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子供ができなかったから保護猫を迎えた話
不妊治療をしていた頃、夫と二人で決めていたことがありました。
「もし子供を授かれないことになったら、猫を迎えよう」
その約束通り、今の我が家には毎日お腹を丸出しにして寝そべり、私たちを見つけると「構え!」と大きな声で要求してくるウルトラキュートな保護猫と暮らしています。
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子供のいない人生を選んだ理由
不妊治療中はとにかくメンタルがボロボロになって辛かったです。
決定的な原因は見つからないまま時間だけが過ぎていくのは、出口のないトンネルをずっと歩かされているようでした。
そんなモヤモヤとした日々が続いていた時、夫が体調を崩して休職することに。
その時、私たちは子供を持つことを諦め、夫婦二人の暮らしに向き合うことを決めました。
治療をやめる決断は辛かったけれど、「猫を迎えよう」という約束があったことで、少しだけ前を向けた気がします。
3年かかった運命の出会い
夫が無事復職したタイミングでFacebookでつながっている知人を通じて保護猫の存在を知り、二人で譲渡会に通い始めました。
でも、いいなと思う子はすぐに他の方の元へ。
ピンとくる子に出会えないまま気付けば3年が過ぎていました。
不妊治療中に言われた「そんなだから子供ができない」という言葉を思い出しては、「子供にも猫にも選んでもらえないのかな」と泣いた夜もありました。
そして「これが最後」と思って参加した譲渡会。
そこで前日の夜に保護されたばかりの子と出会いました。
おそらく純血種のラグドールで、ペットショップかブリーダーから購入された子だったようです。
高級マンションで暮らしていたのに、引っ越しの際に捨てられてしまったとか。
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野良猫時代はボス猫が面倒を見てくれていたものの、温室育ちのため自分でエサをとることもできず、他の野良猫や人間に追い払われる日々だったようです。
そのため保護したときには、すっかり人間にも猫にも心を閉ざしていたとのこと。
ただ、保護時にチュールに反応してあっさり捕まったという、なんとも憎めないエピソードも。
保護したばかりなので、病気があるかどうかも性別確認も何一つわからない子でしたが、見た瞬間「この子だ!」と思ったのを今でも覚えています。
不思議なことに、今までのように他の人からの申し込みは一切なく、スムーズに譲渡が決まりました。
信頼を築くまでの長い道のり
家では脱走防止の設備を整えたりケージを用意したりと、家を猫用に模様替えをしました。
安心してお家でのびのび暮らしてもらえるように、と。
でも、私たちの予想以上に心の傷は深かったようで、7ヶ月近くずっとおびえ続けていました。
特に夫になつくまでは1年半もかかりましたね。
最初の頃は同じ部屋にいるだけでずっとシャーシャーおびえるので、お世話以外は距離を置いて見守る日々。
何もせずただ部屋にいる時間を作り、その時間を少しずつ増やしながら信頼関係を築いていきました。
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正直、なかなかなついてくれない時期は「本当に私たちで良かったのかな」と二人で頭を悩ませてばかり。
でも今では、猫がいない生活がどんなだったか思い出せないくらい。
お腹を見せて寝る姿を見るだけで、心が落ち着きます。
動物を飼うことにあまり積極的ではなかった夫も、今では「猫のため」とスマート家電を次々導入するほどの溺愛っぷり(笑)
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新しい形の家族
猫を迎えてからは長期の旅行に気軽に行けなくなりました。
病院代やその他もろもろの諸経費ももちろんかかってきます。
でも、それも含めて幸せだと感じています。
子供ができなかったことは、きっとどんなに洗っても落ちない油汚れのように、生涯にわたって私の心に残り続けるでしょう。
でも、それを抱えたままでも幸せは感じられる。
それを教えてくれたのが、今の私たちの家族である保護猫でした。
毎日甘えてくる声を聞きながら、新しい形の家族との暮らしを楽しんでいます。