商業出版する方法#35〜気になる「印税」の利率
元KADOKAWAでビジネス・実用書の出版プロデューサー、渡邉です。
出版の話をすると必ずと言っていいほど出る話題が「お金」の話。特に著者にとって「印税」は気になるところかもしれません。
ただ一つ申し上げたいこととして、私は「文芸の編集者ではありません」。あくまでも「ビジネス・実用書」です。文芸の世界といわゆるハウツー本の世界はさまざまな意味で「違い」があり「別ジャンル」となります。
よって、その点を踏まえて読んでください。
現状ビジネス書・実用書の印税率は、
6%〜10%
といったところが平均的かと思います。
無論、本を作る上でのコストや、新人かベストセラー作家か、自分で執筆するか、ブックライターをつけるか(ハウツー本の世界では、ゴーストライターという言い方は、今はしません)によって、率は変わってきます。
私がKADOKAWAにいた頃、最低の利率は4%でした。しかし重版時からは8〜10%に引き上げるなど、少しでも著者の良い形で納得いただけるよう「配慮」はしていました。
しかしブックライターを起用したり、その他制作的にコストがかかりそう・・・と言った場合は、著者の利率はもうちょっと低めに交渉させていただいてました。
でね。これで「えー低い!」とか思わない方がいいですよ。
小説家さんのように、本の執筆一本で仕事を回しているわけではないのです。
ハウツー本の場合は、本業を持っている人が、自分のスキルやノウハウを本にして提供する、ので基本経営者やビジネスパーソンが圧倒的多数。
むしろ、8割の人が「印税を気にしていない」ことが多いです。
大事なのは、商業本の著者であるという”ステイタス”だったりするので、私が思うに、印税が低いとか何とかでゴチャゴチャ言う人は最近はむしろ極めて少なくなりましたね。
今や文芸の世界であっても、本の印税より「講演会」や「塾を開いたり」することでの収益をあげている作家も多数です。
そっちの方が、儲かる!と断言している女性作家もいるくらい。
まあ、現在は文芸に比べて「ハウツー本」の方が、まだ売れ行きがいいくらいなので、作家であってもハウツー系の要素を加えたエッセイに主力を振り返るほど。
実際「ハウツー的内容」の方が、実生活に直結しやすいので、読者も多くなりやすいと言わざるを得ないでしょう。
本読まない人でも読んで、ためになる!わかる!
がハウツー本(ビジネス・実用書)のモットーですからね。
その意味では出版業界も変わってきているんです。明らかに「安泰」な業界では無くなりました。影響力もSNSの方がまさっていると言ってもいいでしょう。
しかし過去にもお伝えしましたが、商業本の良いところは「第三者の目」が入っていて、客観と主観のバランスがうまくとれている点です。
よって「ガセ」をつかまされることが、希少になる、といったところはメリットではないでしょうか。
SNSがいくら隆盛を極めていても、今とても問題になっているのは「ファクト」へのフォーカスです。
クチコミはある意味で、大きなムーブメントを生みやすく、ビジネスにも直結しやすいですが「ウソ」も充満しやすい。
歴史的に見ても「うそ」によって、多くの血が流れ命が失われている事象も発生しています。
その意味では、まだ既存マスコミの意義というのはあるような気がします。特に出版は、テレビや新聞のような「とってだし」ではなく十分な吟味と検討の本に、世に出される情報商材です。その意味でも、本だけには「信頼性」と「権威性」を保つべく、日々出版社の編集者やスタッフは奮闘しているといっても過言ではありません。
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