私がデータドリブンに目覚めた瞬間を、おとぎ話風に語ってみる
むかしむかし、あるところに、新米フードバイヤーがおりました。
20代半ばにして夢をつかんだ彼女は、いっしょうけんめい働きましたが、
なぜか商品も企画も一向に通りません。
キャリア10年以上の先輩たちの足元にも及ばないどころか、足を引っ張ってばかりで、毎日泣いてばかりいました。
そこへ、ある日社長が現れてこういうのです。
「あなた、先輩たちみたいな経験がないんだから、そこに頼っちゃダメなのよ。ないものはないの。データを見なさい。数字を読みなさい。そうすれば、時間をかけなくても、いっぱしのバイヤーになれるわよ。」
さてさて、新米フードバイヤーはAccessとExcelを手に、いっぱしのバイヤーになるべく、歩き出すのです。
ごあいさつ
さてさて、ずいぶんファンタジーな導入になりました。
こんにちは、はじめまして、Rikaです。
ちょっと浮世離れて見えるかもしれませんが、これはおよそ8年前、私が実際に経験したことです。
私は今、Tableauを用いたデータビジュアライゼーションを中心に、データアナリストとして働いています。
今流行りの仕事ですし、たった数年で「データ活用」「DX」など、「データを使って、何かを良くしよう」という試みもずいぶん増えました。
しかし一方で、「では、データに救われた・感動した経験はありますか?」と問うてみると、データのプロですら、意外と多くの方が口をもごもごさせてしまいます。
そんな様子を見ていて、私は気づきました。
もしかして、私が20代後半で経験した、「明確にデータに救われた経験」と、そこから得られた気づきって、とても貴重なものなのでは・・・?
本日は、それをできるだけ楽しく、ファンシーに皆さんにお伝えできるよう、おとぎ話風にお伝えしたいと思います。
KKDの世界で、若輩の女が頭角を現すには
さて、ここはバイヤーたちの仕事場、「商品部」。
ぐるりと見渡しても、そこには40代以上の男性ばかり。
20代の女性はどうも珍しいようです。
それもそのはず、商品の買い付けにはある種の能力が必要で、それは一般に、若い女性には備わっていないと思われているからです。
その能力とは・・・
「KKD」 勘・経験・度胸 です。
※これはフィクションです
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ちょっと悪口っぽくなったので急にフィクションと言い出しましたが笑
これは私の「印象」です。印象。
ただ、一つ釈明しておきたいのが、
この「KKD」、私は決して否定しているわけではないということです。
私の尊敬する先輩たちや、世間でも有名な名バイヤーたちは、ありえない感度のアンテナで「勘」を磨き、過去の成功「経験」からビクトリーロードを描き出し、「度胸」でその道を突っ走ります。
著名な経営者の方も、この「KKD」を極めた方がたくさんいらっしゃいます。
とても素晴らしい「才能」です。
そう、才能なんです。
この「勘」が極めて優れている方はそれに頼っても私は全く問題ないと思います。
神様からのギフトです。存分に使ってください。
しかし、残念ながらこの「勘」、誰もが持っているものではないですし、
「勘」の鋭い方でも、「経験」という実績の裏付けがなければ、組織は動かせません。
つまり、「KKD」は「才能がある前提で、しかも長い時間をかけて実績を築かなければ発揮できない能力」ということです。
(度胸は思い切り一発なんで、必要な時出してください。)
そう、実績のない若輩は、どうやったって勝てないゲームシステムなんです。
これが、当時の私にとっては、とっても都合が悪かった。
この「KKD」の土俵で若輩が頭角を現すには、じっと10年こらえるしかありません。
そこで、私にチートを授けてくれたのが、魔法使いならぬ、社長です。
彼女は、流通業には珍しく金融出身で、数字の力を強く実感されていたのだと思います。
当時、会社で使えたのは、簡単な販売履歴が閲覧できるシステムと、あとはAccessとExcel。
それでも、「誰に・何が・いつ・いくつ」売れたのか、を追える環境でした。いわゆる、ID-POSデータと同じですね。
そこから、私の「勘」と「経験」を「データで代替する」試みが始まります。
「勘」の代わりに「気づき」を。「経験」の代わりに、「過去の売上データ」を。
かくして新米バイヤーは、慣れない商談の合間に、データを見ることを始めました。
そしてある日、売上規模は小さいですが、売り上げの伸びが良いカテゴリを見つけました。
自社のシステムで購入者(卸だったので、お客さんはレストランや居酒屋さんです)を調べてみると、自社のメインの購買層ではありませんが、新規の流入は多い業態のお客さんがよく買っていることも分かりました。
そして、いま、自社のラインナップには、たった数品しかそのカテゴリの商品は品揃えされていません。
こ、これだ!!!
新米バイヤーは急いで企画書を作りました。
「確かに売り上げ規模はまだまだですが、昨年対比での売上伸長率は●%、全社平均と比べても圧倒的です。そして、購入者のほとんどが、新規流入の多いこの業態のお客様です。新規客にとって魅力的な商品を取りそろえることで、新規の定着を図れます!やらせてください!」
昔やってダメだったしなぁ・・・と先輩たちは首をかしげますが、
ま、やってみれば。新規の客層も昔とは変わったしね。と企画は通りました。
そして、新たに自社のラインナップに数品の新商品が加わりました。
大ヒット!・・・とは言えないまでも、
新しい客層のニーズをカバーできたので、貴重な純増売上を稼ぐことができました。
今でもその会社では、増えたり減ったりしつつも、今も20品程度の商品が定番としてラインナップされているとか。
めでたし、めでたし。
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あんまり具体的に言うとアレなので、ふわっとした言い方ですみません。
ですが、これこそ、私が「データに救われた」瞬間です。
・経験のなさを過去のデータ(売上伸長率・顧客の属性分析)で補い、
・勘を気づき(自社のラインナップに特定の商品が欠落している可能性、新規客の目線からの商品価値)に変えて、
8年経っても定番に残るような、一つのサブカテゴリを開拓できました。
新米バイヤーだった私を、いっぱしのバイヤーにしてくれたのは、まぎれもなく、データだったんです。
いい話ですね。(お前が言うな)
ところで、皆さん、気づいてました?
「K 経験のなさを K 過去のデータで補い、K 勘を K 気づきに変えて、D 度胸一発!」で企画を通したんです、私。
そう、勘・経験・度胸から、気づき・過去データ・度胸に。
結局どっちも、KKDだったんですね。
おあとがよろしいようで。