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痴漢被害未経験の全女性に被害に遭う前に読んでほしいこと
これは私の経験談です。
被害に遭って初めてわかったことというものがいっぱいありました。
普通に暮らしてたら、知らなかったことです。
もちろん、被害に遭わないのが一番です。
でも、もしこれを読んでいるあなたが被害に遭ってしまったら…その時はこのnoteを思い出していただけると幸いです。
少しでも多くの女性の役に立てますように。
まず、私が被害に遭った時のことをお話しします。
あの日は、人身事故で電車が二時間くらい遅れていました。
会社に行く人、学校に行く人で駅は人で溢れかえっていました。
元から男性が苦手で空いた電車にしか乗れなかったのですが、その日は満員電車に乗らざるを得ませんでした。
人がごった返している中、運良く乗れた電車。
遅延していたので各駅停車でした。
乗った次の駅でドアが閉まり、電車が発車した直後、臀部に違和感を覚えます。
何やら、人の手のような温かさがありました。
私は、決して男性に好かれるようなナイスバディな人間ではありません。
むしろ貧相で、小柄な方です。
なので、自分に魅力がないと思っている女性も、十分注意してください。
といっても、注意しようはありませんが…
痴漢をする時点で特殊な思考をお持ちの方ですので、常識は通用しないと考えてください。
自分では魅力がないから大丈夫と思っていても、一部特殊性癖を持った迷惑な方には好かれてしまうかもしれません。
話を戻しますが、私は自分に魅力はないと思っていました。
最初は、カバンか何かが偶然当たってしまっているのだろうと思っていました。
しかし、電車が大きく揺れて私含め、乗客のカバンの位置が変わった時にも、その何かは私の臀部をしっかりと支えていました。
さすがにおかしいと気づいた私は、スマホの無音カメラのインカメで真後ろを撮影します。画面を見て、明らかに私と同じ方向、つまり、私の臀部を触れる方を探しました。
思った通り、真後ろには男性がいました。手の長さ的にも彼しかありえませんでした。顔がわかるよう、周りが写らないよう気を付けながらも撮影しました。この判断が後に功を期すこととなります。
痴漢に遭うと怖くて声が出ないという方もいらっしゃいますが、私はその時、いたって冷静でした。撮影後、スマホのアプリをカメラからボイスレコーダーに変えます。録音ボタンを押して、カバンの外ポケットに入れました。
そして、臀部に触れる手をつかんで後ろを振り向きました。
「痴漢しましたね、次の駅で降りてください。警察に行きますよ。」
そう、大きな声で言いました。男は掴まれた手をすぐさま振り払い、知らんぷりしました。
大きな声で言っていたし、満員電車なので他の乗客にも確実に聞こえていました。男が反応しなくて困った私は周りを見渡します。
目があった人は全員、私から顔を背けました。ここで、助けてもらえないと悟り、自分だけでどうにかしなければいけないと思いました。
電車が次の駅に着き、男は足早に降りていきます。私も男を追うように降りました。幸運なことに、男は駅の、二方向を壁に囲まれた部分に逃げてくれました。私は追いかけ、男を追いつめます。男の周りには壁と壁と線路と私。逃げ場がなくなった男に私はもう一度言います。
「痴漢しましたね、警察に行きますよ。」
「すみません、つい魔が差して…」
男がようやく認めました。私はもう一度言います。
「警察に行きますよ。」
そう言うと、焦った男は認めたはずなのに
「僕はやってない、知りません。」
そう言って私の横を通り抜け、逃げていきました。
成人男性の全力疾走に小柄な私が敵うはずもありません。
追いかけるのは早々に諦めました。諦めてしばらく、駅のホームにただ、立っていました。緊張の糸が切れたんです。
本当は、怖くて怖くてたまらなかった。男の手も、私から顔をそむけた乗客も。助けを求めたのに、誰も助けてくれなかった。
