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【読書おすすめ】ビギナーズ家族(小佐野彈)
エンジン01@有田をきっかけにして、小佐野さんの文章に興味を持ちました。
そのときの小佐野さんのお話。「一周回って、歌集って小説よりもコスパ良い」っていう発言も新鮮だったし、小説家仲間の綿矢りささんから「カテゴリー分けされても動じない。それを辞さない人」と評されているのも興味深かったです。オープンリーゲイの、という冠をかぶせられることが多いようですが、それがどうした上等じゃないか。と帆先に立ってる感じがいい。髪の色もすてき。
それで一冊、まずは読んでみようと手に取ってみました。本人はエンターテイメント小説、と何かのインタビューで語っておられましたが、いやー、とある場面で泣かされました、とっぷりと。私も、泣きじゃくるうなじを見つめた経験があるから。
一般的にはいびつなかたちでありながらも、しかしおずおずと「自分の人生」を生きようとして、不格好な家族というかたちをさぐるシーンが、見事に描かれていました。
私も、文句なしの円を描けなかった、という経験があります。
苦しんだ頃に書いた文章を、久しぶりに読み返してみました。再掲してみます
その人は私を責めた
「あなたの描く円は 円くない」と
その人の描く円は
曇りのない円
どこから見ても誰が見ても、文句のつけようもない円
しかし私の描く円は
ところどころかすれてちぎれそうな円
そんな円を描いていては幸せになれるはずがない 「ぜったいに」とその人は断じた
円を描け、円を描けとその人はいう
私も完ぺきな円を描きたい
描きたかった
どうしても描けなかった
私が描くのは いびつな円
時間をかけて 震える指先で描く円
我ながら情けない円
それでも円
いびつだけど、まる
それでいいじゃないか
認めてあげたい 自分の描くせいいっぱいの円を
ゆがんではいるが、かろうじてまるくなっているその形を
そのままに
評価は、ずっと後からでいい
私の、円
きっと小佐野さんも、いびつな円を描こうとして、なけなしの自己効力感を育ててきた人だと感じました。小佐野さんの小説、続けて読んでみます。歌集も手に取ってみようっと。