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深臀部症候群 deep gluteal syndrome

Deep gluteal syndrome
Hal David Martin,Journal of Hip Preservation Surgery Vol. 2, No. 2, pp. 99–107,2015

深臀部症候群(DGS)というワードは、近年の医療の進歩により最近よく耳にするようになってきています。

DGSは坐骨神経もしくは陰部神経などの末梢神経がDeep gluteal space で絞扼され、殿部骨盤領域に痛みや坐骨神経痛様の症状を訴える疾患に用いられます
※このスペースの詳細は、論文内の画像をご参照ください

みなさん梨状筋症候群とワードはよく聞いたことがあると思います。
梨状筋症候群もDGSに含まれ、約68%が該当する(坐骨神経痛様患者の確定診断239例)とされています。
その他にも、双子ー内閉鎖筋症候群、坐骨大腿インピンジメント、近位ハムストリング症候群、陰部神経絞扼、坐骨トンネル症候群などがあります。

病歴としては、
外傷の既往歴、座位での痛み、腰背部や股関節の根性の疼痛様の症状や罹患した下肢の感覚異常(坐骨神経痛様の症状)があるとされています

臨床で患者さんを評価する際は、痛みを増減する因子や痛みが出現する部位を考慮することで診断に役立ちます。
例えば、

  • 前屈で痛みがある、座位で痛みがある場合は梨状筋の下部での坐骨神経絞扼と関係しているかもしれない。

  • 歩行時に生じる坐骨外側の痛みは坐骨大腿インピンジメントと関係しているかもしれない

など、問題点の仮説を立てながら評価を進めていくことが大事だと思います。

他にもこの論文では鑑別診断として以下の特徴が挙げられています

陰部神経絞扼:座位によって悪化、内側坐骨の圧痛

坐骨大腿インピンジメント:歩行時、股関節伸展最終域での痛み、外側坐骨の圧痛、坐骨大腿インピンジメントテスト陽性

大転子坐骨インピンジメント:大転子後面の圧痛、深屈曲、外転、外旋での痛み

近位ハムストリングス症候群:股関節屈曲と膝関節の伸展で悪化する、外側坐骨の圧痛、active hamstrings test 陽性

ここで梨状筋症候群を鑑別する整形外科テストを紹介しておきます
今まで代表的なテストとしてPace test , Feiberg test , Beatty test , FAIR testなどがありましたが、近年はテストの妥当性が問われており、


この論文では
Seated piriformis test (感度52% 特異度90%)
Active piriformis test( 感度78% 特異度80%)
が有用であるとしています。

Seated piriformis test

  1. 患者は座位で、股関節90° で安定した再現可能なプラットフォームに座る。

  2. 検査者は中指で坐骨の1㎝外側を、そして、示指で坐骨切痕の近位を触診する。

  3. その状態で、検者は膝を伸展して、股関節内転内旋を加えながら他動的に屈曲させる。

  4. 梨状筋または外旋筋のレベルで後部痛が再現すれば陽性

Active piriformis test

  1. 側臥位において、患者はテーブルに踵を押し下げて、抵抗に対して、外旋を伴った自動的な外転を行う。(梨状筋を収縮させる)

  2. 検者は、梨状筋のレベルで触診し、疼痛が再現すれば陽性

これらのテストの面白いところは収縮+触診による圧迫を利用しているところです。単独での感度、特異度のパーセンテージもかなり高いですが、2つを組み合わせることでもっと有用なテストとなりそうです。

以上DGSについて紹介させて頂きました。
医療の進歩に伴い、今まで発見できなかった病態や、それに見合った評価方法など新しい知見がどんどん出てきます。時代の流れにおいて行かれないように、徐々にではありますが、学んでいきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

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