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因果関係の探究

 <科学的に言えば因果関係を語るときに気をつけなければならないのは、「起こったこと」と同程度に「起こらなかったこと」が重要ということだ。>
 毎日新聞、11月18日の「坂村健の目」の「起こらなかったこと」という記事に注目した。そして、因果関係の研究においては「起こらなかったこと」についての研究も非常に大切だということがよくわかった。

 坂村氏は言う。
<「HPVワクチンを受けたらまひが出た」のが起こったこと。しかし多くの研究で、ワクチンを受けていなくても同程度の割合で同種の症状が発生することがわかった。それでHPVワクチンは冤罪と判定されたのだ。>

 坂村氏は、これを言う前に、さらにわかりやすく、たとえ話でこう説明している。

 パンを食べたら翌日、突然死したという事実があった場合、これは事実だから、これが「起こったこと」で、報道される。
 しかし、パンが突然死の原因であると科学的に主張するには、「食べても突然死しなかった」という「起こらなかったこと」とか、「食べなかったのに突然死した」ケースとの比較が必須なのだと。

 そして報道は一般に起こったことを扱うため、「起こらなかったこと」に注目する訓練を受けていないようだと氏は述べる。

 HPVワクチンの場合がまさにそうだったのだ。メディアは、起こったことについてのある学者の説を取り上げて、確かに大きく報道していた。そして厚生省も尻込みしてワクチンの接種を積極的には推奨しなかったということがあった。
 そのため「ワクチンを受けずに子宮頸がんで死亡した年間3000人と言われる女性は『ワクチンによる被害者』でないので、これも報道する側には見え」ていなかったと批判する。
 「ワクチンを受けたおかげで、がんを発症しなかった」というケースも、「(幸いがんが)起こらなかったこと」なので、これも報道する側にはあまり見えていなかった、と手厳しい。
 

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