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任天堂ゲーム機しくじり史【Wii U編】

突然ですが皆様には好きなゲーム機はありますか?これまで各社メーカーから多種多様なゲーム機が発売されてきましたが、私があえて1つ選ぶとすれば任天堂の「Wii U」を選びたいと思います。Wii Uは任天堂初のHD画質対応や液晶ディスプレイを搭載したコントローラーなどで評判を集め、累計1億台以上を売り上げた伝説のゲーム機「Wii」に続く、まさに新しい時代のゲーム機を標榜して開発されました。しかしWii Uはトータルで見れば期待された成功を収めることができず、結果的に任天堂史上最悪の失敗作と言われるほどの数字を叩き出しました。今回はそんなWii Uが歩んできた歴史について書いていきます。

Wii Uとは

Amazon商品ページより

発売日:2012年12月8日
販売台数 日本:334万台 世界:1356万台

Wii Uは任天堂の据え置き型ゲーム機として6代目にあたり、2006年に発売されライト層やゲーム初心者に受け入れられたことで爆発的にヒットし、累計1億台を売り上げた前世代機「Wii」の流れを汲む機械です。Wiiの名を冠していますが、一般に「Wiiシリーズ」などと呼ばれることはなく、Wiiとは完全に別のゲーム機として扱われています。ブランドイメージカラーはターコイズブルーで、Switchのレッドとは対照の色となっています。
Wii U最大の特徴は、GamePadと呼ばれる液晶ディスプレイを搭載したコントローラーです。中央にある6.2インチのディスプレイにはタッチパネルの機能があるほか、操作ボタン、カメラ、NFC、モーションセンサーが搭載されており、GamePad1台でゲームに必要な操作をほぼ全て行うことが出来ます。Wii Uが発売された当時、私は小学生でしたが、このGamePadのスタイリッシュさと先進性に憧れて親に何度もねだった記憶があります。しかし家にはWiiが現役で稼働していたため結局買ってもらうことは出来ませんでした。

ファミ通より

Wii U開発の背景

そもそもWii Uはなぜ開発されたのでしょうか。それは前世代機であるWiiが抱えていた課題が
Wii Uになることで解消できるからでした。Wiiは先述したようにライト層やゲーム初心者、ファミリー層をターゲットとして発売されました。そのためWiiを持つ家庭の多くはWiiを家族が集まるリビングに固定していたため、1人でじっくりやり込むゲームが売れにくい市場環境がありました。
Wii Uの場合、Wii時代と同じように家族や友達で集まってプレイすることができるほか、1人でやりたいゲームはGamePadを使用して没入することが出来ます。その証拠にWii UのソフトラインナップはWiiと比べて1人用のRPGやFPS系が多くなっています。

任天堂公式ホームページより

次にグラフィックの問題です。Wiiが発売された当時の2006年はまだアナログテレビが主流だった時代でした。競合のPS3やXbox360は将来的なデジタル化移行を見据えてHD画質に対応して開発された一方、Wiiは画質より新たなゲーム体験でユーザーにアプローチしました。画質にこだわらない分販売価格を抑えることができ、Wiiは同世代機の中ではトップシェアを獲得します。
しかし時が経つにつれてスマートフォンの普及やアナログ放送終了などで本格的にデジタル時代が到来すると、画質で劣るWiiは徐々にソフトメーカーからの支持を得られなくなってしまい、晩年には新発売されるソフトが非常に少なくなっていました。
こうしたゲームの高画質化に対応するため、
Wii Uは完全HD画質対応へと踏み切ることになります。

売れないWii U

ITmediaより

2012年12月8日、ついにWii Uが発売されます。同時発売はNewスーパーマリオブラザーズUやニンテンドーランドをはじめとした10タイトルが発表されました。初週には30万台を販売し、その後もクリスマス商戦と重なったことで販売台数はグングン伸びていき、早々に60万台を突破するなど好調な出だしを切りました。しかし2013年に入ると販売台数は鈍化しはじめます。最大の原因はソフト不足に陥ったことでした。ソフトを提供するサードパーティーだけでなく任天堂自身も「ゲーム&ワリオ」「ピクミン3」「Wii fit U」など、Wii Uの目玉として広報されていたタイトルが次々と発売延期となったのです。これはWii UがGamePadを使用した今までにないゲーム機のため、開発が難航したこと、そして任天堂がHD画質対応ゲームの開発工数を見誤っていたことが原因と言われています。従来のゲームより高い完成度のHD画質対応ゲームを作るためには開発工数も倍近くかかってしまいますが、HD画質を初めて扱う任天堂はその部分を見誤ってしまい、これが結果としてソフト不足を招いてしまいます。

任天堂公式ホームページより

そしてこの時代には市場環境もWii Uにとって逆風となりました。2010年代に入ると日本でも急速にスマートフォンが普及するようになりました。DeNAが運営するモバゲーや後にスマホゲームの代名詞となるパズドラ、モンストなども台頭し、人々の関心は手軽に遊べるスマホゲームに向かい始めます。任天堂内においても、同時期に発売され当初は不調だった携帯機のニンテンドー3DSが、強力なソフトラインナップによって販売台数を伸ばしていくなど、手軽に遊べるゲームの需要に応えられないWii Uの存在感はさらに薄くなってしまいます。

