見出し画像

いぬもり

友だちが通う大学の近くに喫茶店があった。それは、まあ、なんというか学生が通い、学生がアルバイトをしている、大学の近くには必ずあるタイプの店で、メニューも学生好みだし、学生向けのたっぷりした盛付けと、濃いめの味付けだ。

友だちの話だと、サークルの仲間がバイトをしているというので、毎度みんなでこぞって行ったらしい。そして、腹ペコの学生が頼むのは「犬盛り」である。文字通り、「大盛り」にプラスして、犬盛り、という意味だ。もちろん、メニューにはない。こっそりと「犬盛りでお願い」と頼むのだ。すると、ごはんがマンガのようにこんもりと盛られた皿が出てくるのだという。

ただ、わたしはその店に行ったことはない。そこは部外者が立ち入れない仲間内だけの居場所のように感じて、わたしは足が向かなかった。一度、犬盛りを見てみたい気もしたが、それもまた想像に留めたほうがいいような気がした。店のアットホームな外観もまた、学生でもないイチゲンさんの私には入りづらい雰囲気だった。

さてこの20年くらいの間に、その店は市内にポツポツと店舗を増やしていて、今日は新しくできた店に行ってみた。明るく清潔で、今っぽいカフェだ。家族づれも何組か食事をしていた。しかし、メニューはやはり、カジュアルな洋食で、揚げ物、パスタ、ハンバーグ、オムライスなど、王道メニューが並んでいた。ごはんとスープはおかわり自由で、お腹いっぱいになるのは間違いなかった。このシステムだったら、別に犬盛りを頼まなくてもいいんじゃないか?自分で好きなだけおかわりすればいいのだ。

友だちのあの話は何か盛っていたのだろうか。ああそうか。犬盛りか。
写真は、デザートにムスメが頼んだプリンアラモード。

いいなと思ったら応援しよう!

りかよん
サポートいただけたら、次の記事のネタ探しに使わせていただきます。