そう思って、その場でうずくまって泣きました。人目もはばからずに。
降りた駅は県内で二番目に大きな駅でした。
泣く私の前を、多くの人が通り過ぎていきました。
明らかに異常な私を、誰も助けてくれませんでした。
期待しすぎたのでしょうか。どこかで私は、日本人は優しい。みんなで困っている人を助け合える、と思っていました。
小学生でも習うことです。困っている人を見たら助けましょう、と。でも、少なくとも、その時の私の周囲には、小学生でさえわかることを理解していない方しかいなかったようです。
泣いている私の目の前を通った人達の心情としては「厄介なものには関わりたくない」だったのではないでしょうか。日本人ってそういうところもありますよね。腫物には触りたくない、みたいな。
電車の中で私のSOSを無視した人たちの心情も同じでしょう。ですが、私は無視した、周囲にいて絶対に聞こえていた人たちのことも加害者だと思っています。
よく言いますよね、傍観者は加害者と同じ、と。被害者から見れば、本当にそうなんです。自分はやってないとか関係ない。
私は今でも、周りにいて助けてくれなかった人たちのことを恨んでいます。
加害者男性には後々制裁を加えるので、恨みたくもない、思い出したくないといった感じでしょうか。
十分ほど泣いたところで、一人のおじさんが声をかけてくれました。
「大丈夫?どうかしたの?」
と。私は嗚咽を上げながらも、痴漢被害に遭ったことをその男性に言いました。男性は
「少し待っててね。」
といい、数分後に駅員さんを二人連れて戻ってきました。駅員さんに痴漢に遭ったことを伝えると、一人は声をかけてくれた男性の連絡先を聞き、一人は警察を呼びに行きました。
流石は県内二番目の大きさを誇る駅、と言ったところでしょうか。
数分後には私服警官を三人連れて戻ってきました。三人のうち一人は女性で、私にどんな人だったか、どちらへ逃げて行ったかを聞いてきました。
そこでようやく、加害者男性の顔写真を撮ったこと、ボイスレコーダーを回しっぱなしにしていたことを思い出しました。
そのことを伝えると、警察の方は少し驚いていましたが、場所を移そうと言ってきました。
まだ頭が混乱していた私は素直に警察の方に支えられ立ち上がり、手を引かれて近くの交番まで歩きました。
交番の小さな一室で、顔写真を見せるよう言われ、撮った写真を画面に映しました。
警察の方は、私に撮ってもいいか確認をとった後、その写真を撮り、近隣の警察官に写真を共有したようでした。
しばらくして、交番に一台のパトカーが到着。女性警官に手を引かれ、パトカーに乗り込み、県の警察本部まで行きました。
道中で所属している学校、親の連絡先を聞かれ、答えている間に到着した感じでした。
パトカーに乗ったのも、パトカーがサイレンを鳴らしているのを内部から聞くのも初めてでしたが、二度とお世話にはなりたくないです。
本部について、警察の方の後をついていき、部屋に案内されました。
おそらく、被害者も加害者も同じような部屋なのではないかと思います。
ドラマで見るような事情聴取の部屋に似ていました。
ですが、待遇は違いました。まだ幼い私を気遣って、ほとんどの時間、女性警官が一緒にいてくれましたし、外からはお菓子やジュースを探す声が聞こえてきました。
持っている人がいなかったらしく、出てきたのはお水でしたが…。やり取りが聞こえていたので、お水だけでも嬉しかったです。
事情聴取の段階になると強面の男性警官が担当になりました。
それでも、部屋のドアを閉めて二人きりにならないよう配慮されていましたし、本当に感謝しています。
男性警官に事情を話し、スマホのデータをコピーさせてくれと言われたので、もちろんOKし、加害者男性の顔写真と録音データを移してもらいました。データを移すときにスマホの中身が飼い猫の写真だらけなのを見られたときは少し恥ずかしかったですけどね。
