例え話。
「僕は人の手が加わっていない濁った宝石みたいなものさ。」
謙虚なのか傲慢なのか分からないクサい例えが飛んでくる。
「あ〜分かるかも。」
「でしょ〜!」
適当に話を合わせる。
「だから早く僕を磨いてくれるジュエリー職人を探さなきゃ。」
「あぁ〜そうだねぇ〜」
例え話しか会話デッキが無いのかこいつ。
アマチュアの小説家みたいな例えしかしないし。
「まぁその職人が僕の目の前にいる君なんだけどね★」
「あはは、何それ笑」
興味本位でナンパに着いて行くんじゃなかった。
私の目は君の言う原石よりも濁っている事に気づいて欲しいものだ。
「僕たちなんだか似ているね★」
「えぇ〜!私も思ってたぁ〜」
安い、安すぎる言葉だな。どれだけその台詞を見てきたか...やっぱり今回もハズレか...
私はそっと目を閉じて"それ"から離脱した。
ーーーーー........
カチャッ
目の前にコーヒーが置かれる。
「どうだった?意外と面白いでしょ。」
「あぁ"〜面白いけど在り来りすぎるよ...マスター」
苦い顔をする私をマスターが宥める。
「たまにはこういうのも良いじゃないか、めがこえ過ぎると面白くないでしょう?」
そう苦笑いを披露する。
「マスターが無理に勧めるからどんな"本"かと思えばこれ。そんなこと言ったってガッカリするよ...」
「いやぁ、君にピッタリな本だとおもったんだけどなぁ」
何がピッタリだ。私はこんなクサい事をしたりしない。
「例え別世界の私に読ませてもビクともしないよ」
「あははっ」
マスターが笑う。
「なに?」
ツンケンしながら私が言う。
「それだよそれ、例え話が凄い出てくるから君みたいと思ってその本を勧めたんだ。」
「ぇ"」
同族嫌悪とはこの事だね。と言わんばかりの顔、
「こんゃろめッッ」
珍しく素直な言葉が出た。