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ビーチ・カントリー・マン・ダイアリー(29)「そして、虫たち…」

 8月のお盆が明けるや否や猛暑や豪雨や地震や台風やで、荒ぶる天候を過ごす日々が続きました。湘南・片瀬海岸・鵠沼海岸も海開き最後の日となった9月2日は雨模様で、寂しげな夕方を迎えました。やはり、季節はゆっくりと変化を遂げながら移りいって欲しいものですが、地球温暖化が原因なのか、季節は激しい変貌を遂げながらあっと言う間に過ぎ去ります。
 この激しい天候で、蝉や蚊の姿もかき消えてしまい、台風10号が熱帯低気圧に変わった日には、その姿はありませんでした。彼らはどこに行ったやら…。林の上空にはポカーンと空があるだけでした。
 それでも、虫たちはたくましくて、夜になるとコオロギなどの地虫たちがコロコロと優しい音色を奏で、朝になるとミンミンゼミやツクツクボウシたちが一斉に鳴き始めました。まるで、混成合唱団のような蝉たちの朝からの高らかな鳴き声に、ふむふむと苦笑いする私でした。そして、蚊。この猛暑と豪雨と台風が続いた日々、どうやって生き延び、どうやってボウフラから羽化するのか…。都市部では地下鉄などの地下に生息しているので、これからの残暑で一斉にブーンブーンと羽音を奏で飛び回るのかもしれません。
 こうして考えると、虫は偉いものですね。人間たちが猛暑だ豪雨だ地震だ台風だと騒ぎたてているうちに、ミミズたちは大地の下でニョロニョロと生気を養い、来る季節に向け蠢いているのだと思います。
 騒ぎ不安になることと、自然の営みを淡々と知りどうやって生きるのかと考えることとは、まったく別物ですが、人間とは騒ぎたてるのが大好きなようで、虫を見習ってはどうかと考えてしまいます。そして、私は、台風一過の晴天の湘南の海を眺めながら、心落ち着かせつつ、「あ、良い波だなぁ」と笑顔でいます。まるで、海辺で生活する虫のように。中嶋雷太

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