっこで笑うべきではない”という観点に基づいての発言じゃないですか。
そもそもうんこおしっこなんてフツーにヨユーでおもしろコンテンツじゃないですか。
おれの友達、30近くなってもいまだに河川敷でうんこ焼いたり、焚き火をおしっこで鎮火してその煙をみんなで浴びたりして遊んでるもん。“逆に”とか抜きで、うんこおしっこは面白いですよ。確実に。だって汚えもん。物理的に汚えことは面白いもん。汚いことはなんておもしろいんだろう。
まあまあ話題がスリップした上に破傷風を啓蒙するような危険な発言をしてしまいましたが、とにかくクソガキは最高っつう話ね。“今の若者はすっかり飼い慣らされてしまった。従順な家畜ばかりだ”という嘆きが散見される世の中ですが、そんなときは由緒正しい、アメイジングなクソガキたちの姿を見て元気出していきましょう。今こそクソガキバイブスが我々には必要なのです。
じゃ、まぁそういう感じで、クソガキの、クソガキたちによる、クソガキバイブス溢れるミュージックをご紹介していきます!
みんな、ついてきてね!
一曲めは、オールド・スカルで『ゲット・アウタ・スクール』。
1989年、『ゲット・アウタ・スクール』で鮮烈デヴューを飾ったこのパンク・バンドは世界中を驚かせました。
なんせメンバーの平均年齢が9歳!
家にあったボロいギターとキーボードをいじくって遊んでたトゥーロン兄弟の姿を見た父親が、“こいつはモノになる”と思ったのか、簡単なコードをいくつか教えてバンドを作らせた。っつうのが結成のきっかけだそーです。
ジャケ写から漂う“クソガキ感”とは裏腹に、エイズやホームレスなど社会問題に切り込んだシリアスな歌詞を、性急なサウンドに乗せて甲高い声でシャウトしまくり、あまつさえ『ロナルド・レーガン アンタを憎むぜ』という政権批判まで盛り込んだこのバンドは当時たいへんな反響を呼びました。
各メディアはこぞってこのバンドを取り上げ、なんとMTVではミュージック・ヴィデオが公開され、ソニック・ユースやフレイミング・リップスの前座を務めるほどの人気者に。
『いや絶対こいつら歌詞書いてないでしょ。オトナがやらせてるだけっしょ。』というツッコミは当時からありましたがそれは野暮天というもの。この溢れ出る衝動性は間違いなくリアルそのものであります。
文字通り、叩きつけるような無軌道な演奏や、変声期前のキンキン声で野放図にシャウトしまくるさまには、得も言われぬ迫力があります。
ちなみにこいつらセカンドアルバムも出してて、タイトルがなんと『CIA・ドラッグ・フェス』。かっけー(笑)。
二曲めは、ヒューマン・スキャブで『スクリーミン・デーモン』。
ジャケ最高すぎ(笑)。
もうジャケからクソガキ感溢れまくってますね〜。
このガン飛ばしてる彼こそがヒューマン・スキャブでありまして、このアルバムは全編彼の宅録によるもの。ちなみに当時10歳です。
もう写真が全部最高ですね(笑)。クソガキ以外の形容詞が思いつかない。どこに出しても恥ずかしくない完全無欠のクソガキです。クソガキの中のクソガキです。
バケツやスプーン、ギター、オモチャのピストルやピアノを縦横無尽に使いまくったローファイ&ジャンク極まりないサウンドと、西海岸パンクの香りをほのかに匂わせるキャッチーなメロディは、まさに初期衝動としか言いようがありません。クソガキバイブス放ちまくり。
曲名も『カサブタ喰う』とか『窓に石投げる』とか『オレ史上最高のギターを弾く』とかクソガキバイブス溢れまくってます。最高です。
ちなみにこのアルバムがリリースされてから35年が経過した今も、ヒューマン・スキャブ氏は音楽活動を続けられておりますが、たぶん、おそらく、世間一般でいうところのマトモな大人にはなっていません(笑)。Facebook見たらライフル銃持ってガン飛ばしてる写真がありました(笑)。
三曲めは、マーヴィン・ホーモンガーで『セックス・イン・モーション』。
さて、ここまで読んでお気づきの方もいらっしゃるでしょうが、クソガキミュージシャンがやる音楽というのは大体パンクです。
一般的に申し上げて、パンクという音楽ジャンルは高度な楽曲構成や演奏力を必要としませんし、性急さや衝動性が何より尊ばれる分野でありますので、トーゼンといえばトーゼンなんですけども、じゃあそれ以外ないのかよ。っつったら勿論ございます。
このマーヴィン・ホーモンガーは、クソガキによるファンク・バンドであります。子供たちが笑顔を浮かべて演奏する、ステキで明るいキッズ・ソウルなどは、それこそジャクソン5を例に挙げるまでもなく無数にあるワケですが、こいつらはちゃんとクソガキです。ちゃんとクソガキだし、ちゃんとファンクしてます。
ハリウッドのティーン・エイジャー四人組によるバンドなんですが、まるでP-FUNKのごとき、妖しく艶かしいドロッとしたファンクをやってます。歌の題材といえばドラッグやらセックスやら、ストリートの実情を語るものばかり。曲も冗長だったり荒削りだったりするんですけど、でもその“背伸び感”というか、“調子こいてる感”が、クソガキだな〜って感じしますね。“ホーモンガー”っていう単語も、『売春婦を買う客』みたいな意味ですからね。その露悪的なテンションもいかにもクソガキっぽい。
コレ、自主制作盤だって言われてますけど、ロスとかデトロイトからスタジオ・ミュージシャン呼んでる上に、レコーディング・エンジニアとかプロデューサーも立ててるので、ちゃんとレコード会社のバックアップあったんじゃないかなぁ? と思いますね。でもどうだろう、ハリウッド在住ってことはめちゃくちゃボンボンだったんじゃねえかっていう邪推もありますな。だってこのアルバム、二枚組なんですよ。デヴュー作でいきなり二枚組ってまず有り得ないじゃないですか。リリースされたのが1976年なんですけど、ディスコが隆盛を極めていたシーンの状況を鑑みるに、こんな内容のアルバムにそこまで金かけるか? って思うんですよね。絶対売れるワケないもんこんなの(笑)。
四曲めは、スムーシュで『ラッド』。
最後はどれにしようか迷ったんですけども、シアトル出身のこの姉妹バンドで締め括ろうと思います。
これは結構有名な盤なんですけど、まぁハッキリ言って全然クソガキ感ないです(笑)。じゃあ何で紹介すんだよって話なんですけど、このアルバムが単純にとても良いからです(笑)。
当時12歳の姉がヴォーカルと鍵盤、10歳の妹がドラムを担当してるんですけども、まあまあ一聴して大変キャッチーですよね。全曲自分たちで作詞/作曲/演奏してるんですけど、どの曲もすばらしい。歌も演奏もセンス溢れまくり。このアルバムはたちまち評判を呼び、パール・ジャムの前座も務めるに至りました。すごい才能ですね。
ちなみに現在も“カオス・カオス”と名を改めて精力的に活動中でありまして、今年もすでにシングル一枚出してます。一昨年出したアルバムもとても良かったです。ルックスもイケまくり。
ハイ、というワケでいかがでしたでしょうか、山塚りきまるの『なんかメロウなやつ聴きたい』第124回 クソガキ特集、そろそろお別れのお時間となりました。次回もよろしくお願いします。
愛してるぜベイベーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
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