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ミッシング ピース 3
すれ違う偶然が重なるごとに、私たちは微笑み、軽く会釈をしてくれるようになった。それだけで毎回通り過ぎる。なかなか声をかけられない弱気な自分に呆れてしまう。でも声をかけてしまったら、この幸せな数秒のすれ違いが崩れてしまう気がして。
「ただすれ違う度に彼女が微笑でくれて、あの穏やかな空気の流れを数秒感じられるならそれだけでもいいかな・・・」と、どことなく完結した想いに近いものにもなっていた。
でも彼女と言葉を交わしてみたい。彼女のまとう穏やかな空気と一緒にもっと彼女と時間を共にしたい。
その願いと想いの波動が調和したのだろうか、いつもは屋内でただすれ違うだけだったのに、その日は初めて屋外で彼女を見つけた。
いつもはすれ違うだけだけど、私は足を止めてしまった。 彼女も私に気付き、足を止めて微笑んだ。
私たちは初めて言葉を交わした。
それからは自然に共有する時間が増えていった。