見出し画像

ワードローブの森の中から(45)「バンクシーのキャップ」

 noteでは、これまでキャップの話を何回かしたかと思います。その中で、自分でキャップを作る話もしたかと思います。さて、今回は、バンクシーのキャップの話をさせていただきます。とにかくキャップ好きなもので、話題が重なり合うかもしれませんが、お許しください。
 世の中が新型コロ●でザワザワし始めていた2020年6月。横浜でバンクシー展が開催されているのを知り、ふらりと訪れました。これまで、バンクシーの作品に直接触れたことがなかったので、興味津々で訪れ、バンクシーの絵を通して伝わる姿勢に感銘を受け、東京の自宅に戻ってきました。
 お土産にはバンクシー展の分厚いパンフレット一冊を買い、コーヒーを淹れページをゆっくりと開いては、展示されていた作品の一つ一つの背景を楽しんでいましたが、やがてバンクシーのシニカルな絵を身につけたい欲望が湧き上がってきました。
 ちょうどそのころ、市販の無地のキャップとワッペンを買い、自分だけのオリジナル・キャップにハマっていたので、バンクシーのワッペンがないものかと探したところ、ありましたね。あれやこれや、私のお気に入りの彼の絵のワッペンが。通常のワッペンよりももちろん割高でしたが、早速購入し、五つのマイ・オリジナル・バンクシー・キャップを作りました。
 写真のは、「愛は空中に(Love Is In The Air)」と知られている作品で、別名は「The Flower Thrower」として知られています。これは、石ではなく花束をイスラエル側に投げ込もうとするパレスチナの若者です。人の命を奪う為の爆弾や銃弾ではなく、花を投げる。机上で何万もの言葉で平和を唱えようと伝わらぬ、日常の一つの動作の中にある行為が象徴的に持つ、生きる凄みがそこにありました。
 メッセージが明確なのに芸術性があり、しっかりとシニカルな目線をも蓄えているバンクシーの絵をキャップの額につけて街を歩いていると、目眩がしそうに、バンクシーが私に迫ってきます。
 のらりくらりと、分かりきった顔をして、それなりに暮らす日々ですが、バンクシーが身近にいるだけで、そんな柔な心をグサリと突き刺してくれます。そして、物語作家としての背骨が、ピリッと伸びるようです。中嶋雷太

いいなと思ったら応援しよう!