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悲しきガストロノームの夢想(39)「すき焼き」
写真のすき焼きは、京都木屋町にある某すき焼き屋さんで撮ったものです。
さて、京都の街を歩くと喫茶店やラーメン屋だけでなく焼肉店や牛カツサンド店などの牛肉を使った飲食店が目につきます。京都といえば和食というイメージがあると思いますが、私の実感としても京都人は本当に牛肉が好きなんです。牛肉消費量の統計では、1位滋賀県、2位京都府、3位奈良県、4位和歌山県…となっています。近江牛の滋賀県に続き、古都の京都と奈良が2位、3位というのはおそらく驚きです。
記憶を遡れば、何か良いことがあったり親の給料日など、月に数度は牛肉のすき焼きを食べていたように思います。そして、もちろんですが、各家庭には必ずたこ焼き器だけでなく、すき焼き鍋があったはずです。社会人となり一人生活を始めた時に、最初に買った調理器具のひとつがすき焼き鍋でした。もちろんたこ焼き器と土鍋も買いましたが。
さて、すき焼きの具材は各家庭により異なるかと思いますし、具材を入れる順番や味のつけ方などの調理方法も異なるのだろうと思います。
私の場合は……すき焼き鍋をかなり高温に熱し牛脂を満遍なく鍋にゆき渡らせるや牛肉を投入します。次に大量の九条葱と白菜と椎茸。この段階で砂糖、醤油と日本酒を入れます。最近はここに日高昆布だし汁を加えています。日本酒は牛肉を柔らかくし臭みを消すためには必須です。また、椎茸を牛肉の近くで煮るとさらに牛肉は柔らかく風味が増すと信じています。水は一切入れず白菜や春菊などの野菜から出る水分だけです。くつくつ音がたち始めると白滝と麩を投入します。白滝と麩により、余分な水分が吸収されるので、汁だくなすき焼きにはなりません。汁だくは嫌いな私です。
炊き立てホカホカのご飯を左手に、溶き卵をくぐらせたすき焼きの具を頬張り、ガツガツと白米を食べると、心は大満足です。
2杯ほどご飯を食べ終えると、3杯目の為にすき焼きの隅に卵を割り入れ軽く煮て、スプーンで掬って3杯目のご飯の上に載せます。すき焼きの中の具材が染み出したなんとも言えぬ味わいを吸った玉子を乗せた丼のようなものです。ここまででお腹いっぱいになりますが、さらにすき焼き鍋に饂飩を投入します。硬めで太い饂飩がベストで、いつの日か吉田うどんを投入したいと考えているところです。
具材のカケラばかりが目立つすき焼き鍋で饂飩を短時間煮て、ほとんどなくなった溶き卵の器にとり、ずるずる食べると、私のすき焼きはエンディングを迎えます。
ここまで書き綴ってきて思うに、小さめのすき焼き鍋があれば良いなと考えているところです。小鍋仕立てという、小さな土鍋で好きな具材を煮て食べる食があるように、すき焼き小鍋仕立てを夢見ています。
ある牛丼チェーンで食べるすき焼きは、まさにすき焼き小鍋仕立てなのですが、やはり自宅で静かに、自分の調理法ですき焼き小鍋仕立てを楽しみたいものです。
真夏に汗をかきながらのすき焼きも良いものですが、やはり真冬のすき焼きほど美味いものはありません。さて、お腹が空いてきました。中嶋雷太