交通事故後の対応で被害者がやってはいけない7つの行動とは?
交通事故の被害に遭った場合、多くの方がやってしまいがちな行動の中でも、思わぬ結果を生んでしまうNG行為がいくつかあります。
そこで、本記事では交通事故後の対応として被害者がやってはいけない行動について解説します。
交通事故の被害に遭ったときに被害者がやってはいけない7つの行動とは?
交通事故の被害に遭ったとき、被害者が行うべき行動については、 こちらの記事(交通事故に遭ったら最初に何をすべき?)でご紹介しました。
今回は、逆に、事故に遭ったときにやってはいけない行動について解説します。
以下の行動は被害者の方の不利益につながる恐れがあるため、絶対に避けましょう。
①事故現場で示談してしまう
②症状があるのに診察に行かなかったり、治っていないのに通院をやめる、通院の間隔をあけすぎる
③ケガを理由に自己都合退職してしまう
④保険会社からの医療費打ち切りに安易に応じてしまう
⑤後遺障害診断書をよく検討せずに病院へ提出し、作成してしまう
⑥労災、健康保険を使用しない
⑦あきらめて示談してしまう
それぞれ、なぜやってはいけないのか?を解説いたします。
1.事故現場で示談してしまう
交通事故の被害者がとりがちな行動の一つがこの交通事故の現場での示談交渉です。
事故の現場では明らかな外傷などもなく、痛みなどの自覚症状がない=大したことがない、と思ってその場で賠償請求をするつもりがないと言ってしまうケースや、加害者から依頼され、早く済ませたいという気持ちが勝ってしまった結果、現場での示談解決に応じてしまうケースなどがあります。
しかし、事故現場での当事者同士での示談交渉は以下の様なデメリットがあるため絶対に避けましょう。
1)補償額に正確な被害が反映されない
事故現場での示談でよく見られるのが、加害者の側から少額の現金を渡されその場で解決してしまうケースです。
しかし、交通事故の直後には被害の全容が分らないことが多いです。事故後は神経が昂ったり筋肉が緊張するために痛みなどを感じることがなかったものが、時間の経過とともに痛み始めたというケースや、外観では車が無傷の様に思われたが、実際にはバンパー等の樹脂部品を外してみたところ、内部の破損がみられた、などというケースはよくあります。
また、提示される金額も法的な根拠がなく、低額なものがほとんどです。『後日〇万円を支払う。』と口約束をしたものの、結局支払わず、連絡も取れなくなってしまうというケースもあります。
2)警察への事故報告がなされない
加害者が事故現場で急いで示談してしまいたい理由として、警察を呼ばれたくないから、というケースもあるようです。
しかし、事故が発生しているにもかかわらず警察への報告を行わないのは道路交通法違反です。
また、警察への報告を行わず、実況見分などがなされないと、事故証明書も発行されません。
事故証明書は交通事故が起きたことを客観的に証明する書類です。万が一、後から被害について賠償請求をしたくなった場合や、ご自身で加入している任意保険等への保険金請求を検討する際、請求に差し障りがでるケースも多いです。
交通事故が発生した時は、必ず警察へ通報を行いましょう。
2.症状があるのに診察に行かない、通院をやめる、通院の間隔をあけすぎる
1)適切な治療費の支払いが受けられなくなる
症状がある場合には、事故後すぐ、できれば当日か翌日には、診察に行かなければなりません。
事故後1週間以上空いてしまったことで、そもそも事故による怪我ではないと判断され、相手方保険会社から、治療費が一切支払ってもらえなくなった、というケースもあります。
また、自己判断で通院をやめてしまったり、通院の間隔をあけすぎたりしてしまうと、保険会社から、治療の必要がなくなったと判断され、早期に治療費の支払いを止められてしまうことがあります。
2)入通院慰謝料等が減額されるリスクがある
交通事故でケガをして入通院が必要となった場合、被害者は加害者に対し入通院慰謝料を請求できます。
入通院慰謝料は、入院や通院をした期間に応じて算定されます。しかし、あまりに通院と通院の間隔を空けてしまうと、入通院慰謝料が減額されてしまう可能性があります。
通院の頻度が低いと、症状がそれほど重くないと判断されるためです。
治療の頻度や通院間隔などは、主治医の指示に従うようにすることが原則です。
損害賠償実務上は、特段の事情がなく30日以上通院しない期間があると、それ以降の対応を打ち切られる事がある、ということも覚えておくと良いでしょう。
もし、通院の間隔が30日を超える可能性があれば、早いタイミングで弁護士へ相談されることをお勧めします。
3.ケガを理由に自己都合退職してしまう
交通事故によるケガのために仕事を休まざるを得ない場合があります。しかし、長期間休んでしまうと、会社によっては、これ以上休むのであれば退職してほしい、と自己都合退職へ誘導されるケースもあります。しかし、自己都合退職には以下の様なリスクがあるため避けるべきです。
・退職後の休業損害を受け取ることが難しくなる
交通事故によるケガで仕事を休んだ場合、被害者は休業損害を請求することができます。
さらに、交通事故によるケガやその療養のための欠勤を理由として、被害者が退職したり解雇されたりしたときは、その後もケガの治療期間については、休業損害が認められることがあります。
