ひとごと

なにごとも、ひとごとではなく、じぶんごと。

つまり、「情けは人の為ならず」ってことだ。なるほどそうだな、と思う。ただそう思いつづけて生きていくのは結構つらい。共感力と言うと優れたイメージだが、実際のところはその後の感情の処理がうまくいっていないと自分が潰れる。

時々、なにも見ていなかったフリをして、知らん顔をしていたい。わたしとは関係ないですけど、何か?と、目の前の困った人をブッチギリたい。でも、困っている人を見ると放っておけない。あるいは、頼まれたら断れない。

友だちの会社で「退職代行サービス」を使って、いきなり会社をやめた部下がいるそうだ。先週の金曜日は会社の飲み会で、普通にいつも通りの様子だったのに、月曜日に会社に来てみたら、内容証明の通知が来ていた。会社はその人に直接連絡を取ることはできず、全てを代行サービス、つまり代理人を通さないといけないのだそうだ。

「不満とか悩みとか、なにも聞いてなかったし、気づかなかった」とわたしの友だちは言ったが、辞めたい本人の言い分は「頼まれた仕事を断れず、抱えた多くの案件のために疲弊し、精神的にまいってしまった」のだそうだ。

「大丈夫?やれる?」と聞かれて「はい」と答えた相手から、あとで「無理でしたが、断れませんでした」と言われても、「だって出来るって言ったじゃん」と言いたくなる。言いたくはなるけれども、やはりそこは管理職、上長がちゃんと目を配っておかないといけないんだろうな。「言ってくれればよかったのに」と思うが、「言えない空気があった」とか「できないと言って自分の評価が下がると思ったら言えなかった」とか、様々な事情の中にその人はいたのだろう。

人は、余裕がなくなっていくと「もう大人なんだから、自分のことは自分でやれ。甘えるな」とか、「そんなこともできないのか」と、ダメ出しはするが、肝心の当事者の悩みは「ひとごと」なのだ。

そんな空気の中で、「あの〜、わたし困ってるんですけど、誰か手を貸してくれませんか」とは言いにくい。空気を読める人ほど、それは無理。吐き出せない人はどこまでも吐き出せない。

だからせめて、今日だけは、今日くらいは、と、時々、全てをぶっちぎって、布団に丸くなって寝ていてもいいんじゃないかと思う。映画館に一日中いてもいいし、大好きな音楽を聞くのもいい。ボーーーーーっと海を見るとか、ひたすら庭の雑草をむしるとか、とにかく、自分で元気を取り戻す方法を何か一つだけでも、持っておきたいと思う。

だって、みんなわたしのことは「ひとごと」なのだ。わたしは自分の機嫌を自分で取るしかない。


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