マイ・ライフ・サイエンス(25)「身近な地球物理学ー陸繋砂洲」
陸繋砂洲(りくけいさす)という言葉があります。イタリア語ではトンボロと呼ばれていて、島と陸が砂洲で繋がっている部分のことを指します。今日(4月10日)の午前11時ごろ、私が住んでいる湘南の片瀬海岸にある江ノ島にもその陸繋砂洲が現れました。通常は、陸側と江ノ島は弁天橋という橋で繋がっており、橋から下を見ると海が見えます。ところが毎年4月ごろからの数カ月、干潮時にこの陸繋砂洲が現れ、その砂洲を歩いて陸側から江ノ島へと徒歩で渡ることができます。今日は午前11時ごろが干潮で潮汐は8センチでした。潮汐とは海水の干満のことです。
この陸繋砂洲現象で一番有名なのは世界遺産になっているフランス北西部のモン・サン・ミシェルだと思いますが、日本各地にも同様の観光スポットが数多くあります。
観光で神秘的だなぁとか、不思議だとか楽しむのもアリですが、気象庁的に言えば…潮の満ち引きとは、「潮汐が起こる主な原因は、月が地球に及ぼす引力と、地球が月と地球の共通の重心の周りを公転することで生じる慣性力を合わせた「起潮力」です。 地球と太陽との間でも、同じ理由でやや小さい起潮力が生じます。」ということで、この干潮時に現れるのが陸繋砂洲なわけですね。
今日、私が歩いた江ノ島の陸繋砂洲も、月の引力や地球と月の「起潮力」などが関係していると考えてみるのは面白いものです。
さらに、この江ノ島の陸繋砂洲が現れたのは、関東大震災で江ノ島が隆起したのが原因だと知られていて、地球の地殻変動によるものでもあります。
話は少し変わりますが、J.S.トレフェルというアメリカの物理学者がおられて、「渚と科学者」という本を出されています。この本は、海岸から話を解きほぐし宇宙の形成などへと話が広がるのがとても面白く、地球物理学から宇宙物理学へと物事を考える楽しさを教えてくれます。今日体験したえのしまの陸繋砂洲から色々と考えるのもまた、J.S.トレフェルさん的なのかもしれません。
大震災で災害を受けた方々が数多くおられ、大変な日々を送られていることにエールを送りたいと考えていますが、一方で、私たち人間という生物は、地球物理学的な荒々しい自然の力のなかで生きてることも理解しておくべきかと考えています。
以前、私が書いた「両手でそっと、銃を置く」というハードボイルド小説では、日本列島の隆起がテーマでした。地球誕生以来、超大陸が形成されては分裂するという繰り返しを何度も経て、地球儀に見られる現在の大陸の位置が作られましまが、今後数億年後には分裂している大陸が再び繋がりだし、一つの超大陸を形成するのだろうと思っています。
そのころには人間は地球に生息していないと思いますが、見てみたいものですね。中嶋雷太