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ショートケーキのいちご

暑い。暑すぎる。
電車から降りて家に帰る時間はもう23時だというのに、外の空気は
昼のうちに温められたビルや道路にしっかりと保温されていて、鬱陶しい湿度とともに帰路をいっぱいに満たしている。最悪だ。
あまりの湿度に溺れるんじゃないかと思うほど。息をするのがつらい。

こんな道を歩いていると疲れが2倍、3倍にも膨れ上がって行くような気がして一歩一歩が重たく感じられてくる。脊髄反射でクーリッシュを買う。

最近、以前より小さな我慢をしなくなった。
クーリッシュを片手でぶんぶん振って歩いて、ぬるい風でやわらかくしていたら、仕事をしている中でショートケーキのいちごを最後に食べるタイプって損しがちなんじゃないかと思ったことをふと思い出した。

好きな物事は、やらなければいけないことをすっかり片付けてからやろうとご褒美のように取っておいても、結局その時間がいつの間にかなくなっていて中途半端な出来になったり、自分が満足するところまで行けなかったりする。

それは、ショートケーキのいちごみたいに、食べる前はピカピカして見えて、大切にお皿の横によけておいて、楽しみにしながらケーキの部分だけを先に食べて…いざ、わくわくとした気持ちで最後に食べてみると思っていたより酸っぱくて、やっぱり一緒に食べればよかったなあ、なんて後悔する感じと似ている。

ご褒美は少しずつ、回数を分けての方が結果充実するし幸せに生きられる気がするなとやわらかくなったクーリッシュを飲みながら思う。