警察の方に聞かれたのは、「乗った電車」「何両目のどの位置」「どの駅からどの駅まで被害に遭ったか」「時間はどれくらいか」「触られたのは臀部直接か、服の上からか」「どの方向に男が逃げて行ったか」「被害に遭った時の流れ」でした。事細かに聞かれ、流石警察だ、と思ったことを覚えています。
ほとんどのことはスムーズに答えることができました。
しかし、その日の電車は約二時間遅れ。
どの電車に乗ったかなんてわかりませんでした。
電車に乗る直前に、ホームの人混みの写真とともに母にメッセージを送っていたので、その時間の少し後の電車に乗ったということで探してもらいました。
何両目のどこかについては、イラストを描き、それを提出しました。
ここで一つ、問題が発生します。
私が乗ったはずの電車は横一列八人掛けの椅子があるタイプの電車だと警察の方に言われたんです。
しかし、私が実際に乗ったのは、対面二人掛けの椅子があるタイプの電車でした。
私は確実にあっている自信があったので、その電車ではないと言います。
しかし、私が出発した駅をその時間付近に出発したのは八人掛けタイプだと言われます。
そこが一致しなかったので、さらに詳しく「何番ホームから乗ったか」「何両目かを間違えていないか」を問われました。
何両目でも対面二人掛けだとは思うのですが…そこは大事なようだったので、何両目かに乗ったかは自信のなかった私は、某検索サイトのストリートビューを使って説明しました。
確実にこのホームのこの位置から乗った、と。
警察の方は乗車駅と降車駅、二つの駅と連携して調べてくれました。
調べた結果がどうなったのかはわかりませんでしたが、正確な証言をするため、何度問われても自分の記憶を信じて答えました。
事情聴取は一時間ほどで終わり、警察の方に
「加害者が見つかったらどうしたいですか?」
と聞かれます。そんなの、決まってました。
「前科をつけてください。」
私は迷わず言いました。続けて、
「できるだけ重い罰を、望みます。」
と言うと、警察の方は
「わかりました、そういう方向で動きます。」
と言ってくださいました。この質問はおそらく、加害者ともう関わりたくないという考えの被害者もいるためのものかと思われます。
警察の方に母が警察署に到着したことを聞かされると、安心するとともに、仕事を抜けさせて申し訳ない気持ちになりました。
部屋に母が入れるというわけではありませんでしたが、近くにいると聞いただけで安心しました。
しばらくして、鑑識さんを連れた女性警官が戻ってきました。
部屋のドアを閉め、男の鑑識さん、女性警官、私の三人になりました。
「スカートは脱げますか?」
と聞かれたので、うなずき、迷わずスカートを脱ぎました。男の人がいる前で脱げないという感情は一切なく、椅子などに座って証拠になるかもしれないものが取れてしまう前に早く証拠をとってほしいという思いでした。
スカートには当然、私のDNA情報も含まれるので、唾液を採取されました。
採取したのち、調べることに同意する旨の書類を読まされ、実印がなかったので指紋を捺しました。
採取が終わり、鑑識さんが部屋から出ていくと、男性警官が入ってきました。そして、
「男が自首しました。今、この署内にいます。」
と伝えられました。捕まったんだ、と安心する私をよそに男性警官が難しい顔をし始めました。理由を聞いてみると、
「自首した場合、罪が軽くなる可能性があります。」
と教えられました。それは確かに嫌でしたが、捕まらずに逃亡されるよりはいいかと、この時は思っていました。
しばらくして、駅で集まってきた私服警官が全員部屋に入ってきました。実況見分をするとのことでした。
部屋から出て、広い場所に移る途中、廊下に母を見つけました。女性警官から今からすることを説明され、母も同席することになりました。
実況見分は、事件の後、事件を再現し、事件の様子を警察が把握するためにあるのだと思います。
正確な実況見分のため、低身長の男性の私服警官が似合わない花柄のスカートを履き、私のスカートの丈と同じになるようスカートを捲りし、私は通学カバンを私服警官に貸しました。
