大正9年、柏崎の中村彝個展
中村彝の代表作「エロシェンコ氏の像」が描かれた大正9年、新潟県の柏崎市で彝の個展が開催された。
出品点数は27点で、うち、21点が油彩画、4点はパステル画、2点はペン画とされる。
技法と作品名のみを記したこの時の出品目録が残されているが、ここに「図版が載った作品以外」(下記、小見氏の論考)は、これまで特定(作品画像と作品名の照合)が非常に難しかった。
それは、例えば「静物」と目録に載っていても、現在知られている何年制作のどの「静物」を指示しているのか分からないし、あるいはまだその図像が知られていないか、忘却の淵に沈んでいる「静物」かもしれないからだ。
しかし、1997年、新潟県立近代美術館で中村彝展が開催されたとき、財団法人黒船館から、大正9年の柏崎会場を撮影した4葉の貴重な写真が提供され、「何点かを確認することができた」と小見秀男氏が「中村彝と洲崎義郎と柏崎」という論考のなかで報告している。
この論考は、1997年の展覧会図録に付帯する『中村彝・洲崎義郎宛書簡』に載っている(122〜129頁)。そして、この冊子の130〜131頁にこの4葉の写真が大きく載っているので、この展覧会でまとめられた洲崎宛書簡、小見秀男氏の論考とともに、この4葉の写真は、彝の研究にとって重要なものとなっている。
そこで、本記事では、柏崎出品27点のうち、実際にどこまで大正9年の目録における作品名と会場写真における作品とを照合できるか、1997年の新潟展で明示されなかった作品も含めて、可能な限りそれを明らかにしてみよう。
その方法として、先ず、4葉の写真に写っている作品に、向かって右側から順に番号を振ることにする(本記事冒頭の写真)。
すると、こうなる。
130頁上段:1〜8
130頁下段9〜12
131頁上段13〜20
131頁下段21〜27
以下、これらの27点が、当時の目録の作品名とどこまで照合できるか、その結果を示す。(続く)
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