私の美(27)「中華文化の紅(あか)色」
横浜の中華街の門を入ると紅色を基調とした街が広がり、その紅色に囲まれているだけで美味い中華料理を食べるぞモードが膨らみます。昔はその程度で、中華文化の紅色をとらえていました。
香港や台湾などの中華文化圏を度々旅行するうちに、その日常風景にあの紅色がふんだんに現れ街に溶け込んでいるのを目の当たりにし、中華文化の紅色の理解が少しだけ深まったような錯覚を覚えています。
この紅色の文化的な起源を遡ると、古代中国の自然哲学思想、五行思想にあるようです。万物は火、水、木、金、そして土の五つの元素から成り立っているとしています。この火は赤色で夏。最も強く悪霊を退ける色だとしています。
確かに、紅色に囲まれると、気分が高揚するようですし、心が前向きになるようです。
台北の夜市をぶらりぶらりと散歩してると、この紅色に囲まれた喧騒に圧倒されます。日本ではあまり見ない蛇や蛙など多様な食材が通りに溢れ、台湾の言葉があちらこちらで声高に話され、夜は濃く紅色に染まっていきます。大量のシャンプー泡で洗髪し、強烈に痛い脚裏マッサージを終えたあと、外から持ち込んだビールを飲みながら牛肉麺と魯肉飯を食べ、満腹だとお腹をさすり近くのお寺に詣でしていると、気づけば、生きる息吹溢れる日常風景にある紅色が、私の「美」の一つとして心象風景の重箱に深く刻まれていました。中嶋雷太