ショルダーカバンを首からかけていたと言うと警官は迷わず首からかけ…
「重っ、本当にこの体勢?」
と冗談交じりに言ってきました。私の通学カバンは約五キログラム。首からかけるには重かったですが、満員電車では腕にかけたり、肩を通して体の横にカバンを持ってきたりということができなかったので、その体勢であっていました。
そのやり取りが終わると、私役のスカートを履いた男性警官の位置が固定され、あとは私の指示でもう一人の男性の私服警官が動く、という作業が始まりました。
加害者役の警官の位置を私役の警官の真後ろに固定し、そこからいよいよ、本番です。
加害者役の警官の手を言葉で誘導し、私役の警官の臀部にあてました。
掴み具合を聞かれ、臀部にフィットするようにと指示しました。
加害者役の警官の手が私役の警官の臀部にフィットしたところで、事件時の状況が出来上がりました。
これであっていると伝えると、私の横にいた女性警官がデジカメで状況を再現した警官たちをいろんな角度から撮りました。
私はこの時点で、ショックが強すぎて記憶を失いかけていました。
実況見分が終わり、母は廊下へ、私は部屋へ戻り、被害届の内容に間違いがないか確認され、少し書類にサインした後、解放されました。
女性警官と一緒に廊下で待つ母のもとへ行き、終わったことを説明しました。
女性警官に軽く挨拶し、母と家へ帰りました。
母からは、
「突然職場に電話があって呼び出されて、何の要件かと思ったら「鉄道警察です、娘さんが事件に巻き込まれました」って言われて、もう心臓が止まりそうだったよ。そんな経験初めてで、しかも鉄道警察って言われたから、轢かれたかと思ったよ。大変だったね、帰ろうね。」
と言われました。安心しきって、このままこの事件は終わる、そう思っていました。
翌日のことでした。母のスマホに見知らぬ番号から電話があったんです。用心深い母は、知らない番号の電話をとりません。コールが鳴り終わった後、検索をかけていました。
電話の相手は、弁護士事務所でした。
折り返しの電話をしたところ、弁護士さんが出ました。弁護士さんからは、加害者男性に依頼されて、今回の事件について扱うことになったと挨拶されました。加害者男性の現状を聞いてみると、自首したことにより減刑され、自宅謹慎中とのことでした。
電話が終わった後、怒りを感じました。犯罪者が自首したというだけで、留置所にも入れられずに野放しにされているのか、自宅で悠々と謹慎ライフを送っているのか。
そう思うと、悔しくてたまりませんでした。
父に相談し、すぐにこちらも弁護士をつけた方がいいと判断し、弁護士さんを探しました。
ここで驚いたのは、被害者を弁護する弁護士さんの少なさです。
どういう検索の仕方をしても、出てくるのは加害者弁護に長けた人たち。「逮捕されないために72時間以内にご相談ください」「前科付かず、誰にも知られず、こっそり事件を片付けたい方はお電話を」そんな見出しのホームページしか出てきませんでした。
ふざけんな、と思いました。弁護士さんは弱い人を守るために弁護士さんになるのだと思っていましたから。まさか、犯罪者の肩しか持たない弁護士さんが大多数だとは思ってもみませんでした。
もちろん、冤罪事件に強い、とかならわかりますよ。でも、どの弁護士さんも慰謝料を減額させた実績を誇っているような人ばかりでした。
怒りを通り越して呆れを感じましたね。
被害者を何だと思ってるんだ、と。
慰謝料は、被害者の心につけた傷に対する代償です。心に付いた傷は完治することはありません。被害者は一生、傷を背負って生きていくんです。
その慰謝料を減額?と正直言って、反吐が出る思いでした。
加害者弁護に強いことを誇る弁護士はいなくなってしまえばいいとさえ思います。本当にそれが、難しい司法試験を潜り抜け、あなたたちのやりたかったことなんですかと問いたい気分でした。
弁護士さんのプロフィールを集めたサイトを見たところ、私の感覚ですが、痴漢事件を扱う百人の弁護士さんがいるとしたら、被害者弁護を専門とする弁護士さんは二人ほどしかいませんでした。
