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(sic)boy, Khalid, Tierra Whack, TOCCHI, EVISBEATS & Nagipan… | 新譜ピックアップ (2021.12)
こんにちは、リホです。
2021年12月にリリースされたアルバムや楽曲から、おすすめ作品をピックアップしてご紹介します。
月次で記事を書いているので、過去分も読んでいただけると嬉しいです。前月分はこちら。
(sic)boy - vanitas
2021年のベストアルバムの記事でも取り上げましたが、(sic)boyのニューアルバム『vanitas』です。
"vanitas"とは、空虚を意味する言葉ですが、死や虚しさを連想させる物を描く静物画の様式の一つでもあります。まさにアートワークのような絵ですね。< Life is vanitas / Let's make it fabulous >と始まる、1曲目「vanitas」がその世界の導入的な役割を果たしています。
釈迦坊主を迎え、ハードコアのサウンドに驚く「落雷」、ハイパーポップ的な「Misty!!」、<渋谷で酒飲みたい>と歌う「Last Dance」(fnmnlのインタビューによると、コロナ禍を憂いたものではなく、LA滞在中の思いを書いたものとのこと)など、単にHIPHOPとロックの融合、という表現だけでは野暮なほど、複数の要素を感じさせます。
12月に行われたリリースライブでは、ルックスも、音楽ルーツ的にも様々な若者たちが集まっていたこと、そして、Gottzや上述の釈迦坊主、意外だったのがAAAMYYYと、(sic)boyでなければ揃わなかったであろう、アーティスト達がステージに並ぶ姿にも驚きました。
Khalid - Scenic Drive
アメリカのR&Bアーティスト、Khalidがリリースしたアルバム『Scenic Drive』。
流れるように繋がっていく楽曲たちはタイトル/アートワークのような深夜のドライブにぴったりの雰囲気でした。(一方で、ドライブがコンセプトならもう少しボリュームがあっても良いのでは、と思ってしまったのも事実…)
9曲中7曲にゲストを迎えている今作は、Alicia Keysのイントロから始まり、その参加アーティスト達も豪華で、美しく、どこか哀愁味のあるKhalidの世界に華を添えます。JIDが参加した「All I Feel Is Rain」、6LACKとLucky Dayeが参加の「Retrograde」が特に好みでした。
Tierra Whack - Rap? / Pop? / R&B?
ストリーミング時代の音楽の特徴として、より短く、コンパクトな内容が好まれる傾向にありますが、アメリカ、フィラデルフィア出身のラッパー、Tierra Whackが立て続けにリリースした3枚のEPに関しては、なかなか面白い取り組みだなと思いました。
『Rap?』『Pop?』『R&B?』と名付けられた3枚のEPには、各3曲ずつ楽曲が収録されており、内1曲ずつMVも公開されました。さらに、この3枚のEPののアートワークを並べると1枚の絵として繋がるのです。
収録された楽曲は、タイトル通りのジャンルに傾倒したサウンドに仕上がっていました。そしてその全てをモノにしているのは明らかで、"Rap? / Pop? / R&B?"の後には、"Do you want it ?"とでも言われているような気がしました。彼女のような存在の前では、逆に分けることでより"ジャンル"という観点が意味を成さないようにも感じました。
TOCCHI - CYCLE
北海道出身、沖縄を拠点に活動するラッパー/シンガーのTOCCHIがリリースしたEP『CYCLE』。およそ2年ぶりとなる今作は、新曲と過去に制作した楽曲を集めた作品とのこと。
沖縄のアーティスト達の参加も注目で、MuKuRoを迎えた「Remember」やCHICO CARLITOを迎えた「case1」は、特にTOCCHIの歌うメロディとラップの掛け合いが気持ちの良い楽曲でした。
7曲収録のEPですが、TOCCHIの魅力でもあるチルでムーディーなサウンドが存分に味わえる作品です。
EVISBEATS, Nagipan - PEPE
ビートメイカー/MCのEVISBEATSが、Nagipan(旧 MICHEL☆PUNCH)とともに制作したアルバムをリリース。
EVISBEATSの特徴でもある温かみのあるサウンドが今作も健在。インスト曲が中心となる構成ですが、「S.M.I.L.E. feat Blumio &Lyte」のようなコミカルな曲が入っていたり、盟友、田我流が参加していたり、その世界観を損なわずにスパイスを加えるような客演陣も魅力です。
前作『PEOPLE』もたしか冬のリリースだったと思いますが、EVISBEATSの音楽は寒い時期に沁みます。間違いなく今回も"いい時間"を届けてくれる作品。
その他の注目楽曲 / プレイリスト
その他、12月によく聴いていた曲をまとめています。年間ベストの後にこうして12月の曲を振り返るのも変な感覚がありますが、そういう時期だからこそ、埋もれがちな曲に気づければ、と思います。