ごちそう
昨日、オットが郊外にある古民家カフェに連れて行ってくれた。仕事先の経営するお店らしく、一度行って見ておこうということらしい。仕事がらみとはいえ、そんなことは滅多にないので、ムスメとわたしはワクワクしながらついて行った。
わたしたちは開店時刻より少し早めに着いたらしい。お店の人から「あー、あと3分くらいで開店なんですけど、上にあがって待ってもらっててもいいですよ」と言われた。うっわ。なんか、厳しそうな店だなと思って緊張してしまった。こうなるともう、頭の中は真っ白である。
お茶を持ってきてくれた女性に、「和御膳三つお願いします」とオットが頼むと、2分もせずに料理が運ばれてきた。お昼のメニューは、和御膳ひとつしかない。だから、わたしたちが入店したと同時に作り始めたのだろう。しかし、この早さがなぜか不快だった。座ったと同時に出てくるラーメン屋みたいだ。食べたらすぐに出てっとくれ、と言われているような気がするのだ。考えすぎだろうけど。
しかも、オットがすごい勢いで食べて、わたしとムスメが半分も食べてないのに、もう箸を置いてしまった。それで「急げ」と言われているような気がして、わたしはリラックスして食事ができない。
そうなるともう「味」がしない。急いで海鮮丼を平らげ、鯛のあら粕汁を飲み、野菜の煮付けをどんどん食べた。おいしいかどうかもわからない。
気づけば、わたしは背中がすっかり曲がって、猫背のままご飯を食べていた。顔をあげるのも辛かった。ひとつひとつを味わっている余裕などなかった。急いで食べてさっさと帰らないと、お店の人に怒られるような気がしてきた。
マイペースのムスメはのんびり食べているが、3分の2ほど食べたところで、「ごめんなさい、もう無理」と箸をおいた。確かに量は多くて、オットが早食いをした理由も「勢いつけて食べないと、全部入らない気がして」というものだった。わたしも最後は無理やり押し込んだ。
いつもそうだ。緊張する。わたしは、外食に向いていないのだ。いろんなことが気になって、楽しく食事ができない。文句の多いババアだと思われるだろうが、状況に適応しにくくなってしまったのだ。ああ、難しいお年頃になってしまった。