そこで、ネットで探しても無駄だと思い、法テラスに相談しました。
加害者弁護の弁護士さんから電話があって二日後、法テラス経由で被害者弁護専門の弁護士さんを紹介されました。
若く、まだ経験の少ない女性弁護士さんでした。
紹介されると、他の弁護士に変えてもらうということはできません。
私は、その女性弁護士さんに依頼しました。条件を伝え、その後は、メールでやり取りをすることになります。
翌日、弁護士さんから加害者の弁護士さんと連絡を取ったと報告がありました。
要約すると、加害者の弁護士はかなり痴漢の弁護に強いとのことで、私の弁護士さんのやる気は一気になくなっているように感じました。
負けるだろうけど依頼されたから一応やる、という感じでした。
次の日、弁護士さんから示談交渉を持ちかけられているから受けた方がいいと提案されました。
私は、前科をつけて生きずらくしてやりたい思いの方が強かったので、断りました。
すると、弁護士さんは予想だにしないことを私に教えてきました。
痴漢で前科がつくことはほぼない、慰謝料をいくらとるかの交渉になることが圧倒的に多いと。
痴漢は、正確には刑法とかには引っかかってないんですよね。迷惑防止条例違反というものに当たるだけです。そのためだと思います。
そして、示談交渉を持ちかけられたのに断り続けた場合、相手は弁護士の指示で「贖罪寄付」をする可能性が高い、とのことでした。
贖罪寄付とは「謝罪の気持ちを込めてお金を用意したのですが、被害者が話すら聞いてくれませんでした。罪を償うため、慈善団体に用意したお金を寄付します」というようなものです。
これをされると、いくら被害者が前科をつけたくて示談を断り続けていたとしても、加害者は罪を償ったことになり、前科は付かないことになります。もちろんその場合、被害者にお金は一銭も入ってきません。事件はそこで終了となります。
端的に言えば、この「贖罪寄付」という制度は加害者の救済のための汚物のような制度です。
普通に暮らしていたら、この贖罪寄付という存在は知ることがないと思います。でも、知らないと、もしも被害に遭った時に、一矢報いることもできなくなります。
私に手を出してきた加害者はかなりの富裕層でした。いわゆる、上級国民というやつです。贖罪寄付の存在を知ってからは、私も、確実に加害者は前科をつけないように動くはずだと思うようになりました。
迷いに迷って、示談交渉を受けることにします。
加害者の出してきた額は百万円でした。
高いと思いますか?低いと思いますか?
実はこれ、痴漢被害の慰謝料の相場からしたら、かなり高いんです。
痴漢の慰謝料の相場は十万から五十万円です。五十万まで高くなるケースはほぼないと、ネットで調べているうちに知りました。
それだけ、痴漢は軽視されてるんです。
被害者は一生苦しんで生きていくのに、そんなはした金で償えるんでしょうか。
答えはもちろんNOです。
痴漢被害によりPTSDなどを発症した場合は病院にかかる必要があります。
それだけで、そんなはした金は溶けます。
ですが、私の加害者が出してきた額は百万円。
相場からするとかなり高く、私は恵まれていた方なのかもしれません。
ですが、私が最初に提示した額とは大きく差がありました。
私が出した額は、低く見積もって五百万円。
内訳はちゃんとあります。
事件当時着用していた服の弁償、一週間にPTSDの治療費が二千五百円とし、それを毎週、死ぬまで通院するためのお金、元から電車が苦手で治療してようやく乗れるようになったところの事件で、事件のせいで今後公共交通機関を利用できないと考えた時の移動費。
ざっと見積もって三千万円です。
これは流石に高いと思う方が多いのではないでしょうか。私は低いと思いますけどね。
心をお金で買えるなんて、そんなことあっていいはずがないですから。
本当は私の心は私だけのもので、誰に傷つけられるいわれもない、値段のつけようのないものなんです。
