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本に愛される人になりたい(63) ドゥーガル・ディクソン/ジョン・アダムス共著「フュチャー・イズ・ワイルド」

 ここ数十年の気候変動による災害報道等で「地球の危機」という言葉を語られるようになりましたが、原因が百年ほどの人間の近代化による二酸化炭素等だとしても、地球46億年の歴史からみれば、「人類という生物の危機」と呼ぶ方が良さそうです。
 例えば、地球の表面にあるプレートの移動による大陸の合体と分裂だけでも、これまで少なくとも五回はあり、一番近い超大陸は二億年前ほど前のパンゲア超大陸で、そこから現在の大陸へと分裂が始まりました。本書では今から二億年後には再び大陸が合体し第二パンゲア超大陸が作られると想定しています。それが何年後の未来なのかははっきり分かりませんが、現在の大陸が合体し始め、新たな超大陸が作られるのは確実だと思っています。その合体過程では、想像を絶する火山活動や地震や気候変動などがあるはずです。さらにそれより近い未来の500万年後は氷河期なので、現在の地球の気候は存在しません。
 では、地球の歴史上、生物、そして人間はどれだけの期間生存しているかというと、まず生物の発生は35億年前。あの恐竜がその期間中生存していたのは約1億7000万年間です。さらに人間となるとわずか500万年前に誕生したばかりです。テレビなどで恐竜は「結局絶滅した種だ」と語られると、なんだが生存期間が短かったような印象がありますが、人類の生存期間は恐竜の生存期間のまだ5%以下です。
 現代社会を覆うなんとなくの感覚として、人間が生物として最高で最終形態だとでも言えそうな人間最優秀主義的な考え方が根強く蔓延していますが、上述のように冷静に考えれば、現代社会、そしてそこに生きる人間は、この地球史で一瞬現れた奇妙な生物なのかもしれません。
 本書では、間もなく氷河期が始まり、500万年後には完全な氷河期となり、一億年後には地球温室化とともに生物の95%が大量絶滅し、二億年後の第二パンゲア超大陸で、新たに生物が多様性を見せ始め、体長20メートルのイカなどが進化を遂げているようです。
 長々と書き綴りましたが、本書を再読するたびに、地球史のこれまでと今後を改めて考えさせてもらいます。そして「わずか500万年の生存期間でしかない人間は、いったい何を威張り、いったい何をやっているのだ?」とも考えてしまいます。前述した人間最優秀主義的な考え方を一度捨て去るべきでしょうね。
 ダーウィンの進化論以降、「進化」という言葉がかなり曲解され、人間最優秀主義的な考え方が蔓延してしまいましたが、ここは冷静になるべき時期のようです。
 2004年に本書が発行されるや、最初は面白そうな本が出たなという軽い気持ちで購入し読んでいましたが、その後、何度も再読するうちに、本書が教えてくれる生物の有り様を深く考えることになりました。(拙書『右手でそっと、銃を置く』ではこの超大陸の話を描いていますので、お時間あればぜひお読みください)
 さて、二億年後の生物のなかに、私たち人間の子孫は顔を出しているのでしょうか。私に似た、亀のような生物が沼地でひっそり息をしているかもしれませんね。中嶋雷太

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