ビーチ・カントリー・マン・ダイアリー(2)
引越し荷物の片づけがまったく進まず、ベランダに逃げ一服してばかりです。なかでも数千冊の本の過半数は未だ段ボールに眠ったまま、彼ら彼女らはいつ開封してもらえるのだろうかとため息をついているはずです。
部屋のなかのテーブルや椅子も大物は設置しましたが、荷物に覆われ使うこともままならず、荷物置き場と化しています。
部屋のなかがそのていなので、ベランダは何も手をつけられずにいます。
とはいえ、十数分に一度はベランダに逃げて一服したいので、簡易テーブルと椅子は確保しなければなりませんから、雑然とする引越し荷物をかき分けかき分けてようやく発見したのが、世界一過酷ななアドベンチャーレースと称されるキャメルトロフィーで使われたハードケースでした。このハードケースはキャメルトロフィーに参加した長年の知人から30年ほど前に貰ったもので、私の大切なモノの一つです。年季が入り、人格さえ備わってきた感がするこのハードケースには汚れや傷や欠落箇所があちらこちらにありますが、そこに美しさを感じます。ボロボロになっても、物静かに強靭な魂を抱えているからです。人はこうあるべきかもしれませんね。中嶋雷太
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