見出し画像

Extraー小編映画『Kay』/『終点は海』のお話

 毎曜日、テーマを決めて、このnoteにあれこれ書き綴っていますが、今回はextraで、私がエグゼクティブ・プロデューサー/配給者である小編映画『Kay』/『終点は海』(監督:鯨岡弘識)について、少し書き綴らせていたたます。
 両作合わせて約46分で、本年4月から5週間、東京・下北沢トリウッドで、そして7月に2週間、名古屋シネマテークにて、劇場公開となりました。
 小編映画『Kay』は父と娘、『終点は海』は母と息子、それぞれの生き方が交差する物語で、ある種の鏡像関係となる作品として、鯨岡弘識監督の映像筆致により描かれています。説明言葉や多弁な台詞で物語が進行するのではなく、もの静かにけれど強靭な魂を描いた作品になりました。
 小編映画『Kay』の原作は、拙書「春は菜の花」(春は菜の花 2022年版 https://amzn.asia/d/0WxiPa8)で、私と鯨岡監督の共同脚本で、2019年夏に撮影されました。因みに、ニューヨーク・シネマトグラフィー・アワードで、最優秀脚本賞を受賞しています。
 2019年年末に最終編集を行い、2020年春に劇場公開したいと考えていましたが、世界パンデミックの波が押しよせ、2022年春までの約2年間、岩穴に眠る山椒魚のように息を潜めねばなりませんでした。
 両作とも、人が生きること、ある種の死生観を描いた作品です。小編映画『Kay』 の脚本を書いていた2019年春ごろには、世界パンデミックや東欧での戦争などはありませんでしたが、ぼんやりとした、生きる不安感のようなものは、世の中に既にあったように思います。
 約2年、劇場公開をじっと我慢するなかで、世界パンデミックや東欧での戦争などの暗雲が地球を覆ってきたとき、生きる不安感は、ぼんやりとではなく、目の前にあるものとして現れました。
 「映画は時代とともに息をするものだ」というのが私の考えで、暗雲覆うこの時代相に、両作がどのように観客の皆さんに受け止められるのだろうかと考え続けていました。もちろん、このままお蔵入りという不安もありましたが、2019年春に脚本を書いていたころ、内藤プロデューサーや鯨岡監督と、世界の人々が観客として楽しんでもらい、著作権期間持つような作品作りをしようと話をしていたので、不安感はそれほど募ることがありませんでした。
 そして、2022年、上述したとおり、東京・下北沢トリウッドで、そして7月に2週間、名古屋シネマテークで、劇場公開となりました。
 数多くの観客の皆さんにご来館頂き、そして様々な感想を聴かせて頂き、本当にありがたく、未だに御礼の言葉をお返しできていないのが、申し訳ありません。長年、映画や演劇等に関わってきていますが、改めて、観客の皆さんを脚本開発段階から考えることは、とても大切なことだと考えました。映画は観客ありきなのです。
 さて、長々とこれまでの経緯を掻い摘んで綴らせて頂きましたが、この秋には関西圏での劇場公開が待っています。慌てることなく、一歩一歩、歩んで行ければと、願っています。これからも、応援よろしくお願いします。中嶋雷太
 
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?