推し
昨夜、某ボーイズグループのライブに行ってきた。ライブに行くなんてもう5年ぶりくらいの事で、チケットが当たったのは今年の5月頃だったので本当に待ち遠しかった。前の職場の先輩と推しが同じこともあり一緒に行く約束をしていた。この先輩は前に雨の中一緒にランチしてきた話に出てきた先輩と同一人物で、親ほど歳が離れているけれど友達であり第二の母のような存在。私は自分の母親が亡くなるよりもこの人が亡くなることの方がショックを受けるかもしれない。そんな先輩ともずっと飲みに行こうねなんて約束はしていたもののお互い仕事もプライベートも忙しくなかなか予定が合わせられずに久しぶりの再会はライブ当日となってしまった。
最寄駅で合流した私たちは早々に電車に乗ると突然先輩から「実は三週間ほど入院していたんだよね」というとんでもないカイングアウトをされる。驚いた私は一瞬言葉を失いながらも何とか声を絞り出して何があったのかと聞いた。10月末頃に一週間ほど頭痛が続いていて、頭痛薬を飲んでも全く痛みが引かず心配になった先輩は病院を受診したそうだ。そこで色々な検査を受けたところ首の後ろから後頭部あたりにある血管が簡単に言えば怪我をしていたそうで、もしその血管が破裂など大量出血していた場合は半身不随や最悪の場合死に至っていたという。傷が治るまでは絶対安静にする他に治療方法はなく、病院を受診したその日にすぐ入院したそうだ。それを聞いた私はライブなんて行って大丈夫なのかと思ったがちゃんと退院後二週間は経過していて医師にも相談したところ許可が下りたそうなので一安心ではあったが、病み上がりに等しいのでなるべく電車移動も乗り換えが少なくなるように移動した。
会場に着くまでは今日は朝からずっとアルバムを聴いてテンション上げてきたとか、座席はどうなんだろうとか推しについて語り合っているうちに気づけば会場近くの駅に到着していた。会場近くまで来ると同じライブに向かう同士の姿も増えてきてグッズやパーカー、Tシャツを身に纏っている人も多く特に服装に拘ってこなかった私達も何か着てくれば良かったかなと少し後悔をした。
ライブ時間が夕飯時なこともありコンビニで軽食をすませ、会場に向かう。流石に会場を目の前にすると胸のときめきも隠しきれなくなってきていた。念願の推しに会える…!!
電子チケットで入場し、私たちは3階バルコニーだったので3階に向かう。3階といってもステージ自体が建物の2階に位置するのでステージまでもそこまで離れていないし、実際に席に着いてみるとめちゃくちゃ近い!ステージから見て一番左の手前なので肉眼でもしっかり表情が見える神席ともいえる席だった。今回S席とA席に振り分けられていたのにも関わらずA席でここまで近いのならば本当に当たり席だった。ギリギリに入場したこともありすぐにオープニングが始まる。映像でそれぞれメンバーの紹介が始まり、終わった途端に全ての照明が落ちて会場全体が真っ暗な暗闇に包まれる。少しずつステージが照らされていき薄らとメンバーのシルエットが見えてくる。ハァァ…やばい、ヤバイ……!!息を飲んだ瞬間大音量の曲と共にメンバーがステージに飛び出してくる。ちゃんと推しが!生きてる!今同じ空間で息をしている!!もうそれだけで感極まって開始早々に泣きそうになってしまった。そこからは本当にあっという間の2時間で、私の文才ではとてもじゃないが表現しきれないほどに最高のライブだった。いつものSNSの画面越しではなく生で見るメンバーの動き、表情、声、ダンス、もう全てが完璧だった。所々に組み込まれるアドリブや、他のメンバーが歌ってる時に後ろで踊りながらも楽しそうに顔を合わせて笑い合ってるメンバーとか、MCの時の仲の良さだったりがライブでしか味わえないリアルな等身大の姿だった。今日このステージに立つまでのメンバーの努力はもちろんのこと、このライブを立ち上げるのに本当に沢山の人が裏で頑張っているんだろうなと思うと胸が熱くなった。そして何より横で泣いている先輩を見たら私も先輩をここに連れてきてあげられて本当に良かったなと思うし、生きててよかったなと心から思った。
ライブの終盤、とあるメンバーが代表して「僕たちはファンのみんなに感謝ばかり言っているけれど、本当のことで、ファンのみんながいてくれるからこそ僕たちがいて、僕たちもそんなあなたのために頑張れている。この世に必要のない人など一人もいなくて僕たち一人ひとりを愛してくれているようにあなた自身もあなたを愛してあげてください。」と言った。正直ありきたりで何度も聞いたことのある台詞ではあったと思う。でもそれを声に乗せて改めて言われると身に染みるものがあった。頭じゃわかっているのに投げやりに生きてしまう自分には刺さるものがあったし、まだもう少しだけ頑張ってみようかなと考えるきっかけをもらえた。
そうしてライブが終わり夢のような時間はあっという間に過ぎてしまった。外に出て冷め切った空気を吸ってもまだどこか熱は冷めないまま、正直帰りたくないとさえ思ってしまった。満員電車に乗ると一気に現実に引き戻されてしまったが本当に良かったね、と先輩と笑い合いながら帰ることができただけマシだったかもしれない。正直一晩経った今もまだどこか身体がフワフワしている気がする。
またいつか、どこかで、会えたらいいな。
感動をありがとう。
そしてまた先輩と行きたい、ので長生きしてほしい。