美保関
美保関に泊まりにきている。
インターネットで宿を探して、歴史のありそうな旅館を宿に選んだ。
建物は清潔にされていて、旅館のスタッフも親切丁寧。とてもいい宿だ。
俺は今、その旅館の四階にいる。部屋の広縁に1人座って港を眺めている。4月とはいえ、まだ夜は冷えるから、浴衣に半纏、それに加え、余った布団を膝にかけている。
一緒にきた子どもたちは同じ部屋で寝ている。栃木からはるばる旅行してきて、しかも今日は二日目。へとへとだろう。それでも寝る時間のギリギリまでオセロをしていた。体力がなくなる限界まで遊ぶ子どもの根性に、感服する。
部屋からの眺めはとても良い。美保関漁港を一望できるじゃなくて対岸の鳥取県の光も見ることができる。
漁港は思ったより暗くない。酔っ払いが意図せず海に身投げしないよう、街灯が港を明るく照らしている。その光が水面に映って、こちらに伸びてくる。
不幸な酔っ払いのために漁港は照らされているけど、誰も歩いていない。本当に静かだ。
部屋の窓を開けると、潮の香り、遠くの堤防に打ち付ける波の音、船を停留しているロープが軋む音が入ってくる。そのほかには何もない。
少し離れたところに綺麗な浜辺があるらしい。隠岐にも行ってみたいし、また来たい。この宿に長く泊まりたいと思う。