しかし、自己都合退職してしまった場合には、形式的に、被害者自身の意思で会社を退職したとみられてしまい、退職による収入減は交通事故との因果関係がない、と判断されてしまい、退職後の収入減についての休業損害を請求することが、難しくなってしまうことがあります。
4.保険会社からの医療費打ち切りに安易に応じてしまう
交通事故によるケガのためしばらく通院していると、保険会社から、医療費支払いの打ち切りを打診がされることがあります。しかし、まだ治療の必要があるにもかかわらずこのような話に安易に応じてしまうことには、以下の様なリスクがあります。
1)適切な入通院慰謝料が支払われなくなるおそれがある
入通院慰謝料は、治療開始日から症状固定日までの期間について、被害者の受けた精神的苦痛に対して支払われるものです。
しかし、保険会社は、自社で決めた医療費支払の打ち切りの日を症状固定日と、それまでの期間のみを入通院期間として、慰謝料を算定し、交渉してくることが多いです。そのため、治療が必要なのに打ち切りに応じてしまうと、適切な入通院慰謝料が支払われなくなるおそれがあります。
2)打ち切り後の休業損害が支払われないおそれがある
休業損害とは、交通事故によるケガが症状固定となるまでの間に、被害者がケガやその療養のために休業し、または十分に稼働できなかったことによる収入の喪失をいいます。したがって、症状固定日の翌日以降に休業したとしても、休業損害とはなりません。
先に述べた通り、保険会社は、医療費支払の打ち切り日を症状固定日と判断することが多いため、打ち切り後の休業損害が支払われなくなるおそれがあります。
このように医療費打ち切りへ安易に応じてしまうと十分な賠償がされなくなってしまう可能性があります。症状が残っているにもかかわらず、医療費打ち切りを打診された際には弁護士へ相談することを強くおすすめします。
5.後遺障害診断書をよく検討せずに作成してしまう
先ほどの医療費打ち切りと関連して、保険会社が早期に治療を終わらせるために、後遺障害診断書の作成を促されることがあります。しかし、安易に後遺障害診断書を作成してしまうのは避けるべきです。
症状固定の判断は医師がするものですが、患者である被害者本人が後遺症診断書作成を依頼してくるのであれば、その意思を尊重し、症状固定の判断を早めてしまうことがあり得ます。そうすると、本来はまだ治療を続けられる状況であったのに、意図せず、早期に症状固定となり、治療が終了してしまうことになりかねません。
また、後遺障害診断書は、後遺障害の認定において、最も重要な資料です。そして、後遺障害診断書には、適切な認定を受けるために、残っている症状ごとに、記載のポイントがいくつもあります。
こうしたポイントは、かならずしも医師が詳しく理解しているわけではないので、こちらからしっかりとお伝えし、適切な記載をしていただくよう、お願いする必要があります。さらには、症状によっては、診断書作成に先立って、追加で精密検査をお願いする必要がある場合などもあるでしょう。 そのため、後遺障害診断書が届いても、保険会社に促されるまま、安易に医師に作成を依頼するのではなく、しっかりと検討、準備をしてから、作成していくことが重要です。
6.労災、健康保険を使用しない
交通事故に遭った場合に健康保険や労災保険が使えないと思い込んでいる被害者の方がいらっしゃいますが、交通事故でも使用できるケースがあります。また、相手方保険会社に支払ってもらうことに比べて、健康保険、労災保険を使う方がメリットになることも多いです。
1)被害者に過失がある場合
事故の相手方が任意保険会社に加入していれば、被害者の医療費などは相手方の保険会社が負担することが多いです。この場合の医療費はいわゆる自由診療となり、保険診療に比べると高額です。
被害者にも過失があるケースでは、最終的には、過失割合に応じてかかった医療費を負担することになります。
健康保険や労災保険を使用して医療費を抑えておけば、被害者の医療費の負担は軽くなります。
被害者に過失がある場合には、積極的に健康保険・労災保険を使用すべきです。
2)加害者が任意保険に加入していない場合
加害者が任意保険に加入していない場合、自賠責保険から補償を受けることになります。
自賠責保険の補償額は、後遺症がない障害の場合は120万円が上限額になりますので、損害の全てを補償するのは困難です。そのため、健康保険や労災保険を活用して医療費の負担を抑えることで、慰謝料や休業損害に支払額を残しておくことが重要となります。
7.あきらめて示談しない
交通事故に遭った後の保険会社とのやりとりやさまざまな手続きの煩わしさから、保険会社との交渉を早く終わらせてしまいたいと思われる方は多いです。
しかし、拙速に示談してしまうと、本来得られるはずであった示談金よりも少額の示談金となってしまう危険があります。示談交渉を弁護士に任せれば、このような危険を防ぐことができます。示談する前に一度は弁護士へ相談することを強くおすすめします。
示談金には慰謝料や休業損害など様々な損害が含まれ、これらの損害の算定基準には、自賠責基準、任意保険、弁護士基準の3つがあり、弁護士基準に比べてその他の2つの基準は金額が低くなることがほとんどです。
いかがでしたでしょうか?
交通事故の被害に遭った場合に、安易に行動してしまうと、その後の示談交渉や示談金の額などで大きな不利益を受けてしまうおそれがあります。迷ったらすぐに弁護士へ相談しましょう。
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