不可思議なお話(4)「ある双子の女の子たち」
ある日の昼下がり、知人とカフェに向かって歩いていました。
その通りは大人二人が並んで歩けるかどうかほどの歩道があり、車道は二車線で、環状道路への抜け道のせいか、頻繁に車がスピードを出して走っていました。
知人と話をしながら散歩のようにその歩道を歩いていると、向こうの方から双子らしき女の子が何やら楽しそうにスキップしながらこちらに向かってきました。10歳ぐらいで、服装は赤色が基調の、ドイツ南部あたりの民族衣装っぽい、世田谷あたりでは通常あまり見られぬものでした。
やがて、向こうからやってきたその双子の女の子たちをなんとなく避け、すれ違うや、左斜め後ろを歩いていた知人が「あっ!」と声を出したので、私は「え?」と振り返りました。
すると、その知人は膝まずき、しゃがんでいました。
「どうした?」と訊ねると。
「なんか、突然、ガクッときて…」
見ると、デニムの片脚がザクリと裂けており、どうやら切り傷もできていました。
「ごめん!帰る!」と、脚を引きずる知人が来た道を戻っていきました。
そのとき、「あれ?」と不可思議な思いに駆られました。
いま、通り過ぎた双子の女の子の姿がどこにもなかったからです。
そもそも、二人が並んで歩けるかどうかの歩道を、我々はどうやってすれ違ったのだろうか?
そして、知人が「あっ!」と声を出したのは、すれ違うや否やのタイミングで、その時、私の視野は後方もとらえていたはずです。
あの双子の女の子たちは、いったい何処へ行ったのか…何だったのか……その姿は今でもはっきり脳裏に焼きついているのですが。中嶋雷太