代わりに読んでくれて、ありがとうございます。
「虎に翼」には登場人物がさりげなく本を読む姿がよく出てくる。
書名がはっきりと映し出されることはないけれど、
貴族のお付きの玉ちゃんは、「アンクル・トムの小屋」
後に教師となる寅子の弟・直明は、アドラー「問題児の心理」
書記官の高瀬は、ツルゲーネフなんかを読んでいる。
その人がその本を選ぶ理由は必ずあるはずで、しかもどのタイミングでその本と接しているかで、その人が抱えている問題や意識を想像することができる。
書名映さないからなんだっていいや、じゃ全然なく、その本である意味や理由がきちんと考えられていて、毎回スタッフの矜持の深さと厚みに恐れ入ってしまう。
だからこのドラマは、ほんの些細な片隅のワンカットにも目が離せない。
ここ10年の間に出版された本150冊のエッセンスを詰め込んだ、斎藤美奈子「あなたの代わりに読みました」
たった10年だけど、ここに紹介されている、政治やらコロナやら働き方やら差別やらジェンダーやらの本を通して10年を俯瞰すると、今とそして将来に渡る、日本の課題が見えてくる。
すべての本を読むことはできないけれど、たしかに、誰かが代わりに読んでくれて、それを教えてくれることで見えてくるものがあるんだな、と思う。
だからひととき、スマホを捨てて本を読もう。たとえ目がしょぼしょぼして辛くても。