マイ・ライフ・サイエンス(33)「熱帯夜と熱帯の夜」
2年前の2022年8月のこと、日本気象協会は、40℃以上の日を「酷暑日」、夜の最低気温が30℃以上の夜を「超熱帯夜」と呼ぶことに決めました。
この酷暑日や超熱帯夜という気象用語にはまだ馴染みがありませんが、熱帯夜という気象用語には馴染んでいて毎年夏になると耳にせぬ日はないかと思います。
気象庁の定義では、熱帯夜とは「夜間(夕方から翌朝まで)の最低気温が25度以上のこととだそうです。
さてこの熱帯夜。「本当に熱帯の夜はそうなのか?」と疑問を持ったので調べてみると、7月のジャカルタやマニラや台北の平均最低気温は25度だったので、私の疑問は簡単に解かれました。
しかし…ここで私は粘ります。私の実感というか体験した感覚では、夜のジャカルタやマニラや台北は30度を超えています。汗だくになりながら歓楽街を歩き、現地の飲食店に向かっていたのをよく覚えています。
この気象統計上での熱帯夜と、私が感覚的に知っている熱帯の夜との違いは何だろうかと考えたところ、一つには湿度というのが浮かんできました。あと、街に漂う空気や臭いも、おそらく日本とは異なっているはずです。例えば台北。蒸し暑い歓楽街の夜は八角の香りが路地裏にも満ちていたように記憶しています。
ほかにも差異を生む要素はあると思いますが、気象用語の熱帯夜と聞くとジャカルタやマニラや台北をまずは思い浮かべるのですが、実際はそれらの熱帯の街の夜ではない夜がやってきます。
指標を示す気象用語としての熱帯夜とは異なる熱帯の夜を科学してみたいものです。学際的で全感覚で捉える熱帯の夜は、無限の要素に満ち溢れたものになりそうな気がしています。中嶋雷太