よく言うじゃないですか。友情と愛情はお金では買えないって。
なのに、心が傷ついた分をお金で買われるんですよ。
屈辱しかありませんでした。
相場を調べてからの、五百万の提示でした。値下げ交渉されること前提です。
悔しくてたまらなかった。
なのに、私の弁護士さんは百万円で満足しちゃったんです。五百万の交渉をする気は彼女にはありませんでした。
それがわかっていながらも、弁護士さんがいないと不利になると思い、契約が切れませんでした。
数日後のメールで、彼女が私が飲まない予定だった条件を勝手に、独断で飲むまでは、契約を切る気などなかったんです。
条件はお金と同等の価値を持ちます。例えば、朝八時から九時までの電車に乗らない、などです。この時飲まれた条件は別のものでしたが。
信用は一気にゼロになり、なぜ怒っているのか、どこがいけなかったのかを伝え、すっぱりと契約を切りました。
この時点で、贖罪寄付の期限まで三日ほどしか残されていない状態となりました。
刑事事件には、それぞれの段階で期限が決められており、この場合の期限は、次の段階、つまり検察に管轄が移り、前科がつくかつかないかという判断に移るまでのことです。
痴漢がかなり軽い犯罪だとみられているのはわかっていましたし、前科がつくかつかないか、というのも、身分証明書を詳しく見ればわかる程度の前科がつくのか、罰金数十万円の二択です。
上級国民である加害者は、可能性が低いとしても前科の付く可能性がある段階までは待たないだろうと考えていました。
三日でやり取りをしました。慰謝料は半分以下の二百万まで下げました。
ですが、これ以上譲歩するつもりはありませんでした。
高すぎるとごねる加害者相手に、譲る気はない、仮に贖罪寄付をしたとしても民事裁判を起こして地の果てまで追い詰める、そんな態度をとり続けました。
期限の少し前になって、私が折れないこと、贖罪寄付で逃げても民事裁判で面倒なことになると悟った加害者が折れました。
示談交渉成立です。
成立してからはあっさりとしたものでした。
加害者の弁護士さんのもとへ行き、慰謝料を受け取るだけ。
これは記憶なのか夢なのか、本当にわからないのですが、加害者の弁護士さんには
「犯罪者を守るだなんてどうかしてる、何を目指して弁護士という正義の、立派な職に就かれたんですか。」
そう言った気がします。
二百万とともに、加害者からの謝罪の直筆の手紙を渡されました。
もちろん、お断りして諭吉さんだけ頂きました。
私のこの経験から言えるのは、証拠が大事だということ。
私が証拠を完璧なまでに集めていなければ、きっと結果は違うものになったと思います。
守銭奴と罵っていただいても結構です。
ただ、私は、「証拠が大事」「贖罪寄付」「被害者弁護に強い弁護士はなかなかいない」ということを伝えたかったんです。
もし。これを読んでいるあなたが不幸なことに事件に巻き込まれてしまった時、そんな単語があったなと思い出していただければ幸いです。
ちなみに二百万円ですが、PTSDにより本当に電車に乗れなくなったため、学校近くのマンションを借りる代金にあてました。
一年で溶けましたね。
元から大事にするつもりのない汚らしい金だったので。
間違ってもそのお金で美味しいものを食べるという発想にはなりませんでした。
汚い金で私の血肉が作られると思うとぞっとするので。
無駄遣いしたかったんです。
加害者が汗水たらして稼いだお金を、残酷なくらい無駄に使ってやりたかった。
一年で溶かした理由はそれに尽きます。
被害経験を書くのは決して楽なことではありません。
フラッシュバックを伴い、非常に苦痛な作業です。
私は、慰謝料の額で批判されるためにこれを書いたんじゃありません。
ただ、普通に暮らしていると知らない単語、知識があるので、それを伝えたかったんです。
単語だけを伝えてもピンとこないと思ったので経験談として書きました。
これを読んだ方がもし被害に遭われたときにお役に立てれば幸いです。