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まぶたが
毎日、夕方から両目のまぶたがめちゃくちゃ重い。体の一部でありながら、何か別物をくっつけたような気がする。自分のまぶたに油粘土を乗せたような感じだ。昼間はなんとかなるが、夜になると目が半分しか開かない。
歳をとるとまぶたの筋肉が緩み、下垂してくるとは知っていたが、これがそうなのか。人によっては手術するらしいから、侮れない。ノートパソコンで作業をしていると、視線は常に手元を見下ろすような感じで、まぶたも下がっている状態だ。むくみも手伝って、ずいぶんと腫れぼったく感じる。
子どもの頃、まつげにマッチを乗せる、という芸当をやってみせる友だちがいた。くるりと上を向いたまつげにマッチ棒を一本ずつ乗せていくのだ。もうあまり覚えてはいないのだが、片目に三本くらいは乗ったと思う。まぶたの筋力もあるだろうし、まつげの向きというものも影響しているのだろうから、なかなかの技だと思う。何かの役に立つことがあるかと言われれば、全く思いつかないが、それはその人の自慢の一つであった。
今日、職場で「自己紹介文と経歴、趣味、特技、座右の銘などを書いてください」と言われた。顔写真入りで、こんな人がこの学校で働いています、というチラシを作るらしい。こんな、まぶたの重いおばちゃんに、何か取り柄があるだろうかと考える。いやー、なにもないな。
フリースクールのチラシだから、つまり、それを受け取った人は子どもの不登校で悩む保護者である。広告の基本のキとしては、その人たちにとってお役に立てる情報を載せなければならない。
わたしはカウンセリングの資格もないし、勉強も教えてあげられなし、ポンコツな事務のおばちゃんでしかない。ただ教室の一角にいつもいて、必要なものを用意したり、頼まれたことを補助するだけだ。時々、自分が透明になっている気さえする。
フリースクールに子どもたちがやってくる。わたしはただ、田舎のおばあちゃんが孫を迎えるように、おお、おお、よう来た、よう来たな、ゆっくりして行きなさい、という姿勢でいるだけだ。毎日がそんな感じである。そして、「孫が来て嬉しい、帰って嬉しい」という川柳みたいに、毎日、放課後に静かになった教室でホッとする。
そして夜は、重くなったまぶたを必死でこじ開けながら、なんとかnoteを書いている。
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