Wiiとの関係性

Wii Uにとっての最大の障壁はある意味で前世代機のWiiだったのかもしれません。冒頭でも書いた通りWiiとWii Uは全く別物のゲーム機です。しかしながら名前にWiiを冠していることや、Wiiとの互換性がありWii Uの機械でWiiのソフトを遊べたことなど、Wii UがWiiとの差別化を上手く図れておらず、前世代機と比較してどんな強みがあって、買うメリットがあるのかが上手くユーザーに伝わらなかったのです。その結果多くのユーザーはWiiで満足してしまい、新たにWii Uを買うという流れを作れなかったと言えます。

新作ソフトを続々投入

Amazon商品ページより

2014年に入ってもWii Uの記録的な販売不振は変わらず、任天堂は年度販売目標を900万台から280万台に大幅に下方修正します。そんな2014年、任天堂がWii U向けキラータイトルを投入し始めます。5月にはスーパーファミコン時代から続く名物タイトルの新作、マリオカート8を発売。今作では従来の陸海空に加え反重力モードが新たに加わり、壁や天井を走るコースが存在することが話題となりました。さらに12月には大乱闘スマッシュブラザーズforWii Uが発売されます。ほぼ同時期に発売され、ゲームシステムが共通の3DS版との通信対戦が可能で、私の世代の同級生は当時みんなスマブラに夢中になっていました。
翌2015年、任天堂はWii Uの方向性を見直し、GamePadの存在意義を徹底的に高める戦略に打って出ます。その戦略が見事にハマり、この年Wii Uから後世に続く名作が2本誕生したのです。

任天堂公式ホームページより

1つ目は、皆さんご存知スーパーマリオメーカーです。本作はスーパーマリオ30周年記念として発表されたソフトで、スーパーマリオのコースを自由に作成し、作ったコースはインターネット上に投稿したりダウンロードしたりできるという今までにないマリオの遊び方を提供してくれました。世界中のユーザーのアイデアが詰め込まれ、新しいコースができる度に無限に遊べる本作はシリーズ累計で400万本以上を売り上げる大ヒットとなりました。本作は後にリメイクされ、3DS版やSwitch向けの新作「スーパーマリオメーカー2」も発売されています。
そして2本目は、今や任天堂を代表するタイトルとして国内のWii Uソフトで最多の本数を売り上げ、社会現象を巻き起こしたあの名作、スプラトゥーンです。

任天堂公式ホームページより

本作はチームを組んでインクを塗り合い、自軍の「ナワバリ」の面積を広げていくシューティングゲームで、バトル中にイカになって攻撃をかいくぐることもできます。シューティングゲームでありながら誰も傷つけることがなく、かつ分かりやすいため子供から大人まで楽しめる名作として現在まで愛されており、Switchでは続編のスプラトゥーン2、スプラトゥーン3まで発売されています。
マリオメーカーとスプラトゥーンの2大タイトルによってWii U全体の売上を牽引し、これらが発売された翌年の2016年には販売台数が大幅なV字回復を見せました。

Switchへの世代交代

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2015年の大型タイトル発表で波に乗るかと思われたWii Uですが、その後も輝く時を迎えることができずに2016年末をもって製造が終了。最終的な販売台数は日本でわずか334万台、世界累計でも1356万台と、前回のゲームキューブを下回る結果でWii Uの時代は幕を閉じました。そして2017年3月3日、任天堂から次世代ゲーム機が発売され、ついにSwitchの時代がやってきます。Switchはテレビに繋げて遊ぶ据え置き機としてだけでなく、外に持ち運ぶ携帯機としても遊ぶことができ、Wii Uと3DSのいいとこ取りのようなゲーム機です。初期発売ソフトは、かつてソフト不足を引き起こしたWii U時代の反省を踏まえて、その多くがWii U作品のリメイク版で占められていました。これはソフト不足解消と同時に、Wii Uには名作が多かったということの証明ではないでしょうか。

まとめ

Amazon商品ページより

世界で1億台を売り上げたWiiの後継機として大きな期待を受けたWii Uでしたが、その独自性ゆえのソフト不足や、皮肉にもWiiの存在によって販売台数を伸ばすことができず、最後まで苦戦し続けた不遇のハードでした。商業的には大失敗と言われても仕方の無い結果ですが、ソフトのリメイクがSwitchで数多く発売されていたり、今日のSwitchの大成功を見ると、Wii Uはたしかに任天堂にとってプラスになった存在と言えるでしょう。そんなWii Uは2024年4月をもってオンラインのサービスが終了してしまいましたが、その分お手頃な価格で手に入りやすくなっています。個人的にWii Uは大好きなゲーム機なので、今からでも皆さんにWii Uの魅力を知ってもらえたら幸いです。それでは今回はここまで、最後まで読んでいただきありがとうございました。

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